証拠を求めて
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三人で茫然とアリア皇妃殿下が去っていた場所を見つめる。
そうしていると急に頭の上に重さを感じて驚く。
ターニャがどこから出したのか私に茶髪のかつらを被せる。
「ユリ様の黒髪は綺麗ですが、目立ちます。これを被っていてください」
「ちょっと! これ前髪長くない?」
「ユリ様の黒い瞳も綺麗ですが目立つので絶対に邪魔でも我慢ですよ」
ターニャが肩を掴んで揺らしてくる。
二人でこんなやり取りをしていると、ロイドが口の前に人差し指を立てて静かにするようにジェスチャーしてくる。
黙っていると下の階からヒールの足音が響いていた。
この商会でヒールなんて履くのは、叔母様だけだ。
だって、商会の仕事はヒールなんて履いていたら動きにくいもの。
「……も……先に……!」
誰かと言い争っているのか大声で叫んでいるのが断片的に聞こえる。
三人でしばらく息を潜めていると、ヒールの足音が下の階に降りたのか遠ざかっていった。
音が聞こえなくなってからも少し時間をおいて三人で一階まで下りることにした。
「お前たち新人だな! 二階が手が足りてないから今すぐ行け!」
「わかりました!」
一階に降りると階段の前に立っていた叔父様が私たちに指示を出してくる。
ロイドが大きな声で返事をして、私とターニャもそれに続く。
そのまま、叔父様は荷物を持って運んでいる商会員たちを追って馬車の方へ行った。
「こんなに雑な感じで本当に大丈夫なのかしら?」
私が聞くと、ターニャが首を横に振る。
「一刻でも早く王都を離れたいみたいで、昨日私たちが志願した時も動ければいいみたいな感じでした」
昨日……ということは、リーンがというよりもロゼリアン公爵家が捕まったことが関係していそう。
叔父様の指示通りに私たちが二階に行くと、この階を仕切っているのだろう指示役らしき商会員のところにロイドが近づいていく。
「昨日から入った新入りなんですが、先ほど商会長にこちらの階を手伝うように言われました」
ロイドが伝えるとその男の商会員は、私たちの姿をしばらく眺めている。
「お前たち文字は読めるか?」
なぜそんなことを聞くのか分からなくて、ロイドもターニャも戸惑っていた。
私は少し考えてその商会員に言った。
「私たちは孤児で……文字は読めません。読めないとこの階ではお役に立てませんか? お兄ちゃん、どうしよう……私たちここでも必要としてもらえないのかな?」
私はしっかりとした口調で答えた後に、ロイドに抱き着いて泣くようなそぶりを見せる。
ロイドは困惑していたけれど、ターニャには意図が伝わっったらしい。
「そんなことないわ。ユミル、せっかく昨日からお世話になっているのだもの。私たちにもできることはあるはずよ」
ターニャは、私の顔が見えないように抱きしめながら大袈裟に言う。
「孤児か……なら文字なんて読めっこないわな。じゃあお前ら商会長達の部屋の本棚の本を入れて行ってくれ。帳簿もあるから丁寧に扱えよ。数字くらいはわかるだろうからちゃんと月ごとに並べるように」
そう言われて、私たち三人はお礼を伝えてまずは叔母様の部屋から入った。
他にいた人たちが出て行くとターニャが小さな声で私に話しかけてくる。
「ユリ様……なぜあんなことを?」
「簡単よ。人手が足りないけれど危険な書類は持ち出したい。時間もない。そうなれば読めなければバレる危険はないでしょう?」
「そういうことですね」
「それと、私のことはユミルって呼びなさい」
「わかりました」
私とターニャがそんな会話をしていると反対側の本棚を整理していたロイドが、棚の本を何やら移動させているのが見えた。
「ロイド、何をしているの?」
「いや、これ明らかにおかしいんで今のうちに確認しようと思って」
そう言って、ロイドの手元を見ると赤・青・緑の本が背表紙には四桁の数字?
私はしばらくその数字と三冊分空きがある本棚を見ていた。
なんの帳簿なのか分からないけれど、一から順番に綺麗に並んでいるのに三冊だけある大きな数字の本。
じっとロイドの手元の本を見つめる。
目の前には三段の本棚で、一列に二十一冊の本が入るらしい。
今は言っているのは『1~20』までの数字が背表紙に書かれた本だけ。
一段目にある赤い本の背表紙の四桁は『1405』
でも、五冊目のところには、『5』書かれていて空いているのは、十冊目の本が入るべき場所。
二段目の青色の本は、『2715』だけれど空いているのは、七冊目の本が入るべき場所。
三段目の緑の本は、『3921』だけど空いているのは、十二冊目の入るべき場所。
しばらく本と眺めて考える。
多分、最初の数字は入れる段数。
最後の二桁が入れる場所を表しているのだろうけど、もう一つの数字が分からない。
しばらく本棚を見つめる。
アンティーク調の仔の本棚は他の本棚と違って、本を置く段の下に引き戸が付いていた。
叔母様の部屋はよく出入りしていたけれど、いつもこの本棚の前にサンプルの服が並べられていたから今まで全く気が付かなかった。
「ねぇ、ロイドその本ってどこにあったの?」
「え? 今空いてるところに入ってたんだけど数字がおかしいと思って抜いたんだよ」
そういって、ロイドが本を戻す。
特に何も起きないってことは、関係ないのかな?
でも……ロイドってこういう違和感を見つけるのが昔から得意だった。
だから、彼が気になるのであればきっと何か秘密があるんだと思う。
数字の意味を考えて、元々入っていたところをまた見る。
私たちの傍にターニャが来て、本を見るとささっと本を動かしていく。
「ロイド、今開けたところに本を入れてみて」
ターニャが言う通りにロイドが本を入れると、カチャッと音がして下の棚が少し開いた。
「ターニャ何をしたの?」
「簡単ですよ。一番左は段数。その隣の数字はずらす本の冊数を表しています。最後の二桁は、それを入れる場所です」
確かに言われるとロイドが居れた本は最後の二桁の場所に入っていた。
「そんなことよりもこれ……ユリ様が探してたもんじゃないか?」
ロイドが渡してきた冊子には、『原石名簿』と書かれていた。
中を開くとそこには、宝石の原石の名前ではなく。
――人の名前がずらりと書かれていた。
これをどうやって持ち出すかを考えていると……外からヒールの音が聞こえてきた。




