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番外編① ルルシアの歴史

前回主人公が読んだものになります。かなり重い話なので、爽快感がほしい読者は読み飛ばしても構いません。ただ、作者の思いが詰まったものなのでできるだけ読んでもらえると嬉しいです。

もともと、彼の国は絶対王政だった。しかし、圧政に対して市民の不満が溜まって一度市民革命が起こった。それは成功したものの政策がなかなか決まらないことによる世情不安や、蝗害が起きたことで大規模穀倉地帯での不作による食料の高騰などにより、民衆は強烈なリーダーを求めるようになった。それによって担ぎ上げられたのは内戦で多大な武功を挙げた、ユーコス将軍だった。彼は容姿端麗で戦場では部下を差し置いて真っ先に敵陣に突撃していく頼もしいリーダーで、仕えている兵だけではなく市民からの支持も厚かった。しかし、王政時代には貴族の権威が強くて無謀な命令でも従うしかなった。軍人は血と泥臭さによって貴族からは忌み嫌われていた。

革命が起きた後の数ヶ月は悠々自適に過ごしていたが、一部の市民から国を率いてほしいと懇願されるようになった。それに答えるべく、彼とその仲間たちは政党を結成して支持を集めようとした。戦場において効率を極めるために助かる見込みのない傷病者に対しては治療を施さず、リソースを他の者に回すことで勝利していた。それを国政に生かせば民衆の負担は減ると考えて、公約を掲げてそう訴えかけた。その中には魔力の集中運用のための選択的に切り捨てて国民のために、浮いたリソースで食糧の値下げを行うというものも含まれていた。間接的民主主義を採用していたルルシア国民は聞こえの良い言葉で胸を躍らせて熱狂的な支持をした。この政党ならば、より良い生活を送れると考えたからだ。支持者としては所詮、ケガは治癒魔法で治るし、戦場だって自分たちとは関係ないところで行われているという感覚だった。それよりも毎日の食事にも事欠くような日々が続いていた民衆にとってその言葉はかなり魅力的だった。そのため、彼らの政党は選挙で議会の大半の議席を獲得した。選挙後の国会にて政党所属の議員が国民救済のために、権力を指導者に集中させるという法案を提出した。議席の過半数を持っていたため、抵抗はあまり受けずに可決された。

ユーコスはそれに則って議会を無期限の解散にすると再び独裁体制が始まった。手始めに効率を妨げ、手を煩わせる市民の敵として障害者を魔物の末裔と見なすことで標的に仕立て上げた。実際に国家支出を8%ほど食っていたのだ。さらに王政時代では障害者に対して、食べ物の無償給付が行われていた。神の末裔として祀られていたからだ。しかし王が倒された影響でその価値観は薄れていた。その時の庶民の感想としては自分たちが困窮しているのに対して、なんの苦労もせずに飯にありつけている彼らとの差は不公平だと感じていた。中には信仰を継続する者もいた。しかし多数の扇動された群衆はこれまでの鬱憤を晴らすべく、大義名分を得たかのように市中にいるターゲットに対しての暴行を始めた。被害を受けた彼らは法執行機関に助けを求めたが、それに応えたのはごく一部の人たちだけだった。多くは収監されて処刑されるか、良くても門前払いされるかのどちらかしか残っていなかった。自国の司法機能が停止した状態で頼れるのは薬屋の名目で入国していたオクタピア共和国のスパイしかいなかった。彼らは隣国の政変に危機感を持ち、情報を探るためにヒューミントをしていた。情報源が次々と投獄や処刑、民衆からの攻撃に遭う様子を見て自身の身を守るためにも脱出の手引きを行うことにした。亡命を決意した一千のルルシア人は急峻な山を越えて無事に隣国への入国を果たした。その頃になると、すでに群衆の興味は他のことに移っていた。ユーコスは魔力のある者たちを優遇するようになっていたのだ。一部の市民はその時になって過ちに気がついたが、すでに時遅く声を上げた人は公権によって弾圧された。わずかに残った王政時代の宗教信者たちはひっそりと息を殺して崇拝を続けた。圧政が始まって3年後、市民からの支持を再び得るためにユーコスは召喚の儀を行い、隣国の海上権益を得ようと画策するに至った。それによって召喚されたのは佐藤浩也を含む、5人の日本人だった。


「民主主義は最悪の政治形態だ。ただし、他のすべての形態を除いては」

ウィンストン・チャーチル

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