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日本內戰錄 第三號記錄 ― 七月十七日・補給路監視所にて ―
七月十七日。
雨が降った。地面がぬかるみ、補給車が二度も足を取られた。
この路は前線へ弾薬と食糧を送る生命線のはずだが、
誰も整備に回す余裕がない。
本日の任務は監視所の警備。
敵影は見えず、銃声も遠い。
だが、遠い銃声ほど神経を削るものはない。
近い敵よりも、何をしているか分からない敵のほうが厄介だ。
配属された若い兵が一名、昨日逃げた。
二十歳そこそこだった。
司令は叱責していたが、俺には責める気はない。
逃げたいと思ったことは、俺にだってある。
前線から戻った中隊が、疲れ切った顔で通り過ぎた。
泥と血で迷彩の区別もつかん。
その中の一人が言った。
「革命派の砲撃が変わってきてる。精度が上がった」
アメリカの支援が遅れていることを、
俺たちは全員理解している。
理解した上で、口に出さないだけだ。
夜に入って雨が止んだ。
湿った空気の中、銃を分解して油を差した。
手を動かしていないと、余計なことを考える。
今日も生き延びた。
明日も生き延びたい。
その願いに特別な意味はない。
―― 大淵 貞男




