日本內戰錄 第二十四號記錄 ― 前線巡察 ―
八月十五日。
夜明け前から中隊区画の巡察。
ここ数日、革命側の小規模な接触が続いており、
前線の兵は少し張りつめすぎている。
中原も復帰したばかりで、
表情は戻っているが動きにぎこちなさが残る。
塹壕の底には昨夜の雨がまだ残っている。
足を踏み入れると水音が響き、
それに反応して歩哨がこちらを振り向いた。
緊張しすぎている。
声をかけて落ち着かせた。
斜面の上に設置した観測所を覗くと、
報告書が散らばっていた。
風で飛ばされたらしい。
拾い集めて所員に渡したが、
彼の手が震えているのが分かった。
ここ数日の砲撃音のせいだろう。
八時過ぎ、南側の林付近で銃声。
単発が数発。
巡察中の分隊が発見したらしく、
無線では「影だけ確認」との報告。
革命側の斥候が近くまで出ている可能性が高い。
前線へ向かう途中、
中原が「進みますか」と聞いてきた。
声は落ち着いているが、目の奥に迷いがある。
無理もない。
彼があの丘で負傷したのは数日前のことだ。
「確認だけでいい。深追いするな」
そう返した。
林の縁まで進むと、
足跡が複数。泥が浅くえぐれており、
ここを急いで通過したことが分かる。
だが敵影はなし。
小競り合いの範囲にとどまった。
十一時頃、前線の補給路から煙が見えた。
整備班が古い燃料缶を焼却しているだけだと分かったが、
一瞬、空気がざわついた。
誰もが「次の攻撃ではないか」と反応している。
部隊全体が、
疲労ではなく“待ち疲れ”をしている。
撃ち合いより静寂のほうが、
兵を削ることがある。
午後、報告書をまとめる途中で、
耳鳴りがした。
砲撃の振動が染みついて抜けない。
書類を閉じ、外の空気を吸った。
今日の戦果は無し。
損害も無し。
しかし全体の緊張は確実に積み重なっている。
―― 大淵 貞男




