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1.みんなのレベル


「あのさ、もし嫌じゃなければなんだけど……ケヴィンとライに、俺のスキルを使ってみてもいいか?」


 気合い十分でランチの後片付けをし、歩き出して早々、俺は勇気を出して口にしてみた。


「へ? 俺にか? いいぜ」

「ぼ、僕も……まかわな、い」

「本当にいいのか? えっと、職業とスキルの他に、レベルなんてのも分かったし、ステータスも見れるんだ。あとは得意分野と不得意分野が分かる。戦闘職の二人の得意不得意が分かった方が作戦を立てやすいと思ったんだけど、俺に知られるの、嫌じゃないか?」


 だが二人は別に気にしてなさそうだ。

 そういうもんか……なんか、人間相手にスキルを使うのって、プライバシーの侵害的な気がしてさ。

 俺が拍子抜けしてると、ケヴィンの肩の上からミン婆が声をかけてきた。


「今、レベルと言ったか? ふうむ、それはモンスターのものも見えるのかの? 昔からモンスターにはレベルというものが存在すると言われておってな。同じ種類でも個体によって強さや使う攻撃手段が異なるんじゃ」

「そうなの? モンスターのも見れると思うんだけど、どうだろ……まだスライムしか見てないんだよ。いつも行動処理を見るのに必死で、ステータスとかは後回しになっちゃってさ」


 言いながら、もう一つの可能性に気づく。

 レベルやステータスは上の方を見ないと載っていないんだと思ってるけど、もしかしたらソースコードが分かれていて、俺が見てるところには載っていない可能性もある。

 個体ごとにレベルが違うんなら、見ておきたいのになぁ。


「もしかしたらモンスターによっては見れない可能性があるなぁ」

「ほぅ、ならば見える見えないはお主のレベルが関係しているかもしれぬのぅ」

「え? 俺の?」

「お主、レベル5だと言っておったな? ふぉっふぉっふぉ、低すぎじゃ! もしお主のスキルの効果がその時々で異なるようなら、相手のモンスターとのレベル差が関係しとるんじゃろう」

「レベル差か! なるほどね、そうかもしれないなぁ」


 そういうことなら理解できる。

 ゲームなんかだと「効果があるのは自分のレベル+5までの相手」とかいう魔法やスキルがあるもんな。

 え~、じゃあ俺のスキルはどのくらいのレベル差まで行けるんだろ?

 俺のレベル5って、マジで雑魚モンスター並だよな……ていうかスライムより低いし。

 でも仕方ないか、俺が初めてスキルを使ったのは一昨日だ。

 そんでスキルを使った回数も数える程度。

 ま、これからどんどんレベルアップしていけばいいさ。


「じゃあ、ケヴィンやライがどのくらいのレベルかも確認してみるよ」


 というわけで、まずケヴィンから確認させてもらうことにした。

 しかし……。


「あれれ? なんでだ?」


 なんと、職業とスキル、そしてレベルしか見えなかった。

 それ以外は「得意分野:#da978<B6@」みたいな感じで文字化けしてて全然読めない。


 どうにかならないかとソースコードの隅から隅まで見たけど、駄目だった……ていうか、文字化けってどゆこと?

 普通は文字コードがおかしい場合になったりするもんだけど、この世界で文字コードって……。

 結局、カウントダウンがゼロになるまで状況は変わらず。

 でもスキルが切れてから、ようやく理由が分かった気がする。


「ケヴィンのレベル、31だ……」

「おっ、アタルより全然上だな! ま、それがどんなもんなのか分からねえけどよ、がはははっ」

「そう、俺よりレベルが高すぎんだろうな、職業とスキルとレベルしか見えなかったよ」


 なんてこった。

 俺のレベルを上げないと、みんなのステータスや得意・不得意分野が見られないなんて!

 でもこれで少し前進した。

 俺とケヴィンのレベル差は26、つまりこれだけ離れてるとほとんど情報を得られないってわけだ。


「ゴメン、どうせほとんど見れないんだし、イリスやミン婆のも見せてもらってもいい? レベル差の幅で何か変わるのか知りたくて」


 そうしてみんな順番に見てみることにした。


 が。

 結論として、全部一緒だった……。

 職業、スキル、レベルしか分からない。

 イリスはレベル19、ライは16、ミン婆に至ってはレベル432とかいうすごい数字が出た。

 レベル差へのショックか、それともスキルの連続使用による疲労か?

