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夢見幾夜 京の姫君  作者: 古月 うい
一章 姫君は神とともに
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蝶と花々、当主

結局その会議で私の両親は身分剝奪のうえ能力封印で追放となった。


夕葉(ゆうは)美夕(みゆう)深夜(みよ)夕月(ゆうら)夕雷(ゆうらい)の名誉と身分も回復された。


私の二親は、私を当主としたいために焦りすぎたのだ。


私の両親の能力の応用は、禁忌の相手の体調を操ることだった。それを使って霧雨姉さんを殺した。


守りたかった、いいや利用したかった八歳の娘に罪を糾弾され、おとなしく自白したそうだ。


だけどどなにも戻らない。


夕葉は追放中に子供ができていたし、美夕は門下生が減り夕雷は寝たきりになってしまった。


二人が戻ってくるわけでもない。霧雨姉さんが生き返るわけでもない。


美夕の恋が壊れる前になるわけではない。




しばらくして当主様がなくなり、私が新当主の座に就いた。


補佐官は双子の内どちらかを勧められたが空席のままにしておいた。


いつか二人が戻ってきたときの居場所にするために。


八歳の新当主だったが、あの会議の様を見ていた人々は一切不満を言わずに従ってくれたし、夕葉と美夕、それに美利が後ろ盾となってくれたので、新体制の京家は混乱もなく始まった。






「なんかさ、この流れおかしくない?」


「いきなりどうしたのですか夕葉。」


子どもをあやしながら2人で過ごしていると夕葉がいきなりそんなことを言い始めた。


「だってさ、この流れおかしいでしょ。きれいな話すぎる。当主候補の子たちが1人の親の欲によって蹴落とされ、それを新当主が断罪してみんなの身分が回復されましためでたしめでたし…ってきれいすぎる!」


「その資料もけんかしていた子が去る前に残された子を救うために残していったってところもですね」


しばらく夕葉が黙っているので何かと思ったら、首をかしげてこう聞いてきた。


「美夕、口調変わった?」


「気が付いた?まあ、色々あったから。」


もう二度と戻ることはない。


この恋心を隠すと決めた時から、こういう時が来るときっとわかっていた。それでも隠し続けた。


夕葉が困らないように。


「まあ、いまするべきは過去を考えるより、当主様のサポートです。」


きっと、当主様はむなしい。みんなが何をしても戻らなくて、そうさせたのが自分であったと気が付いて。


「そうだね。頑張ろう」


きっとそれがわたくしたちにに残された、罪滅ぼしの方法だから。




「当主様、中央からの書状です。」


天弓さまはそうといって手に取って広げる。


先代と同じようにヴェールをかぶって、同じようにそこに座った天弓さま。


けれど圧倒的に足りない。それは年や経験によるもの。


当主様、早すぎです。もう少し生きていてくだされば…天弓さまにはまだ安心できる存在が必要なのに。


わたくしたちでは力不足。夕雷がいれば違ったのかもしれないが、夕雷は養生として後宮に巫女宮女として行ってしまった。


「ほう…後宮に送った京家の侍女が妃になったと」


耳を疑うことだ。後宮にいる京家は巫女宮女の二人と、深夜とあと一人が風宮(かぜのみや)にいるだけだ。


「なぜ、まさか露見したのですか」


「いいえ。純粋なる格上げよ。ただしひとつ予想外なことがございます」


この喋りも、もっと幼くてもいいのに。でもこの喋りを教えたのはわたくし…


「その妃は、京宮に入りました」


「え、」


京宮、かつての京家が所有していた後宮内の宮だ。なぜそこに入ったのか。


「まあ、本人たちからの書状を待ちましょうか。なにも来ていないので」


それは妙だ。深夜なら送ってくれるはずなのに。


「やはり深夜は…」


「当主様?」


「いいえ。書状が来たらよろしくお願いします。」


当主様は衣の裾を引きずって下がっていった。


奥には郁子(いくこ)がいるから大丈夫だろうが…




「郁子、いる?」


「はい、天弓さま」


双子の姉である郁子は補佐役として育てられたのに私が選ばなかったのにも関わらずここにいてくれる。


未子(みこ)はどう?」


「いまだに書状はなく。ただ元気にお過ごしらしいです。」


未子は9歳で出家した。私が選ばなかったからだ。2人を待つということは、誰かがこうなることだ。


「そう。」


そとはからっと晴れていた。


ねえ深夜。あなたは書状をくれるわよね。それか、何か変わってしまったの?私がけんかしたままだったから?当主になったから?


ねえ深夜、私何かした?




「天弓さま、書状でございます。後宮から。」


夕葉から渡されたのは、それから3か月たってからだった。


「そう。」


内容は、書状を送らなかったことへのお詫びと妃が妊娠したので乳母が欲しいということだった。


きっと天弓なら仲間が妃になったことを知っているでしょう?と聞いてくるような。そんな文章だった。


「夕葉。」


「はい、当主さま」


「後で来なさい。一人でね」


夕葉を、手放す。適任は、夕葉だ。私を育ててくれたから。



「夕葉、あなた後宮に行きなさい。深夜からの乳母の要請よ」


夕葉、お願い。深夜を守って。


「ただし、桜宮の巫女として派遣し、京宮に行きます。3年で元の立場に戻るのでお忘れなく」


「天弓さま」


話している途中に、夕葉が止めた。


天弓、と呼ばれて少しだけぼんやりしてしまった。


「なんでしょうか」


「天弓、私は必ず戻ってくるから。」


まっすぐこちらを見つめてくる。


それは、泣きたくなるような言葉だ。


「これは約束」


夕葉がつけていた簪の一つをとった。


少し髪がほどけてばらばらと落ちる。それを差し出さされる。


「いつか戻ってくるまで」


それは、ただの簪なのに、とても暖かかった。


「ありがとう」


そして夕葉がまた聞いてくる。


「子供はどういたしましょう。後宮に連れて行くわけにもいかないので」


どうしてそんなことを聞くの?親が子を育てるなんて、あるはずがないのに。


「乳母にでも預ければ?」




あの頃は、子を育てる母親が身の回りにはいなかったから、夕葉の気持ちを理解できなかったのだ。

とうとう深夜(小夜)の過去編が終わりました!


次からようやくストーリーが進みます。

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