日本內戰錄 第三十號記錄 ― 二段の戦闘 ―
八月十九日。
午前、南西の林縁で小規模な銃撃戦が発生。
相手は斥候と思われ、
短時間で後退した。
こちらの被害は軽傷一名。
射撃の反応は良く、
隊の動きも乱れはなかった。
問題はその後だった。
昼前、前進中の第三小隊から
「多数の足音あり」との報告。
合図の直後、
左斜面に一斉射撃。
弾痕の密度から見て、
敵は小隊規模以上。
遮蔽物が少なく、
一度体勢を立て直す必要があった。
中原が即座に射撃位置を指示し、
兵を散開させたが、
敵の突入が早かった。
射撃戦は二十分ほど続いた。
こちらは地形を活かして反撃し、
敵の突出部を崩すことに成功。
体勢が傾いたのを確認して、
背後斜面へ後退。
結果としてはこちらが優勢になった。
だが損害は大きい。
報告をまとめた時点で、
隊の半数が負傷。
うち三分の二は重傷。
歩行困難者が多く、
担架の数が足りなかった。
私自身は右脇腹に被弾。
貫通ではないが、
体を動かすと血が滲む。
野戦救護では処置が難しいため、
本部へ後送が決まった。
中原は肩を撃たれていたが、
出血は比較的少なく、
救護班の判断で野戦病院行きとなった。
会話は交わせなかったが、
搬送される様子を遠くで見た。
顔色は悪かった。
今回の戦闘で、
部隊の戦力は大きく削られた。
勝ったと言われればそうなのだろうが、
残った者の数を見れば
何をもって勝利と言うのか分からなくなる。
本部へ向かう車両の揺れが
傷に響いた。
筆が震えているのは、
痛みのせいだ。
―― 大淵 貞男




