初めてのランチ
あの日から数日、クラリス様達は少し大人しくなった。
ミリィには、なんで相談をしてくれなかったのかと怒られてしまったけど…。
「ユリ様、今日は暖かいですし久しぶりに中庭でランチしませんか」
「そうね。食堂でランチボックスを買いましょう」
昼休みになり2人でランチボックスを購入して中庭に戻る。
同じことを考えている生徒が多いのか、中庭のテーブルやベンチは空いてなさそう。
「どこも座れるところなさそうですね」
「今日は教室に戻って食べましょうか」
どれだけ楽しみにしてたのか、わかりやすく落ち込むミリィ。
こればっかりは仕方ないと帰ろうとしたら後ろから声をかけられる。
「サントス伯爵令嬢様、ウィナー男爵令嬢様。宜しければあちらのテーブルで食べていかれませんか」
そう言われて、示されたテーブルを見るとランチボックスを俯いて見つめる綺麗な赤い髪が目に入る。
まさかと思いエマさんを見ると、少し苦笑いをされた。
「お2人がよかったらぜひ…」
「行きましょう。ユリ様」
パッと明るい表情になったミリィがテーブルに駆けていくとアイリーン様に声をかけている。
私はその光景を見ながら近寄る。
「ユリ様!アイリーン様が相席していいって」
「アイリーン様、失礼いたします」
「ど、どうぞ」
そういいながら手元のナプキンをしきりに触っている。
「いただきます。アイリーン様も食べないんですか」
この空気の中よく食べれるなと思うけど、この天真爛漫なところが彼女のいいところなんだよね。
「いただきます」
私とアイリーン様も挨拶をしてランチボックスに手を付ける。
「アイリーン様は、いつもどこでお昼を食べてるんですか」
「私は…、食堂で食べていることが多いです」
「食堂もいいですよね。いつもはどなたかとご一緒なんですか」
「ミリィ、そんなに矢継ぎ早に聞くものじゃないよ」
「でも私、アイリーン様と仲良くなりたいんだもん」
可愛らしく言われても困るのだけど。
でも、何か確信を得ているような攻め方なのよね。
「一人か.…、お誘いいただいたらその方たちと」
「そうなんですね。今日はもしかしてお1人がよかったですか」
「いえ、そんなことはないわ」
「それならよかったです。あっ、アイリーン様は何かお好きなこととか趣味ってありますか」
「ミリィさん、少し食べたら」
「私は、歌うのとかお裁縫も最近始めたんです」
「そ、そうなのね。私は…、あまり好きなこととか考えたことがありませんの」
「えっ、なんでですか」
「ミリィさん。早く食べないと休憩終わるわよ」
アイリーン様が少し悲しそうな表情をされたのに気が付いて強い口調でミリィを止める。
「ミリィさん、少し黙って食べたら」
「えっ」
「ほら、あーん」
自分のサンドイッチを差し出すと、ミリィは素直にぱくりと咥えて、もぐもぐ食べ始める。
「お2人は仲が本当にいいんですね」
「はい。ユリ様とは仲良しです」
「そんな風に言えるなんて素敵ですね。うらやましいです」
「アイリーン様.…。またお昼をご一緒してもいいですか」
寂しそうな表情に、慌てて伝えると驚いたようにこちらを見るアイリーン様。
「いいんですか」
「もちろん。ほかの方のお誘いがないときに一緒に食べましょう」
「なら、私が毎朝お誘いしますね」
「ふふっ.…。ありがとう。私、こんな風にお誘いされたのは初めてかも知れないわ」
そんな話をしていると、チャイムが鳴る。
「皆さまそろそろ行かれないと授業に間に合わなくなりますよ」
エマさんに言われて驚いて、中庭の時計を見る。
慌てて片付けるとそのまま3人で教室に向かった。
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