日本內戰錄 第十一號記錄 ― 七月二十三日・補給路遭遇戦 ―
七月二十三日。
第二補給点からの帰路、
森の奥でかすかな足音がした。
補給兵は耳が鈍いと言われるが、あれは違う。
“こちらに向かって踏み込んでくる音”だ。
警戒の合図を出した瞬間、右から銃声。
乾いた破裂が連続して、木の皮が飛び散った。
敵小隊の奇襲。
数は六か七。正確には分からなかった。
前衛の二人が泥に沈み、
後ろの一人が足を押さえて倒れた。
その時点で三名が動けなくなったが、
俺はまだ状況を把握し切れていなかった。
左の木陰に滑り込んだ瞬間、
脛に重い衝撃が走った。
熱いとも痛いとも違う、
地面に吸い込まれるような感覚だけが残った。
撃ち返さなければ全員死ぬ。
分隊長が怒鳴り、誰かが負傷者を引きずる音がした。
残っていた二名が側面に回り、射撃した。
敵は補給兵の反撃を想定していなかったのだろう。
銃撃は五分ほどだったはずだが、
体感ではその十倍長かった。
敵二名が倒れ、残りは森へ退いた。
返り討ちにしたが、こちらも何人やられたのか…
正確な数は覚えていない。
自分が撃たれたのも、少し遅れて理解した。
足元が急に軽くなって、視界が傾いた。
担架に乗せられるまでの記憶は曖昧だ。
気づいた時には布の屋根が揺れていた。
医療班の坂井という女が、
淡々と傷を洗っていた。
「今のところ、命に別状はない」
その声だけは妙に鮮明に聞こえた。
―― 黒田 翔
七月二十三日。
補給路付近で遭遇戦が発生し、負傷者四名が搬送された。
負傷の内訳は以下。
•脛部貫通
•太腿貫通
•肩部貫通
•腹部擦過傷
いずれも現時点では生命の危険なし。
脛部の貫通は汚泥の入り込みが深く、
洗浄と異物除去に時間を要した。
太腿・肩の貫通は損傷が限定的。
止血・縫合で安定した。
腹部擦過の兵は緊張が強く、
処置後に休息を指示。
処置中、外では断続的な銃声。
前線が近いため、後送は日没以降に延期。
河合という兵が負傷状況を確認に来たが、
特に質問はなかった。
表情は読めないが、静かに頷いて出ていった。
本日の処置は以上。
―― 坂井 苑




