日本內戰錄 第二十七號記錄 ― 帰隊後の静寂 ―
八月十七日。
前回の戦闘から三日。
敵兵七名を撃ったことは事実だが、
味方の損害のほうが大きく、
胸の奥に何か残っている。
それが何かは、まだ言葉にできない。
大淵隊長の隊に正式に編入された。
隊長は何も問わない。
ただ「動きだけ見ていればいい」と言った。
午前は陣地周辺の見回り。
斜面に残っている弾痕を見た瞬間、
前の戦闘の光景がふっと重なった。
耳の奥に、
あの日の銃声がわずかに残っている気がする。
歩哨の兵が「中原、顔色が悪いぞ」と言った。
自覚はない。
ただ、体が急に熱くなったり冷えたりする。
昼前、南の林から物音。
敵影はなし。
だが銃を構えたとき、
照準の揺れが以前より大きい。
撃とうとしたわけではない。
ただ“撃つときの形”に体が戻らない。
午後、補給路から帰ってきた兵が
「今日の森は静かじゃなかった」と話していた。
黒田という補給兵の名も出た。
負傷していたはずだが、
もう任務に戻っているらしい。
会ったことはないが、
その粘り強さだけで何となく励まされる。
夕方、大淵隊長から指示。
夜間の簡易警戒に就くことになった。
「無理に撃つな。見ていればいい」
そう言われた。
戦場に戻ったはずなのに、
前に進んでいるのか後ろに下がっているのか
自分でもよく分からない。
少なくとも、
七名を撃ったあの瞬間より今のほうが、
体が重い。
―― 中原 光太




