日本內戰錄 第十號記錄 ― 七月二十一日・南側陣地乱れ ―
七月二十一日。
南側の陣地に移動を命じられた。
理由は「前線の整理」だそうだ。
整理という言葉を使うと聞こえはいいが、
実際は“持ちこたえられなくなってきた”という意味だ。
移動中、補給車両が二台、道端に捨てられていた。
燃料切れか、故障か。
どちらにしても修理する余裕はない。
荷台には小銃弾が積まれたまま、
泥に半分沈んでいた。
陣地に着くと、
小隊長の表情が険しかった。
「革命派が二日前から押し上げてきている。
ここも長くはもたん」
そんなことを静かに言っていた。
昼前、銃声が短く響いた。
距離は遠い。
戦闘というより、
“前線がずれた音”に近かった。
戦線が動くときは、こういう乾いた音が続く。
午後、若い兵が一名、私物をまとめていた。
脱走だろう。
見つかれば軍法会議だが、
本人の顔を見れば理由は分かる。
疲れていた。
限界の顔をしていた。
止める気にはならなかった。
止めても残るだけで、救いにはならない。
夕方、陣地の端で発煙が上がった。
仲間が煙幕を張ったのかと思ったが、
どうやら火薬箱が湿気で膨張し、
自然発火したらしい。
補給の質が落ちれば、
事故の数も増える。
今日は誰も何も言わなかった。
上官も、兵も、口を開けば崩れが漏れるからだ。
夜、銃の分解をして気づいた。
清掃用の布が残り少ない。
最前線ではこんな基本装備すら不足している。
戦争というのは、
派手に壊れる瞬間より、
静かに崩れていく日のほうが怖い。
今日は、その静けさが
“音よりも大きく響いた”。
―― 大淵 貞男




