エドガーside~怪しい子~
王太子殿下の肝いりの政策で、今年から試験をパスした平民も学園に通うことができるようになった。
俺は、父親について色々な領地を巡ったりしながら勉強もしてきたのが功を奏して、入学することができた。
とりあえず、今年の新入生についてヴォルマー商会の情報網を駆使して、情報を集めていると一人の少女に目が留まる。
「グランヴァルトの関係者も同じ新入生なのか」
グランヴァルト商会は、数年前までは王都で細々とした取引をしているくらいのギリギリ中規模と呼べるような商会だった。
それが、MuguetNoieという貴族婦人向けのブランドを立ち上げて、一気に大商会と言われるまでの商会に成長した。
デザイナーは商会婦人らしいけど、彼女が嫁いで十年以上経っているのに、急にブランドを立ち上げたことに父親は不信感を持っていた。
さらにそれが貴族社会を席巻していくと疑問に思っていた。
もらった書類から一枚取ると情報を凝視する。
家族の色素が違うため、血縁を疑う噂ありねぇ。
そういう噂立ててるやつが、外で愛人囲ってるくせによくやるよな。
噂の出所は…、保守派の家が流してるんらしい。
貴族ってめんどくさそうだな。
学園は、入寮制なので前日に荷物を纏めて寮の部屋に入る。
元々貴族の学校だから個室なのはありがたい。
入学式後のクラス表の前で、にやりと笑てしまう。
同じクラスのメンバーの名前に、あのグランヴァルト商会の身内が居た。
教室に行けば、彼女は横の席で自然と話しかけることができる。
いきなり商会の事を聞いたからか、癒着の事を聞いてしまったからか常に警戒されているように対応されている。
彼女との関係が変化したのは、クラリス公爵令嬢と揉めた後だ。
さすがに上位の家の令嬢とやりあったのだから、放課後に一人で教室に残っていた時だった。
「サントス伯爵令嬢、昼は大変だったね」
「あぁ、エドガー様ですか」
「そのエドガー様ってやめてもらえません。平民ですから」
「では、エドガーさんと私の事も名前でお呼びください」
「それでは、ユリアーナ様と。どなたか呼びますか」
「いえ、私は家から侍女を連れてきてないんです」
「そうなんだ」
「エドガーさんとお話したら少し落ち着きました。ありがとうございます」
「お力になれたならよかった」
疲れた顔をしていた彼女は、カバンを手に取って、帰っていった。
その日から、ユリアーナ様からの俺への対応は少し柔らかくなった。
ただ、彼女は嫌がらせの標的になって、日に日に疲弊が見えるようになった。
そして、例の噂が彼女の耳に入ることになる。
本当に初めて、彼女が人に対して怒りを表している姿を初めて見た。
とりあえず、荷物を預かったけど、彼女の前に出ようとしたところで、おいしいところをアイリーン・ロゼリアン侯爵令嬢に持っていかれてしまった。
その日の放課後もユリアーナ様は放課後の教室に一人残っていた。
「大丈夫ですか。良かったら飲み物どうぞ」
「エドガーさん、ありがとうございます」
「噂の事は知っていたの」
「いえ、知らなかったのですが、両親に血縁証明書があることは聞かされてました」
「そっか。そういえばユリアーナ様がいつも付けてるそのヘアアクセサリーってグランヴァルト商会のブランドだろ」
俺が尋ねると彼女は少し右上を見てから首を縦に動かした。
「よくおわかりになりましたね」
「とても似合ってますよ。商会長夫人がデザインしてるんだっけ」
「えぇ…」
「でも、普段の服装と全く違うのに、良く思いつくよね」
「…、着たいものと売れる物は違うそうですよ」
この話を始めてから、膝の上に組んで置いてる手を忙しく動かしている。
きっと、あのブランドに関わる秘密を彼女は知っているんだろうけど、まだ話してくれなさそうだな。
「確かにそうだね。うちの父親も装飾品は売れる物を選んでるから趣味と違うかもね」
俺が明るく言うと、ホッとしたように小さく息を吐いたのを見逃さなかった。
そのまま、彼女と別れ玄関まで行くと後ろから声を掛けられる。
「あぁ、帰ってなくてよかった。君に頼みたいことがあるんだよ」
頼み事とは言ってるけど、どこに王族からのお願いを断れる平民が居るんだろうか。
未来の王の腹の中は分からないけど、俺は殿下からの依頼を思い出して、実家に帰る馬車の中でため息をついた。
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