囚われる姫は?
2026年あけましておめでとうございます!
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翌日、私がクラスへ着くと気が付いた数人が近寄ってくる。
いつもは話さないのに、矢継ぎ早に質問をしてくるのをただただ聞いておく。
何も答える気はないので、ずっと話す皆さんの言葉を聞くだけ……。
聞いているだけで、先生が来る時間になったのでそのまま解散になる。
いや、皆さん聞きたいことがあるなら私に話す間を与えてほしいものだわ。
授業が始まっても、チラチラと皆さんリーンのことを見ている。
それでもアレクシス殿下のことを見る勇気はないらしい。
見られているのは、リーンだけなのがちょっと腹が立つ。
大きな混乱もないまま昼休憩になる。
まだ学校では、私たちは喧嘩をしたことになっているからミリィと二人でリーンの方を見る。
リーンはエマさんを連れて、食堂の方へ向かっていた。
だから、私たちもその後ろについて歩く。
だれもがリーンが歩くために道を開ける。
それは、さながらモーゼのよう……。
そんなことをのんきに思っていた時だった。
――ドタドタドタ……。
騒々しい複数の足音と金属がカチャカチャとこすれあう音が後ろからして振り向く。
そこには、王家の騎士?
三人の騎士が私とミリィの横を駆け抜けるとリーンの前までくる。
「アイリーン・ロゼリアン公爵令嬢。貴殿には王家に対する謀反未遂罪で連行するように令状が出ている!」
「こちらに来ていただきますよ!」
「いくら公爵令嬢でも拒めばどうなるか分かっていますね」
突然の光景に居合わせた生徒全員が固まる。
エマさんがリーンと騎士たちの間に立つ。
「何を戯れ言を言っているのですか! 令状をまずは提示しなさい」
何かの劇を見ているの?
謀反未遂罪って何?
意味は分かるのに情報が頭に何も入ってこない。
でも、リーンがそんなことをしないのを私は知っている。
だって……彼女は殿下のことが大好きなのだから!
「お前たちは、王都周辺の警備部隊だな。学園で何をしている!」
毅然とした冷酷な温度の声が聞こえてくる。
声の方には、アレクシス殿下とオリバーさん。
「ユリアーナ嬢。大丈夫か?」
「ミリアムも……顔が真っ青だぞ」
「セレス殿下! ルーカス様!」
いつの間にそこに居たのか私たちの傍にはセレス殿下とルーカス様が立っていた。
アレクシス殿下がこちらに歩いてくる。
さっきのリーンの時のようにアレクシス殿下の前にいた人垣が割れていく。
ただ違うのは、私たちは本能的に彼が通る瞬間に臣下の礼を取っていたこと。
それだけ、今の殿下は殺気立っていたのだ。
エマさんと騎士たちの間にアレクシス殿下が立つ。
「で、さっきの質問に答えてもらえるかい?」
アレクシス殿下の冷笑がこの場の空気を凍らせていく。
「我々は、王都の警備に当たっている騎士です。騎士団長よりロゼリアン公爵令嬢に謀反未遂罪で令状が出ております。こちらになります」
そう言って、騎士が令状を開く。
それを殿下が見ているけれど、一瞬苦虫を噛み潰したような表情になった。
オリバーさんも目を見開いている。
二人の反応が物語っている。
あの令状が本物であることを……。
嘘よ!
「この令状に則りロゼリアン公爵令嬢を連行する為に参りました」
騎士は殿下の驚いた顔を見て、薄ら笑みを浮かべている。
きっと彼は南部の貴族の令息なのだろう……。
どの家か知らないけれど今自分が殿下を黙らせるだけのものを持っていることに愉悦を感じているのだろう。
それでもさすがにリーンを連れていかれるなんて納得がいかない。
「殿下、私は大丈夫です」
恐ろしく冷静な透き通った声が響く。
リーンは、汚い薄ら笑いを浮かべる騎士の顔をしっかりと見据える。
「あなたは、私一人を連行する為に大人数で来たのでしょう? さっさと連れて行けばいいのではなくて?」
そう言って、殿下の前にリーンが出ると騎士が乱暴にリーンの手を掴む。
「公爵令嬢だからっていい気になるなよ。お前は今罪人なんだからな」
どれだけ強く掴まれたのか……リーンの顔が一瞬痛みに歪んだように見える。
「彼女を連れて行くのなら、俺も一緒に連れていけ」
「シス様……それはいけませんわ。あなたがこの場を納めてくださらないと。皆さん驚いていますもの」
そう言って殿下を見ると優しく微笑む。
というか、初めてリーンがアレクシス殿下を愛称で呼ぶところを見たな。
「アイラ! ダメだ。行く必要はない!」
「すぐに戻ります」
「さっさとついてこい」
そう言って連れて行こうとする騎士の後を背筋を伸ばしてリーンが歩く。
彼女は今連行されているはずなのに、この場にいる誰よりも気品に溢れていた。
リーンが目の前を通過するとき私は手を彼女の方へ伸ばした。
でもそれをリーンは視線で制してきた。
セレス殿下に手を掴まれしまう。
「セレス殿下……離して下さい!」
「やめておけ。アイリーンには何か考えがあるんだろう……。俺たちだって悔しいんだよ」
リーンの姿が見えなくなると、彼女のいた場所にはアレクシス殿下とオリバーさんとエマさん。
誰もその場を動けずにいると、校内に放送が流れる。
内容は今日の授業は終わりというものだった。
私とミリィは二人……学園から生徒がいなくなるのを待って、あの部屋へ急ぐ。
――ダンッ。
私たちが部屋に入るとアレクシス殿下が、中央の机に思いっきり拳を打ち付けていた。
その傍らには、セレス殿下とルーカス様にエドガーさん。
全員、表情は暗いものだった。
もう一度アレクシス殿下が拳を振り上げたのを見て、慌ててその手を掴んで止める。
「サントス伯爵令嬢……離してくれないか?」
「アレクシス殿下が、悔しい気持ちは分かります……でもこんな風に殿下が傷つくことをリーンはきっと望んでいません」
殺気立った殿下は怖かったけれど、ここはそれでも止めなきゃいけないと思った。
自暴自棄になっても問題なんて解決しないのだから……。
「失礼いたします」
睨み合う私とアレクシス殿下の殺伐とした空気をエマさんの声が破った。
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