日本內戰錄 第二十六號記錄 ― 補給路にて ―
八月十六日。
朝から雨。
補給路はところどころ泥で深く沈み、
荷車を押すたびに足を取られた。
撃たれた脚はまだ完全には戻っていない。
無理に体重をかけると、鈍い痛みが膝の裏まで響く。
それでも、動かなければ物資が届かない。
人手不足が続いているせいで、
替わりの兵は当分来ないらしい。
午前中の積み込みを終えた頃、
河合への手紙を書いた。
字が少し震えたのは雨のせいということにしておく。
本当のところは分からない。
森の中を進んでいると、
枝が折れる音がした。
ただの獣か、風か、それとも敵か。
どれでもおかしくはない。
音がすると反射的に身が沈む。
体が覚えてしまったらしい。
隊の後ろを歩いていた若い兵が、
「黒田さん、今日は静かですね」と言った。
静かかどうかは分からない。
自分の呼吸と脚の痛みのほうが気になった。
午後、第二補給点に到着。
物資の受け渡しを済ませると、
現場の兵が「前線が落ち着かない」と言っていた。
狙撃の報告が増えているらしい。
どこの部隊の話なのかまでは聞いていない。
帰路は雨が弱まり、
森に霧が出ていた。
視界が白くなり、
兵たちは互いの位置を確認しながら慎重に歩いた。
脚の痛みは夕方になって増した。
医療所に寄るか迷ったが、
今日はやめておいた。
あの場所に入ると、
傷を負った日のことが少しだけ蘇る。
河合の返事はまだだろう。
書ける状態ではないかもしれない。
生きていると聞いたのだから、
それでいい。
今日はこれで終わり。
―― 黒田 翔