 なんか頭がクラクラしてきたんだけど……。


「はあ、疲れた……にしてもミン婆はすごいなぁ、めちゃくちゃレベル高いじゃん!」

「なあに、だてに長生きしとらんよ。しかしせっかくじゃ、ぞろ目の444レベルまで頑張らねばのぅ」

「がははっ、死が三つって縁起わりぃぞ、婆さん」

「ふぉっふぉっふぉ、ちょうど444で死ぬのが理想じゃな!」


 ミン婆はケヴィンの肩の上で楽しそうに笑う。

 このしわくちゃなお婆ちゃんが、レベル400超え? マジかよぉ……。


「あっ、そうだ、ミン婆だけもう一つビックリしたんだけど、スキルが二つ書いてあったんだ。<罠探知>と<凄腕の射手>、これってどういう意味?」

「おっと、バレてしもうたか、ふぉっふぉっふぉ。<凄腕の射手>は【ローグ】になったときに授かったスキルじゃよ」

「【ローグ】……そうか! 転職すればもう一つスキルがもらえるんだった」


 ウッカリしてた。

 ミン婆は上級職だったっけ。

 上級職に転職すると、下級職のスキルも引き継げるらしいからな。で、その【シーフ】のスキルが<罠探知>ってことか。


「ミン婆さま、<凄腕の射手>とはどのようなスキルなのですか?」

「これは弓のスキルでのぅ、射った矢はすべからく狙った箇所に当たるというもんじゃ」

「へえ、すべから……え、全部ってこと!?」

「百発百中ということですか? それはすごいです!」

「婆さん、すげえスキル持ってるじゃねえか」


 なんとなんと、どおりでミン婆の矢は全部当たるわけだ。

 そのスキルのおかげで、ヨボヨボのお婆ちゃんになっても噛みつきウサギ狩りで生計を立てられるってことね。

 みんながあまりにも驚くもんだから、ミン婆は背中が曲がってて胸を張れない代わりに、精一杯顎を上げて得意げな顔をする。


「いいなぁ、そういうスキル、俺も欲しいよ。ミン婆は<罠探知>だってレアスキルなのにさぁ」

「さすればアタルも上級職に転職するくらい頑張るんじゃな。わしは転職する前から弓が得意だったんじゃ。なんせ蟻の眉間も射抜けたくらいじゃぞ! ふぉっふぉっふぉ」

「蟻の眉間って……(やじり)がすでに蟻より大きいじゃんか」


 まあ蟻の眉間はともかく、【ローグ】に転職するくらいだから元から優秀な【シーフ】だったんだろうけどね。


「俺が転職するっていっても【プログラマー】の上級職なんて……あ~あ、結局何も分からなかったなぁ、ライが俺と一番レベルが近いけど、レベル差が11かぁ、ていうことはゴーレムはレベル15以下だったってことかな」


 少なくともゴーレムの行動処理は普通に見ることができた。

 上に遡ってステータスまで見る余裕はなかったけど……。

 人間とモンスターで見えるソースコードが違うのが分かりづらいなぁ。

 ていうか、人間には行動処理のソースコードなんて存在して欲しくないんだけどさ。


「ふうむ、ゴブリンにもアタルのスキルが使えると良いがな……しかし見回りのゴブリンなど大した敵ではないわい。ゴブリンは群れるでな、群れにはより強いゴブリンウォリアーやボスゴブリンなんてのもおるからの」


 そうだ、みんなのレベルを見て楽しんでる場合じゃない、今は打倒ゴブリンだった。

 それなのに俺の頭のクラクラはまだ治らない。

 俺は頭を振って、額に手を当てる。

 あれ、熱っぽい気が……風邪を引いたわけじゃないと思うんだけど。


「まずいな、なんか頭がクラクラしてめまいが……」

「あら、それはスキルの使いすぎではないですか? スキルの使用による疲労度はスキルの種類や本人の能力によって異なるので分かりづらいんですが」

「たった四回で疲れるなんて、やばいなぁ、これからゴブリン戦だってのに」


 こんなんじゃ、みんなとのレベル差がなかなか縮まらないよ。

 ケヴィンなんて今日、何発ファイアボールを撃ったことか。

 いや、まあ……ファイアボールは初級魔法だから大して疲れないのかもしれないけどさ。


「ですが、今日はスライムに化けキノコにゴーレムに……けっこうスキルを使われてますよね。少し休みますか?」

「いやいや、ランチ休憩したばっかだし。それにいつゴブリンが出てもおかしくないだろ。そういやイリスの奇跡って疲労にも効くのかな?」

「体力回復ですね。私が今まで使ったことがある奇跡は治癒と解毒と麻痺治しのみでして、体力回復も使えると思うのですが……どんなデメリットが発生するか分からないです」


 イリスは申し訳なさそうにそう言う。

 そうか、確かにここで予想外のデメリットが発生したら困るなぁ。

 たとえば麻痺治しみたいに身体から硫黄のにおいがするようになったら、ゴブリンと戦う時に身を潜めるなんて作戦は取れなくなる。


「そうだ、傷薬でも飲んでみるか。まだたくさんあるんだ。多少は体力回復できるはず」

「お役に立てずすみません……今度試してみてデメリットを確認した方がいいですね」

「そうだね、体力回復の奇跡はダンジョンから出たら試してみようよ」


 俺はそう言いながら、リュックを床に下ろして荷物を探る。

 そして傷薬を一本取り出して蓋をひねり、ぐいっと飲み干していたところ、前方から「キキキィー!」と猿の鳴き声のような音が聞こえてきた。

 ええっ、このタイミングで!?


 漢方的な苦みの傷薬にむせながら通路の先を見れば、三つの小さな人影がこちらに向かって走ってくるところだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

今回から第四章です。

第四章で第一部完なんですが、章のもう一つ上の分けってないんですね……うっかり。

とりあえず第四章で一旦区切りになると言うか、元々そこまでざっと書いてから推敲しながら投稿してまして。

よって第五章以降はまだ書いてません……。

そしてその先も続けるべきか悩み中でして……話は考えてはいるんですが。


そのあたり、ご意見やご感想をいただけると助かります!

そしてブクマや評価(↓の方にある☆)をいただけると励みになります。

引き続き更新頑張りますので、よろしくお願いします〜!

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