平和な一日
朝、机の上に広げたままのスケッチブックを見て、私は思わず苦笑いしてしまう。
そのまま制服に着替えて、今日は紺に合わせてピンクのリボンを付ける。
髪もハーフアップにして、自作した白のレースのカチューシャを添えた。
姿見の前で、全体のバランスを確認する。
「おはようございます」
クラスに着くと数名の生徒がもう来ており、挨拶をすると何人かが挨拶を返してくれた。
王都近郊の令嬢たちはすでにグループができているらしく、何組かグループでかたまっている。
自分の席について授業の用意を始めてる。
「彼女が…グランヴァルト商会の」
「あの装飾もMuguetNoieかしら」
「いいわね、身内に人気商会の方がいると…」
私が何かアレンジに使うたびにこれを言われるのか。
覚悟はしてたけど、結構辛いな。
少し気分が下がって、俯いてしまう。
「ユリアーナ様、おはようございます」
「ミリアム様.…、お.…はようございます」
「今日の雰囲気もすごく可愛いです。とってもお似合いです」
「あ、ありがとうございます」
「ふふふ、照れて可愛いですね」
そう言われて、顔に手を当ててるとちょっと熱い気がする。
「サントス伯爵令嬢、ウィナー男爵令嬢おはようございます」
「ヴォルマー様、おはようございます」
「おはようございます」
笑顔で挨拶を返すミリアム様と対比するように私の表情はぎこちなくないか不安になる。
「サントス伯爵令嬢、よかったらまた昨日の話の続きしようね」
「……、私からは何もお伝えできることないですよ」
「そんなことないよ」
エドガー様は、不敵な笑みを浮かべる。
困っていると担任がクラスに入ってきて、授業が始まる。
授業中、後ろからクラスを見渡してみる。
アレクシス殿下もアイリーン様も真剣な表情で先生たちのお話を聞いている。
特に、経済などのお話は真剣だ。
私もいつか自分のお店を持った時の為に真剣に授業を受ける。
穏やかに授業は進んでいき、お昼休みになった。
「ユリアーナ様、ご飯ご一緒しませんか」
「もちろんです」
主人公とこんなに関わる予定じゃなかったのにな。
懐かれてしまった……。
食堂でランチボックスを購入して、陽当たりのいい中庭のベンチで隣に座りあって一緒にご飯を食べる。
「いきなり授業なんて、もう少しゆっくりでもよくないですか」
「そうですね。私は知らないことを学べて嬉しいですよ」
「えぇ、もっとゆっくりしたいですよぉ」
「ふふっ。試験の日程も決まってますから仕方ないですよ」
分かっていてもやっぱり学生からしたら遊びたいんだろう。
主人公とこんな関係になる予定はなかったけど、学生らしい平穏な時間だなと笑顔がこぼれる。
こんな日々がずっと続くと思っていた。
けれどその裏で、物語は静かに、でも確実に動き始めていた。
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