商会の闇……
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アレクシス殿下に呼ばれたのは、リーンが連行された翌日だった。
いつもの地下室。
いつもと違うのは、前世であったアパレルブランドのシーズンごとのショーケースのような量のドレスと小物だった。
「君を呼んだ理由は分かるね」
「はい……帳簿で販売価格は見ていますが、もしかするとそれすら誤魔化しているかもしれません」
「大体の概算でいい」
「かしこまりました」
私はアレクシス殿下に頭を下げると、部屋に大量にあるMuguetNoirの商品を確認していく。
私のほかにはエドガー様。
そして、ルーカス様も立ち会ってくださっていた。
私が目を通して、エドガー様に大体の金額と発売したシーズンを伝えるけれど……。
「アレクシス殿下。ほとんどの商品が非売品です」
「非売品?」
「はい。オリバーさんに手伝っていただいて分けたのですが、殿下から見て右側のドレスは販売を確かにすると聞いていたものです」
「ほう……全体の三割くらいか?」
「ざっくりとそのくらいかと思います。そして残りは、私がデザイン画を見せた段階で却下されたドレスと小物になります」
「そうなのか……」
「なので、正式な値段は分かりかねますが、逆に言えば値段を水増しすることもできます。ロゼリアン公爵夫人様がどのような方か存じ上げませんので何とも言えませんが……」
「言いたいことは分かるぞ。そして、君の思っていることはあっている。リーンの母親であるロゼリアン公爵夫人は、己が一番目立っていないと嫌な人だ。それこそサントス伯爵夫人や俺の母上とが社交界で目立つことをよく思っていなかったらしい」
お母様は、学生時代に王妃殿下とともに社交界を席巻していた。
もちろんそれを面白く思わない人もいただろう。
リーンだって、公爵令嬢という地位があるにも関わらず、嫌味を言う子がいないわけではない。
なんなら……今回学園にいるところを連れていかれたことで、そういう嫌っていた勢力が元気に批判をし始めている。
アレクシス殿下は、この件に関して学園では沈黙することを選ばれた。
私やミリィにも色々聞かれるけれど、私たちも何も語らないことにしている。
「うちの母親と競うように装飾品などを買っていましたから……きっと簡単に購入を決められたんじゃないですかね?」
ルーカス様が、小物のコーナーを見ながらそう呟く。
「それは、なぜですか?」
「我が家の屋敷でこの小物と宝石の色が違う小物を見たことがあります」
そう言って、ルーカス様がご実家で見たことがあるというものを指さしていく。
それをオリバーさんがメモしていく。
「小物だと約半分が一緒ですね。うちの母上も何かしらこそこそとしている人なので……もっとあるかもしれませんが」
そこからアレクシス殿下とルーカス様が話をされていた。
「あの……これがリーンを救い出すことにどう役に立つんでしょうか?」
私が聞くとお二人は顔を見合わせる。
「そうだな……正直言えば今のところリーンを掬うには不利な状況だ」
「えっ!!」
こともなげに言う殿下に驚く。
「ただ、アイリが今問われていることは二つ。王家に革新派だと偽った詐称の罪。これに関してはアイリがそうじゃないということが証明できたらいい」
殿下が指を立てて私に説明してくれる。
「もう一つは彼女がどうこうではなくロゼリアン公爵家にある……国法を破って人身売買をした罪によるものだ。こちらは一族郎党全員処分となる」
「これを回避する為に役に立つのは我が家だ。南部の反乱を助長したにも関わらず……後継者の首だけで済んでいる」
「私不思議だったのですが、なぜそれで済んだのですか?」
「それは……」
「それについては僕から話そうかな」
ルーカス様が言い淀んでいると急にセレス殿下が現れる。
「僕のおばあ様がその首謀者の家の出身だったからだよ。隣国の皇家に嫁いだ皇妃の生家そのような理由で没落するとまずいだろう?」
「そしてそのことを提案してくださったのが……ユリアーナ嬢。君の曾祖母様だよ」
「曾祖母様が?」
「あぁ……だから我が家門は実は君のお母様の家門に大きな恩と弱みを握られているんだよ」
「そう……なんですか?」
「だからね。その弱みをアイリーン様の為に使おうと思うんだよ」
「どういうことですか?」
「簡単なことです。探したら出てきたんですよ。わが領地の兄が受け継いだ執務室の机の引き出しに……。恩のある家系と王太子の婚約者を貶めるための計画書が……いやぁ、兄が物覚えが悪いのがこんな時に役に立つなんて!」
多分、ルーカス様はお兄さんが大嫌いなんだろうな。
すっごいいい笑顔だわ。
自分の家門が無くなろうとしているのに……。
「ルーカス様! そんなものが出てしまったらルーカス様だって……」
「ただでは済みませんね。なので大変申し訳ないのですが、ミリアム嬢とは破談にしないといけませんね」
「そうじゃなくて」
「いいんですよ。殿下側についた時から僕がこういう未来を迎えることは覚悟していました」
「そんな! そんなの……」
「ミリアム嬢の事をよろしくお願いします。ユリアーナ嬢」
私とルーカス様が話しているのを見ていた殿下が、可笑しそうに笑う。
「ルーカス、お前が俺の側についてもう十年も経つんだから俺がその時に備えて何もしていないと思ってるのか?」
そう言って殿下が何かを言おうとした時だった。
「殿下! 大変です。リーンが、裁判に明日出廷することに!」
ミリィが慌てて駆け込んでくる。
昨日連行されて、明日には裁判って……どんなスケジュールなの?
「慌てているみたいだな。ロゼリアン公爵家は全員捕まっているにも関わらず何をそんなに急いでいるのか」
殿下は、なぜか余裕な様子で笑っていた。
「貴族を全員招集するように国王陛下が言われるだろう。ルーカス……僕と来てくれるな?」
「はい。もちろんです」
「ユリアーナ嬢。『原石』について何か手がかりを探せるかい?」
「どこまでできるか分かりませんが……やってみます」
「よろしく頼む」
アレクシス殿下の命令に頭を下げて、私はグランヴァルト商会へ行くことにした。




