1
いつものように朝6:30に起き、蒸し暑い中会社に向かう。
最初の電車は、座れないものの、余裕のある車内。乗り継いだあとの電車では、車両内に押し込められ、会社の最寄駅に着くと掻き出るように電車の外に出る。
8:00に会社に到着し、仕事を開始する。
始業時間は9:00からなので、9:00前にタイムカードを切る。
気がつくと火が沈み、定時の18時を過ぎていた。
今日も上司の指示された資料を作り、先輩から資料の整理を手伝わされ、レビューされた先輩の資料の手直しを押し付けられ、明日の会議の資料の印刷とホッチキス止め。
これから自分の仕事に手をつける。終わるのは23時過ぎ。
それから家に帰ると日付を超える事が多い。
改善しようとして、先輩から押し付けられる仕事を上司に相談しても、改善されず。
むしろ「出来る人がした方が早いだろう」と言われ、先輩も遠慮なしに仕事を押し付けてくるように。
自分の仕事もままならず、土日のサービス出勤もしょっちゅう。
疲れすぎて改善方法など考える余裕もなく半年が過ぎた。
世にいうブラック企業で働いていた。
そして今から一月前に母が亡くなった。働き過ぎている私をずっと心配してくれていた唯一の肉親が病院で息を引き取った、
私は母の病気のことも知らずにいた。
母が亡くなったショックが受け入れられず、葬儀が終わってすぐ仕事に復帰した。
今までと変わらない日常。家の傍らに母の写真が飾ってあることを除いて。
「お母さん、行ってきます」
この一月で変わったこと。
写真の母に挨拶してから家を出る。
その日が最後の挨拶になるとも知らずに。
この夜私は異世界に渡った。