我が家の正体~アイリーンside~
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週末、お母様からしつこく誘われていたお茶会に参加した。
一応派閥の集まりだったけれどこれといった収穫はなかった。
そのお茶会の翌日私は一人でロゼリアン公爵家の領地へ向かっていた。
王都で人気のお菓子を大量に買い込んで向かう。
ありがたいことに、アレクシス殿下が私の両親に結婚前に領地へ過ごしてほしいと伝えてくれた。
それによって私が領地へ行くことは、怪しまれることはなかった。
「それで、ハンスが私に伝えたいことって何かしら?」
「私も父が何を伝えたいのか分からないんです」
ハンスというのは、領地を父や兄の代わりに切り盛りしてくれている執事長。
そして、エマの父親。
王都のタウンハウスへ連れていけないほど、ハンスは優秀だった。
でも、ハンスはその能力を活かすことは今もできていない。
理由は簡単だ。
エマとマリアが人質にされているから……。
ハンスが、私のお父様やお兄様の指示に逆らえば王都に居る二人がどうなるか……。
「ハンスの苦労もあと二年よ。私が王家に嫁げば……あんな人達よりも力を持てるもの」
「父が見たら倒れてしまいそうです。父の中でお嬢様はまだ小さな子どもですから……」
「嫌ね……そんな接し方されても困るだけだわ」
「そんなことをしたら、私が怒りますから安心してください」
こんな軽口を叩いては居るけれど、ハンスから秘密裏に届いた手紙の内容は不穏だった。
『たまたまですが、見つけたものがあります。それをアイリーン様に引き取っていただきたいです』
引き取るって何を? とは、思ったけれど、行けば分かると考えて気にしないふりを続けている。
馬車で数時間走ると領地の家に着く。
ここに帰ってくるのは何年ぶりだろう?
そう思いながら馬車を降りると、領地に残った使用人たちが総出で出迎えてくれた。
そして、その使用人たちの先頭に白髪を綺麗に整えた男性が立っている。
「お嬢さま。大きくなられましたね。領地へおかえりなさいませ」
「えぇ。短い滞在で申し訳ないのだけれどよろしくお願いしますわ。ハンス」
挨拶を交わして、ハンスにお土産のことを伝えて、使用人のみんなでお茶をするように伝える。
エマには、サントス伯爵領の紅茶を使用人たちに給仕してもらえるようにお願いした。
使用人全員が、お菓子とお茶で休憩しているのを確認して……私とハンスはお父様の執務室に入った。
「それで、ここで何を見つけたの?」
「はい。ここの本を抜いていただいてもいいですか?」
私が質問したのに……と思いながらも言われたとおりに本を抜く。
すると本棚が横にスライドして、金庫が現れる。
「因みにこの金庫って開くの?」
私は、驚きながらも使用人たちに見つかる前に済ませたいのでハンスに聞く。
「えぇ……数年かかりましたが、開けることができました」
そう言って、ハンスは金庫のダイヤルを合わせて開ける。
私が金庫の中を覗くと、そこには書類が入っていた。
一番上の一枚を手に取ると、そこには『原石購入代』と書かれた謎の書類。
そしてそのほかの紙には……。
「ハンス。この字は確かにお父様の字だけれど……ここに書かれていることは本当の事なの?」
「この館でお会いになることが無かったので、私も疑心暗鬼だったのですが、領地にあるグランヴァルト商会の支店に旦那様が出入りしているという情報を領民から得ました」
「そう……なのね。これが分かれば私の立場も危うくなりそうね」
私がそう言って笑うと、ハンスが優しく頭を撫でてくれる。
「お嬢様……。大丈夫です。きっと殿下がお嬢様の事を守ってくださいます」
「そうかしら……でも、怖いわ」
「そうですな……お嬢様は、殿下を信じることができないのですか?」
「そんなことないわ! 私は、殿下の事を信じている。だって……私は子どもの頃から……」
「お嬢様の気持ちは知っています。大丈夫です」
「私は……殿下のことが好きなのに。このことがバレたら……私はもう殿下の傍にいることはできないわ」
私の目から涙があふれてしまう。
それでもこれで事件の解決が進むと書類をぎゅっと抱きしめる。
声を殺して……泣いている私をハンスは背中を撫でてくれた。
「ふぅ……ごめんなさい。私がしっかりしなければいけないわね」
「ほほほ。そうやって強いまなざしをされているお嬢様は、本当に先代様に良く似ていらっしゃいますな」
「まぁ、お爺様に似ているなんて光栄なことだわ」
私がひとしきり泣いて顔を上げるとハンスがハンカチで私の顔を拭いてくれる。
こういう小さい子ども扱いされるのは、嫌いなんだけど……ハンスと殿下になら許してもいいと思える。
私が尊敬してやまないお爺様に似ていると言ってもらえたことで、さらに前に進む勇気が出た。
これを公表することで何が起きるか……私の立場がどうなるかは分からない。
この『原石』という単語が何を指しているのかも分からない。
それでも、私はこの書類を王家に渡す決心ができた。
「誰かに見られるといけませんので……こちらに入れてお持ち帰りください。先代様がなくしてはいけない書類をしまっていた箱です」
ハンスの手元を見ると銀色のカギが付いた書類入れの箱。
私はその箱を受け取ると大切に書類を閉まって、鍵をユリさんにもらったネックレスチェーンに通す。
ペンダントトップがまだできていないけど長さが知りたいからと言われたのに、私がお願いしてもらったものだ。
デビュタントの衣装と一緒にこのネックレスのペンダントトップをくれると言っていた。
「そろそろお茶会も終わるでしょう」
「そうね。じゃあ私はこのまま帰るわ。これは急いで王都へ持って帰らないと」
「かしこまりました……」
「ハンス。こんなことを言いたくはないけれど……あなたは私を裏切らないわよね?」
「もちろんでございます。お嬢様」
「それが聞ければ満足だわ。いつもありがとう」
私とハンスが玄関に戻るとエマが青い顔をして、お茶会をしている食堂から出てきた。
「アイリーンお嬢様! 先ほどオリバーさんが来て……急いで王都に帰還するようにと言われました」
「オリバーがわざわざ来たってことはただ事ではなさそうね。ハンス、私たちは帰ります」
「はい。かしこまりました」
私とエマは来たときと同じように馬車に乗る。
その馬車の中で、私はエマにネックレスを託した。
「エマ……。この箱のカギをあなたに渡しておくわ。私に何かあった時はこの箱を殿下にお渡しして……」
「アイリーン様! どういうことですか? お嬢様に危険なことなど……」
「今は言えないの……私が信じられるのはあなただけよ。お願い」
私がそう言うとエマは、ハッとした顔をしてネックレスを受け取って自身の首につけた。
「父は……」
「その答えが分かるのは全て終わってからよ」
私がそれだけ伝えると寮に着くまでの間、馬車の中は静かだった。
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