新たな味方
体調を崩してしまいアップスケジュールが護れず申し訳ありません。
少しずつ調子を取り戻してきたので、アップしていきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
なるべく町中に溶け込めるように綿で作ったワンピースを着て、グランヴァルト商会へ向かう。
いつものように商会の裏口から入ると、バンダナをした女性の商会員に声を掛けられる。
「新入り? なんでもいいわ。今は猫の手も借りたいくらい大忙しだからこっちに来てくれるかしら?」
そう言われて、手を引かれるとまた屋根裏のあの部屋に連れてこられた。
私がいぶかし気に連れてきた商会員を見ていると、後ろのドアが閉まる音がする。
そちらを見ると同じバンダナをした男性の商会員がドアの前に立っていた。
油断した……。
そう思っていると正面に居た女性がバンダナを取る。
「ユリアーナ様! ご無事でよかったです」
私に抱き着く女性を見て驚く。
「タ、ターニャ? なんでここに? というか……あなた急に背が高くなった?」
私よりも低かったはずのターニャの身長は今……私よりも大きい。
ハッとしてターニャを抱きしめたまま後ろを向く。
「ロイド! あなたも身長が伸びたの?」
「いや……ユリ様そこじゃないだろう」
「そうなんだけれど、気になりすぎて」
「靴に厚底を入れているんです!」
そう言って、私から離れるとくるくるとターニャが回って見せる。
「伯爵さまからユリ様を手伝ってほしいって俺らは、王都に寄こされたんだよ」
「そうだったの? でも、あなた達に危ないことはさせられないわ!」
私がそういうと二人はクスクスと笑う。
意味が分からなくて、困惑している私を笑うなんてひどい。
「大丈夫です。ユリ様が学園に行かれてから本格的に私たち武芸も磨いてますし、フィリップさんにも認められています」
「ユリ様は知らないけど、ダニエル様と伯爵領にでた野盗を追っ払うとか実践も積んでるんだ」
「そうなの? でも……」
本当に危ないのだ。
これは、貴族同士の争いで……保守派から見たらターニャやロイドはきっと取るに足らない。
何とか二人を言いくるめようと考えていたら、おでこに衝撃が来る。
「いたっ……」
「ユリ様、俺もターニャもユリ様の力になりたいんだ。だから、何を言われても帰らねぇぞ」
「そうですよ! ユリ様を悲しませる人たちなんて私たちがやっつけてやるんですから!」
二人の決意を秘めた表情に私は諦める。
「わかったわ。それにしてもいつからここに居たの?」
「昨日からなんですよね……学園に入ることができないだろうから困っていたらグランヴァルト商会求人を出していて、伯爵様にも言われていたので二人で受けたら受かりました」
「そういえば、やけに騒がしそうだったけれど……何が起きているの?」
「それが……王都の店を移転するらしいです。ミリアム様のウィナー領へ」
「なんでウィナー領?」
「その辺りは、俺聞いてみたけど……胸糞わりぃ理由だったぞ」
「いいから、ロイドさっさと教えて」
「ウィナー領なら規模も小さいし最悪領主代理に罪をなすりつけてとんずらできるって」
ロイドの言葉を聞いて、頭を抱えてしまう。
そこまで食い込んでいたのかという呆れと伯爵家を存続させることができるのか……。
でも、やるしかないのだ。
「ターニャとロイドに探してほしい人がいるの。特に特徴がない女性なんだけれど……」
「それは、私のことでしょうか?」
ロイドの後ろから聞こえた声に驚いて三人でそちらを見る。
「あなた……セレス殿下はあなたなんて送ってないと言ってましたよ」
ロイドが私とターニャを守るように前に立ってくれる。
彼女は優雅に笑っているだけ……。
「そうですね。セレス殿下の味方ではありますが……その点は分かりやすくする意味で嘘をついてしまいました」
「あなたは誰なんですか?」
「私は、セレス殿下の義姉。ストレイン皇国の皇妃を務めております。アリアと申します」
……?
アリア皇妃?
確かに隣国の皇帝……セレス殿下のお兄さんの奥様の名前だけれど……。
「ふふふ。私こういう潜入とかが得意な家門の生まれなの。これを見てもらったら証明になるかしら?」
そう言われて渡された指輪には、ストレイン皇国の国章が彫ってあった。
細工も細かいし……これは確かに嘘ではなさそう。
「隣国の優雅なる皇妃殿下に大変な無礼を働いてしまい申し訳ございませんでした」
私が、礼を取るとロイドとターニャも私に習って礼をしてくれる。
この辺りは、子どもの頃に真似事で一緒にしていてよかった。
「頭を上げてほしいわ。あなたは、セレスが大切に思っている子ですもの……。こんなところを見られたら私、あの子に怒られてしまうわ」
そうやって朗らかに笑う丹力から察するに、本当にこの人が皇妃たる器なのだろうと思う。
「私って、特徴がないことが特徴だから、諜報とかに向いているのよ。それに私がこうやって動くことで、カイエン様も皇国で動きやすくなるから」
「アリア皇妃殿下は。味方と思ってよろしいのでしょうか?」
私が皇妃殿下に指輪をお返ししながら尋ねると、彼女は底の見えない笑顔を返してくる。
「えぇ、サントス伯爵領の紅茶とそれらを利用したお菓子のお陰で私は流行を作り出せると地位が上がったから、そのお礼よ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、早くユリアーナ嬢は商会長に会った方がいいわ。ロゼリアン公爵家に罪をきせるのが予定よりも早まって商会は混乱しているから、今なら手伝うふりをしていくらでも帳簿類は持っていけるわよ」
「それが私のお役目ということですね」
「えぇ……ただ『原石』の名簿は商会長が持っているから気を付けて奪うのよ」
「わかりました」
私に注意をするとアリア皇妃殿下は、屋根裏部屋の窓の方へ向かっていき、そのまま外へと出て行った。
慌てて下を見ると、華麗に着地をされて私に手を振って去っていった。




