日本內戰錄 第二十二號記錄 ― 高地観測點 ―
八月十一日。
日の出前に指定高地へ移動。
射撃位置までは草の背が高く、膝下まで濡れた。
天候は曇り。湿度が重く、息がこもる。
今日は中隊の前進を援護するため、
帝国側の観測手と小隊指揮の動きを断つ任務を与えられた。
敵は数日前からこの丘陵地帯に拠点を作りつつあるらしい。
七時頃、双眼鏡に一名。
鉄条網の手前で距離およそ三百二十。
照準を合わせたが、風が読みづらい。
南西から一定せず、乱れている。
一度呼吸を整え、
体の力が抜けた瞬間に引き金を絞った。
着弾は胸下。
倒れ方からして即死と思う。
続いて二名目。
こちらは距離がややある上に、背を向けていた。
射撃の音でこちらを探ったのか、
身を低くして動き始めたため狙うのは難しい。
一発外れた。
敵が走り出し、二発目で倒れた。
外した一発が耳に残っている。
理由は分からない。
銃か、自分か、風か。
どれでもあり得る。
そのあとしばらく動きなし。
こちらの位置に気づいた様子もない。
十時前、
敵の担架が出てきて、一名を運んでいった。
二発目で倒れた兵だろう。
まだ息があったのかもしれない。
狙撃手は結果だけを見る仕事だが、
担架が揺れるのを見るのは慣れない。
中隊本部より撤収指示。
特に反撃なし。
下山時、足元の草の色がやけに濃く見えた。
今日の任務は完了。
―― 榊原 明良




