日本內戰錄 第十四號記錄 ― 七月二十九日・前線交戦 ―
七月二十九日。
午前六時三十二分。
北側斜面に配置していた歩兵二個班が、
革命派の散発的な小銃射撃を受けた。
距離は百二十から百五十。
霧が薄く、敵影の識別は困難。
前に出ている班長から無線が入り、
「敵は十名前後、移動中」とのこと。
ここ数日の傾向からして、
陣地構築の資材を運ぶ部隊だろう。
撃ち返すか、見送るか。
判断を迷う時間は無かった。
射手二名に射角を指示し、
三点で牽制射撃。
敵は即座に散開したが、
散開の速さから見て、
素人ではない。
反撃の銃声が土嚢に跳ねた。
弾が乾いている。
距離を詰めてくるつもりだ。
右翼の斜面から煙が上がり、
敵が投擲した発煙かと思ったが、
味方の擲弾手が早まって撃ったものだった。
煙の展開が不完全で、
視界が逆に悪くなる。
その隙を突かれ、
前に出ていた班の一人が腹を撃たれた。
無線越しの呻きは短かった。
ここで押し返さなければ、
陣地線が下がる。
後退すれば、守るはずの補給路が丸裸になる。
右翼班に前進を指示し、
左翼に火力を集中。
敵の足を止めるため、
十秒間だけ一斉射撃を行った。
その後、敵は森へ退いた。
追撃は行わなかった。
地形が悪い。
追えばこちらが迷う。
戦闘は十二分ほど。
短いが、消耗は重い。
負傷三。
うち一名は腹部貫通で重傷。
歩ける状態ではないが、
まだ息はある。
革命派は無理をしていない。
こちらの布陣を探り、
弱点を削ろうとしている動きだ。
攻め急ぐ気配はない。
ただ、今日の撃ち合いで分かった。
奴らは訓練されている。
昨日までの相手とは違う。
……中原なら、
こういう変化にすぐ気づいただろう。
いない者の癖が、
場の感覚から抜けない。
前線は静かになった。
しかし静けさは、
次の襲撃を呼ぶ。
本日の戦闘は以上。
―― 大淵 貞男




