タヌキとキツネの中でフクロウになる~ミリアムside~
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先週から、登下校と放課後をルーカス様と過ごすようになった。
正直、男の人とこんなに長く一緒にいることがなくて、緊張する……。
会ってやっていることは、勉強を教えてもらってるだけなのだけど。
「聞いてますか?」
「はい……ここの答えが」
「違いますよ。父があなたを僕の婚約者に認めました」
「えっ……?」
「決まりましたよ。僕たちの婚約」
図書館の一番奥の席。
夕日に照らされながら、そんなことを言ってもらえるなんて……。
普通ならときめくんだろうけど、驚きが勝った。
「私、ご挨拶にも伺ってないですよ」
「そうだね。でもいいんじゃないの? 僕らとしては助かるわけだ」
「そうですけど! ルーカス様は、侯爵家のご子息ですよ!」
「うん」
「私は、領地が没落している男爵家の令嬢ですよ!」
「ご自分の家をそんな風に言うのは、どうかと思いますよ。あと、人が居ないから良いですけど、声が大きいです」
気がついたら立ち上がって、叫んでいたのに驚く。
閉館間近で、人目がなくてよかったと、ほっと胸を撫でおろした。
だけど、それどころではない!
「僕はあくまで兄のスペアですから。父も母も別にどこの誰と結婚しようと興味ないんですよ」
「それなら、ルーカス様に早くから婚約者を宛がわれてもよかったんじゃ……」
「だから、興味がないんですよ。王城に勤めてればいいんだ」
「それでも……」
「あなたは、本当に優しいんですね。領地のこの子の為に泣いたり、僕の話を聞いて、なんであなたの方が辛そうな表情をするんですか?」
そう言われて、初めて自分が泣いているのに気づく。
彼が、前世の私に重なるから……。
二人の兄たちだけに期待を寄せる両親。
別に、医師に性別の壁はない。
それでも、結婚してキャリアに空白期間ができてしまうからと、いつも嘆いていた。
「泣かないでください。僕には殿下もあなたもいますから」
そう言いながら、涙を拭いてくれるルーカス様。
その手はとても暖かかった。
「それで、せっかくなので週末の保守派のパーティーに、パートナーとして同行してください」
えっ……この人本当にいきなりだな!
「わ、わかりました」
「ドレスはこちらで用意しますね」
「そんな、そこまでしていただくのは」
「いいんですよ。僕にプレゼントさせてください」
そう言われて、二日後……。
パーティーに行く日の朝、見たこともない豪華な夜会用のドレスが届いた。
「ミリアム様。とてもお似合いですよ」
リーンがお願いしてくれたらしく、昼過ぎに私の部屋にエマさんが来た。
手慣れた様子で、丹念に磨き上げられて、着飾られた。
「こ、これ。本当に私ですか?」
肩より長い髪が綺麗に纏め上げられて、ユリがくれた桜の花のヘアアクセサリーが、輝いている。
水色のドレスはシンプルなのに、裾に……宝石がついてる。
きっとそう……、だってきらきらしてるんだもの。
アクセサリーまで、用意されていた。
「初めて袖を通すのに、こんなに着こなすなんて、ミリアム様が素敵だからですよ」
そう言って、私に目を閉じるように言うエマさん。
「いいですよ」と言われて、目を開けると桜色の綺麗な口紅が付けられていた。
「素敵……」
「えぇ、本当に素敵です。大丈夫ですよ。ミリアム様にはルーカス様もアイリーンお嬢様もいます。怖がらなくて、大丈夫です」
震えていた私に気づかれていたらしい。
そっと手を包まれる。
大丈夫……。
そう思って寮を出たのに、実際に来るとやはり怖い。
ルーカス様は、同年代の中ではアレクシス殿下に次ぐ、優良物件だ。
今まで、パートナーを連れてこなかったのに、私と一緒に入場したときから痛いほど視線を感じていた。
そして、ルーカス様とのあいさつ回りで、私は『婚約者』として紹介された。
父親のそばに居る令嬢たちに、睨まれ続けた。
それでも、彼は策士なのだろうと思ったことがある。
それは、二人の服装がリンクコーデになっているところ。
さらに、毎回ルーカス様が私を好きになって、婚約に漕ぎつけたという嘘のストーリーを語り続けてくれたこと。
保守派で我が家の地位など、ない。
当たり前だ……だってあの家に今住んでいるのは平民なのだ。
これ以上、侯爵家が力を持たないと分かって、安心したように胸を撫でおろす当主が多かった。
ただ、虎視眈々と狙っていたのだろう。
私が、壁際で一人休んでいると数人のご令嬢たちが近づいてきた。
先頭にいる方は見覚えがありすぎるけれど……。
「クラリス様、ここでお会いできるなんて嬉しいですわ」
どう考えても友好的ではない集団の先頭に立っている彼女にそう声を掛ける。
面を食らったような顔をしていたけれど、すぐに体勢を立て直してくる。
「あなたなんかに、ルーカス様の婚約者なんて分不相応ですわ」
「私も驚きましたの。でも、侯爵家からのお申し出をたかが男爵家の令嬢が断れませんわ」
私は、扇子を開いてくすくすと笑う。
実家には、何も届くことはないのだけどね。
「それでも、断るのが道理でしょう!!私が、ルーカス様の婚約者になるはずだったのに!」
クラリス様って、忙しい人だなと思う。
アイリーン様に何かあれば、次は自分の番だと狙っていると聞いていたけれど……。
ルーカス様の事を狙っていたのか。
二兎を追う者は一兎をも得ずとは、まさにこれだな。
「こればかりは、許可をされた侯爵家かルーカス様に言っていただかないと」
困った人を見るような目で伝えると、地団駄を踏まれてしまう。
「あなたね! アイリーン様が味方だからって、調子に乗るんじゃないわよ!」
そう言って、叫ぶものだから周囲の目が全てこちらを向く。
この方といると注目を浴びることが多いなと、しみじみ思ってしまう。
「その服だって、あの田舎者に頼んでMuguetNoirの物を手に入れたんじゃないの!」
そう言って、私のブレスレットを取ろうと手を伸ばしてくる。
さすがに、後ろが壁で逃げられない。
どうしたものかと焦っていると、横から手が出てきて大きな背中が私の目の前に現れた。
「オルレアン公爵令嬢。僕の婚約者に何をしようというのかな?」
そう言って、怒りを隠そうともしないルーカス様に驚く。
「わ、私はルーカス様をだまして婚約者になったこの女に……」
そこまで、クラリス様が言うとなぜかルーカス様に抱きしめられた。
「君はなにも分かっていないね。僕は彼女が好きなんだよ。あと、このドレスやアクセサリーは僕が贈ったものだ」
凄いこと言ってるけれど、それよりもこの体勢をやめてほしい。
そう思ってふと見上げるとクラリス様を睨みつけるルーカス様の整った顔が……。
もう、胸が張り裂けそうなくらいドキドキしてる。
「ミリアム。こんなところに一人にしてごめんね。もう帰ろう」
そう言って、そのまま肩を抱いてパーティー会場から出て侯爵家の馬車に乗せられる。
「あ、あの。助けていただいてありがとうございます」
御礼を言うとルーカス様が、私に優しく微笑んでくれる。
顔に熱が集まるのを感じて俯いてしまう。
二人とも無言のまま、寮について女子棟の前で分かれたところまでは、覚えている。
気がついたら次の日の朝で……、なぜか熱が出た。
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