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日本內戰錄 第三十一號記錄 ― 野戦病院にて ―
八月十九日。
肩を撃たれたのは、
敵が斜面から一斉に撃ち込んできた時だった。
衝撃で体が後ろに倒れ、
地面の匂いだけが妙にはっきりしていた。
救護班に抱えられるうちに、
痛みよりも腕が動かないことのほうが気になった。
銃を構える形を作れず、
指先にも力が入らなかった。
野戦病院に運ばれたのは昼頃。
建物の中は湿気がこもり、
誰のものか分からない靴音が
絶えず聞こえていた。
肩の貫通は幸い骨を外れていたらしく、
医師は「運が良い」と言った。
ただ、動かせば出血が再開するため、
しばらくは固定されたままになる。
ベッドの周りには、
同じ中隊の顔が数人あった。
みな包帯や固定具で腕や脚を吊っている。
声を出さずにうめく者もいた。
隣のベッドの兵が、
「隊長はどうなった」と聞いた。
大淵隊長のことだろう。
誰かが「本部に後送された」と答えた。
詳しい状態は知らない。
視界が時々ぼやける。
薬のせいか、
単に疲れているだけか分からない。
撃たれる瞬間のことは、
あまり思い出したくない。
ただ、あの斜面の射線を
もう一度見てしまう感覚が時々ある。
目を閉じても消えない。
今日のところは安静と言われた。
寝られるかどうかは分からない。
―― 中原 光太




