相手が居ないのは、私だけのはずなのに
昨日は、朝から門限に間に合う時間まで、マーサさんとクララさんとドレスについて話をしていた。
二人のプロの目から見たアドバイスももらえて、勉強にもなった。
来週からは、週末はグランヴァルト商会で経理の勉強をする。
だから、譲れない点を伝えることができたのは、とてもありがたかった。
ミリィと一緒に登校するのかと思っていた。
けれど、朝の私の部屋に一緒に行けないことを伝えて、先に登校してしまった。
教室に向かうと、ミリィもリーンももうすでに来ていた。
ただ、先生がいつもより早く来たので、結局ミリィに理由を聞くことができなかった。
話が聞けたのは、昼休みにお昼ご飯を食べている時だ。
「こっちです」
先に行ったミリィ指定の中庭の奥にあるベンチから私の事を呼んでいた。
「ユリアーナ嬢。お久しぶりですね」
私が近づくとルーカス様が、ミリィの奥に座っていて驚く。
「はいはい。ユリアーナ嬢は、僕の隣にどうぞ」
そういって、ベンチにハンカチを広げて、セレス殿下に促されるまま隣に座る。
「えっ! なに? どういうことなの!!」
「そのね、実は……」
「私から話しましょう。実はミリアム嬢と僕の婚約が決まりました」
婚約が……決まりました。
あぁ、婚約者のふりするんだもんね?
でも、今のルーカス様の言い方的に、本当に婚約が決まったように聞こえる。
あれ? 婚約ってなんだっけ?
「ふふふっ。いきなり言われたら混乱するよね」
私の隣にいるセレス殿下がクスクス笑う。
「えっ……と、私の聞き間違いとか、認識の間違いではなく」
「えぇ、私とルーカス様の婚約が本当に決まって……。その保守派の方には婚約者として紹介もすませているの」
な、なんですって!!
お祝いするべきなんだと思うんだけど、驚きが勝手言葉が出ない。
でも、目の前のミリィが嫌そうには見えない。
だからこれはきっと祝福していいのだろう。
「ミリィ。おめでとう!」
私が笑顔でそう伝えると、少し不安そうな顔をしていたミリィの顔に笑顔が戻った。
「ユリ、ありがとう」
「ただ、僕たちは今回の事が終わる頃には貴族でいれるのか怪しいところではあるけどね」
「ルーカス様!」
「そんなの関係ないです。ミリィは、私の大切なお友達ですもの」
そう言って、ミリィとの友情に浸っていると横からセレス殿下が口を挟んでくる。
「でも、こうなると来月頭のデビュタントにリーンは、アレク。ミリアム嬢は、ルーカスというパートナーが居るわけだけど……」
そこまで言われて、理解した。
そう、私にはパートナーが居ないのだ。
デビュタントのタイミングで、婚約者がいない令嬢は、珍しい。
何らかの形で幼少期に親が決めた婚約者が居る貴族家が、多いからである。
ただ、我が家は恋愛結婚の為、父も母も婚約者なんて考えていない。
なので、兄も未だに婚約者が居ない。
妹のひいき目かもしれないが、性格も容姿も申し分ないのに……。
「ねぇ、僕が立候補してもいい? ユリアーナ嬢のパートナー」
軽い調子でそう言うセレス殿下に驚いて、殿下の顔をまじまじと見てしまう。
なんなの!!
今日は、みんなで私になにかドッキリをしかけているの?
「それで、私のところにまで来て昼食を一緒に取りたいと言われたんですね」
「そう。もちろん、ルーカスとミリアム嬢の婚約は心から祝福しているよ」
「セレス殿下のパートナーは、少し私には荷が重いと言いますか」
「そうかな? そんなに構えなくてもいいと思うけど」
何言ってるのこの人!!
王族がパートナーなのに、構えなくていいなんてことあるわけがないじゃない。
情報量が多くて、情緒がおかしくなってきたんだけど……。
「セレス殿下、ユリの事を困らせないでください」
「ははは。そうだね。前日までに答えを出してくれると嬉しいな。さぁ、ご飯を食べよう」
えぇ、話題流された!!?
結局そのままセレス殿下が、メインで話をしていて気がついたら昼休みは、終わっていた。
放課後になって、三人ばらばらで、あの秘密の部屋に行く。
と言っても、リーンは殿下と一緒に行くし、ミリィもルーカス様と一緒。
ひとりぼっちなのは、私だけ……。
そんなことを考えながら教会に着くと、ベンチに人が座っている。
「ユリアーナ様」
その人は、振り向いて私の名前を呼んだ。
「エドガーさん? 部屋に行かれないんですか?」
「あの隠し扉動かすの大変なので、いらっしゃるのを待ってました」
「そうなんですね! お待たせしてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。ここ、なんとなく落ち着くんですよね」
「では、行きましょうか」
そう言って、私たちは二人で下に降りるための隠し扉をくぐろうとした時だった。
「ユリアーナ様。デビュタントってパートナー決まってますか?」
ま、またこの話!
今日はみんなこの話がしたい日なの?
「いいえ。それどころではありませんから……」
「たしかに状況としては、難しい中でのデビュタントになりそうですけど……。もし、チャンスがあるなら僕にも立候補させていただけませんか?」
そう言って、エドガーさんが私の手を取る。
驚いて、彼をただ見つめることしかできなかった。
「そんなに驚かれると、全く相手にされてないみたいで悔しいですね。良かったら、考えてください。さぁ、行きましょう」
なんなの!
なんで、二人ともそんなに一方的なのよ。
先に階段を下りていくエドガー様の姿を見送りながら、頭の中が大混乱していた。
今から会議なのに……私、大丈夫なのかな……。
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