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3.ライの秘密


「大変です!」

「ライ、大丈夫か!?」


 俺とイリスは急いで息絶えたゴブリンを脇に転がし、ライを助け起こした。


「ライのスキル、すごいじゃんか! あんなスキルがあるなら剣が苦手だって全然……」


 そこまでまくし立ててから、絶句する。

 俺が乱暴に起こしたせいで、いつもは重く垂れ下がっている前髪が乱れて、ライの顔が見えていた。


 透き通るような白い肌に、淡く染まったピンクの頬。

 髪と同じプラチナブロンドの眉は綺麗な弓形で、鼻筋はすらりと通り、夢見るようなくっきり二重の瞳はビックリするぐらい長いまつげに覆われていた。

 あまりにも中性的で、もしかして女だったのかと思ってしまったくらい。

 

 俺の人生でこんなに綺麗な顔のやつ、初めて見たんだけど……もちろん前世込みでの話な。


「うおっ、なんだライ、めちゃくちゃ綺麗な顔してんじゃねえか、女かと思ったぜ! がははははっ」


 俺とイリスが絶句する中、ケヴィンが豪快に笑う。

 それでライはハッとした様子で慌てて前髪を直し、あのビックリするくらい美しい顔は隠れてしまった。


「びっくりしたぁ……ライ、そんな綺麗な顔してんのに、なんで隠してたんだよ」

「わ、私も驚きました……」


 するとライはいつものように背中を目一杯丸めて俯いてしまった。


「ううっ……ぼ、僕、この顔……好きじゃ、ない……」

「ええっ、なんでだよ! 隠すなんてもったいないって。あ、もしかしてエルフってみんなそんなに綺麗なのか? そういや美しい外見を持つって言われてるもんなぁ」

「ち、ちがっ……兄さまたちは、もっと……男、らしく、て……」


 え、ライってお兄さんがいるのか。

 お兄さんたちは男らしい顔してるってことは……。

 なるほどねぇ、俺たちにとっては綺麗すぎて羨ましい外見だけど、ライにとってはコンプレックスってことなのかな?


「ふぉっふぉっふぉ、わしの若い頃に匹敵するくらいの美しさじゃったのう!」


 ミン婆はケヴィンの肩の上で高笑いしている。

 いやいやいや、またミン婆の誇張した昔語りだよ……。


「まあ、せっかく綺麗な顔だけど本人が気に入らないんなら仕方ないか。それにその顔じゃ目立つもんな」

「そうですね……それに前髪を上げますと、どうしても耳も見えてしまいますし」


 ああ、そうだった、エルフだってバレないように耳は隠しておかないとだもんなぁ。

 それにしてももったいない……気に入らないんなら、その美貌の四分の一でいいから俺に分けてくれよぉ。


「とにかく、ライはスキルがあれば剣が苦手なのもなんとかなりそうだよな。毎回怪我しちゃうのが問題だけど」

「おっ、そうだ、剣といえばとりあえずこれを使ったらどうだ? 刃こぼれしてるしなんか汚えけどよ」


 ケヴィンが自分が倒したゴブリンから片手剣を拾い上げ、ライに手渡す。

 刀身もあまり輝いてないし柄にはボロボロの布が巻き付いてて汚らしいけど……まあ、ナイフよりはリーチが長い。

 ライはどんな顔をしたのか分からないけど、一応受け取っている。


「ど、どうも、ありがと……」

「あっ、ライさま、肩を槍で突かれていましたよね? 治しましょうか?」

「……あ、でも、さっきも……治して、もらったし……」

「遠慮なさらないでください。その、またしばらくの間、食事の際に味がしなくなってしまいますけど……」

「それは……別に……でも、君が、疲れないか……な……」

「いえいえ! 私は奇跡を使ってもそんなに疲れないんです。それにさきほど、私の失敗したサンドイッチをたくさん食べていただいたお礼という意味でも」


 もじもじするライに、笑顔で接するイリス。

 な、なんか、良い感じの雰囲気が漂ってるんですけど!

 しかもライはそんな冴えない格好してるのに、隠れ超絶美形だし!


 ……いやいや、こんな時に嫉妬してる場合じゃないって。


「え~っと、とにかく、進行方向にゴブリンの群れがあるのは確かだな。このまま巣に乗り込んで戦うとしたら……五匹倒すって条件をクリアするならケヴィンでもミン婆でもライでもいけそうだよな。そんなら細かい作戦はいいか」


 さっきは初めて見たゴブリンにビビりまくった俺だけど、さすが雑魚モンスター、耐久力は低いし、なにより五匹倒せばいいっていうのが難易度が低い。

 これなら案外、さっさとライの剣を取り返せるんじゃないか?


「油断は禁物じゃぞ、アタル。ボスゴブリンのことを忘れてはおるまい? それにもしゴブリンウォリアーがおれば……」


 ドンッ!


「きゃああっ!」

「キキキィー!」

「えっ? イリス!?」


 一瞬だった。

 俺のすぐ横でライの肩の怪我を治していたイリスが、突然悲鳴と共に姿が消えて。

 そして通路の奥を、イリスを担ぎ上げた三匹のゴブリンが駆けていく。


 イリスが、さらわれた!?


「追うぞ!」


 ケヴィンのかけ声と同時に、肩にミン婆を乗せたケヴィンが走り出し、ゴブリンに吹っ飛ばされたのか床に転がっていたライと、そして俺が続く。


 ゴブリン、どこから現れたよ!?

 後ろから来たような……でも俺たちが上のダンジョンから下りた場所からここまで、他の脇道は全部行き止まりだったのに!


「急ぐんじゃ、見失うぞ!」


 ミン婆は振り落とされないようケヴィンの頭にしがみつき、檄を飛ばす。

 でもケヴィンは体力自慢で怪力自慢でもあるけど、身体が大きすぎて走るのは得意じゃない。

 後に続くライは手足がすらっと長くて足が速そうだけど、もう息が乱れてる。たぶん、体力が無いんだ。


 そして俺は……必死に全力で走ってるつもりだけど、どんどんケヴィンたちに離されて、それなのに心臓がバクバクいってる。

 やばすぎだろ、俺!

 そんでもって、ゴブリンは足が速すぎぃ!


「俺はいいから、先に行ってくれ! もし見失ったらっ……」


 見失ってしまったら、イリスはどうなるのか?

 考えただけで俺は焦りのあまり、小さなうめきが漏れる。


 ゴブリンはたまに小隊の馬車や小さな村を襲うことがある。

 その目的は食べ物と、女だって言われてる。

 なんでもゴブリンは雄しかいなくて、繁殖するためには多種族の雌が必要なんだとか。そんでもって、栄養状態のいい人間が狙われやすいらしい。

 つまり、さらわれた女の人は……。


「早くせねば、イリスが大変なことになるぞ? ほれ、そこにギロチンの罠じゃ、ロープを引っかけずに飛ぶんじゃぞ!」


 ミン婆の指示で、ケヴィン、ライ、俺の順で罠のロープを飛び越える。

 でもそこで俺はさらに体力を使ってしまい、膝に力が入らなくなってきた。

 二人の背中がどんどん遠ざかっていく。


 イリスが!

 あの、俺について行くと言ってくれたイリスが……!

 さっき心打たれたばかりの潤んだパープルの瞳と、そこからこぼれる涙を思い出す。


 ――絶対に、助ける。

 そんで、無事にダンジョンを出て、みんなで冒険に行くんだ!


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