強い女の子~セレスside~
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「セレス! 彼は我が国の国民だ! そんな乱暴にするな!」
「どうしろって言うんだよ! ユリアーナ嬢が危険かもしれないんだぞ!」
彼女が危険かもしれないのに、冷静でいるなんて無理だろう!
アレクが俺と彼の間に立つ。
「ユリアーナ嬢は、無鉄砲ではない。彼をこちらに寄こすのが良いと思った理由があるはずだ」
「そんなの関係あるか! 領主の娘が無茶をしようとするならそれを止めてでも逃がすのが領民の役目だろう!」
「何をそんなにむきになってるんだ!」
アレクにそう言われて、俺は少し冷静になる。
確かに、ユリアーナ嬢はきっとそんなことを望まないだろう。
自分がどうなろうと領民を優先する。
「ユリアーナ様は、無鉄砲ですよ。以前サントス伯爵領でグランヴァルト商会のチンピラが、暴れていたところに一緒に遭遇しましたが僕は客人だからと最後まで前に出ようとしていましたから」
懐かしそうな顔でそう言うエドガーに少しいら立ちを覚えてしまうのは、俺が彼に嫉妬しているからなのだろうか。
「ユリアーナお嬢様は、武芸を嗜んでいます。なので、多少のことならば自分でなんとかできる自信がおありなんだと思います。もちろん、僕も妹も反対をしましたが……確実に殿下にこの書類を渡すためにと言われていました」
「そうなのか。ほかに何かユリアーナ嬢から伝言はあるかい?」
「はい。お嬢様はこの冊子と一緒に挟まっていたこの面会のメモがあればロゼリアン公爵家の罪は確実になるけど、アイリーン様の潔白は証明できると言われていました」
彼の言葉を聞いて、アレクが冊子のページをパラパラ捲ると一枚のメモが落ちる。
アレクが拾って見るのを俺とエドガーも一緒に見る。
そこには、夏休みアイリーン嬢が家から離れて過ごしている日程。
その日程と被っている期間に頻繁にロゼリアン公爵家との面会記録が残っていた。
そして、必ずと言っていいほどロゼリアン公爵家との面会の後にオレリアン公爵家とルーカスの実家であるシュタイナー侯爵家の名前があった。
「これはまた……」
「ルーカスに温情はかけられるのか?」
「どうだろうな。ルーカス自身がこちらの陣営だった証拠はいくらでも出せるが……」
「僕も断罪をしてくださらないと困りますよ。アレク」
急に声がしてそちらを見るとルーカスがそこに一人で立っていた。
「家は取り潰しがいいでしょう。一族郎党罪は償うべきです」
そう言って、複数枚の資料を俺たちの目の前に出してきた。
「家からこれを取ってきました。こんなことを言うのはよくないけど、兄が単細胞だと助かるよ」
「お前は昔から兄貴のことを嫌い過ぎるだろう」
ルーカスはとぼけた顔をしているけど、彼ら兄弟がお茶会でも一緒にいるところを見たことが無い俺としては、納得だ。
自分よりも優秀なルーカスが心底気に入らなかったのだろう。
だからこそ、父親の稚拙な作戦に乗ってしまうような男なのだが……。
「そうなったらミリアム嬢のことはどうするんだ?」
「ウィナー男爵家も少なからず代理当主が暴走したことでお咎めを受けるんだぞ?」
「それでも家が取り潰されないなら俺がウィナー男爵家に婿入りしてもいいだろう」
ルーカスのあっけらかんとした様子に、俺もアレクも驚く。
昔から貴族の持つ権力に興味がない奴だと思っていたが、ここまでなのかと驚いてしまう。
「それで、ユリアーナ嬢のことだけど……きっと彼女が何か知っているんじゃないかと思って連れてきたよ」
ルーカスが横にずれると一人の女の子が現れる。
彼女は、涙を目にいっぱい溜めながらも急に頭を下げた。
「申し訳ありません。私……私は、ユリアーナ様をお守りすることができませんでした」
「ターニャ! お前はケガしてないのか?」
俺が掴みかかっていた男が、彼女に近づくと抱きしめる。
「ロイド! ユリアーナ様が、連れ去られたの。私、私ユリアーナ様に何もするなって合図されて、なにもできなかった」
「そうか。ユリアーナ様は怪我してないのか?」
「それは、ないと思う……あの女が、ユリアーナ様をひっつかんで、それで、どこかに連れて行ったの」
「それは、商会とか何か言ってなかったか?」
「あの家って言ってた……たぶん」
「幽霊屋敷のサントス伯爵の王都の旧タウンハウス!」
サントス伯爵の王都の旧タウンハウス?
不思議に思っているとアレクとオリバー、ルーカスまでも思い当たる節があるらしい。
幽霊屋敷と呼ばれていることも気になる。
「俺、腕には自信があるからその幽霊屋敷に二人で案内してくれないか?」
エドガーがユリアーナ嬢の救出に名乗りを上げる。
このままではいけないと慌てる。
「俺も救出に向かおう。彼女には義姉様も接触している」
「これは、我が国の問題だ。セレスに何かあれば国同士の争いになりかねない」
「そんなの関係ない!! 俺が彼女を救いに行きたいんだ」
アレクにそう言うと驚いたように目を見開かれた。
「分かったけど、少し待て……彼女の救出に最適な人材がまもなく来る。それに彼女がMuguetNoirのデザイナーならグランヴァルト商会は、手放せるはずがないんだ」
「そんなの待っていて何かあったらどうするんだ!」
「明日には! サントス伯爵が問題を解決して王都に来る。王都のサントス伯爵の旧タウンハウスが幽霊屋敷と呼ばれるのは建物が不気味な様相だからじゃない。あの家はからくり屋敷なんだ」
「からくり屋敷?」
「はい。私から説明をさせてください」
ルーカスが連れてきた女の子が、俺の前に立つ。
「ユリアーナ様から聞いたお話なのですが、グランヴァルト商会の商会長と副商会長が王都のタウンハウスを改造しているそうです」
「そうなのか?」
「はい。ただ、ダニエル様とユリアーナ様は二人に秘密で抜け道を全て把握したと、子どもの頃におっしゃっていました」
「なら、明日ダニエル様がこちらにいらっしゃったら?」
「はい。ユリアーナ様がいらっしゃる地下の部屋の場所が分かるかと思います」
彼女は強いまなざしで俺とエドガーを見る。
「どうかお願いします。ユリアーナ様を救ってください」
「お、俺からもお願いします。ユリアーナ様をどうかお願いします。自分も微力ですが力になります」
真摯な姿勢の二人に俺は、驚く。
アレクも驚いていたが、二人の肩を叩く。
「君たちのような領民がいて、きっとサントス伯爵もさぞ嬉しいだろう。エドガー、セレス。ユリアーナ嬢のことを俺からも頼む。そちらに手が回らないように俺も同時刻に王城で暴れてくるさ」
「わかった……」
アレクの決意を秘めたその表情に、俺は決意を新たにした。
隣を見るとエドガーも決意をしたような表情をしていた。




