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7.予想外のスキル発動


 結局、イリスのサンドイッチはライがほとんど平らげた。

 いくらお腹空いてたって言っても、あの量を細いライがだぜ?

 どうなってんだよ……痩せの大食いってやつか?


 そして俺たちはというと、バナナでお腹いっぱいになったミン婆以外は俺が持ってきた保存食セットで腹を満たしたのだった。

 母さん、たくさん持たせてくれてありがとう……。


「ミン婆、このダンジョンに出るモンスターはまだゴブリンとゴーレムしか分からないけど、Bランク向けかな? それともAランク以上?」


 俺は食後の茶をすするミン婆に問う。


「ふぅむ、罠の数や質からすると、恐らくBランクじゃな。しかし油断は禁物じゃぞ? ゴブリンは雑魚モンスターじゃが、ゴブリンの巣にはボスゴブリンがおるでの。あるいはもっと強敵が潜んでおるやもしれぬ。楽しみじゃのぅ、ふぉっふぉっふぉ」


 相変わらずミン婆は面白がってるようにしか見えない。

 ずいぶん余裕だなぁ。

 どんだけ修羅場をくぐってきたらこうなるわけ?


「俺、ゴブリンの群れってだけで恐いんだけど……ゴブリンに出くわしたらどうやって戦えばいいんだ? 俺のボーガンはもう矢が一本しかないしなぁ」

「俺が盾ではじきながらファイアボールでいいんじゃねえか?」

「確かにケヴィンはゴーレム相手にファイアボールを連射してたもんな。あれだけ連射できんなら初級魔法でも強力かも?」


 しかもケヴィンはゴーレム戦後に俺が傷薬をあげたし、今は食事も済ませたからさらに元気に見える。


「ゴブリンは素早いが身体は小さくてもろいでな、ファイアボールでも十分戦えるはずじゃ。しかし油断できぬのは群れで行動する点じゃ。化けキノコと違って一体ずつ戦うわけにはいかんぞ」

「ぼ、僕も……戦う……ナイフ、で……」

「えっ、でもライは剣が苦手だって言ってたろ。しかもリーチの短いあのナイフじゃ……」


 ライに借りたナイフは本人に返してるけど、あのナイフでモンスターと戦うってのは恐すぎる。

 リーチが短いってことは、それだけ相手に近づくってことだし。


「だいじょ、ぶ……僕の剣を、取り戻す……ため……」


 なるほどねぇ、ライも頑張りたいってことか。

 その勇気、見習わないとなぁ。


「たのもしいのぅ、それにわしの弓が役に立つときが来たようじゃな。ケヴィンとライが前衛を務めるなら、なんとかなるわい」

「ええ? ほんとかよ……」

「大丈夫ですよ、きっと。またアタルさまのスキルで良い打開策が見つかるかもしれませんし」


 ランチが終わって、激辛サンドイッチのダメージから立ち直ったらしきイリスが、俺に微笑む。

 その全幅の信頼に顔が熱くなりつつも、ちょっとだけ焦りも感じる。

 だってスキルを使うまで、どんなことが書かれてるか分からないんだもんなぁ。


「まあ、何か役に立つ情報がゲットできればいいんだけどね」

「アタル、の……スキル、便利……」

「え、そう? ありがとな」


 ライまで褒めてくれる。

 なんだよ、褒めても何も出ないんだからな!

 まあ、確かにゴーレムの時は俺のスキルがなかったらヤバかった。

 ゴブリンにも分かりやすい攻略方法があればいいんだけど。


「お主の職……【プログラマー】と言ったか。もしかしたら貴重なレア職かもしれぬなぁ。ごくまれにおるでな、そういうもんが」

「レア職?」

「そうじゃ。ほうれ、かの有名な【剣聖】オベリオの【剣聖】もそうじゃ。これは上級職じゃがレア職でな、今まで【戦士】から【剣聖】に転職した者はオベリオしかおらんらしいぞ」

「ひゃ~、オベリオと並べられちゃ照れるなぁ」


 【剣聖】オベリオは【戦士】として剣を極め、【剣聖】になったそうだ。

 【剣聖】になって授かったスキルは<一刀両断>。どんなものでも真っ二つに切ることができたらしい。

 それって無敵じゃね?

 そのスキルのおかげで魔王は深手を負って姿を消したって言われてるし。


 ちなみに【戦士】の上級職はいくつかあって、剣を使う場合は【剣豪】が普通だ。


「まあ、俺のスキルもかなり特殊ではあるよな、反則級の」


 俺は左腕の、地味すぎるグレーの職紋に目を向ける。

 やっぱりこの世界には俺の他に【プログラマー】はいないんじゃないかと思う。

 だって前提条件としてプログラミングのスキルが必要なんだから。

 まあ、俺と同じように異世界転生したプログラマーが他にいるなら話は別だけど、俺の直感ではまだいないと思う。

 だってこんな珍しいスキル、他にも使えるやつがいたらそれなりに噂が流れるはずだろ?


「【プログラマー】に<コードインスペクション>かぁ、なんで俺だったんだろ」


 な~んてポツリとつぶやいたら。

 よく知る耳鳴りが訪れ、視界が暗くなっていく。


「えっ、えっ、なに!?」


 俺は驚きすぎて、しばらくの間、何が起こったか理解できなかった。

 目の前には、見慣れたソースコードが並ぶ。

 最初に目に入った一番上の定義は、何なのかすぐに分かった。


 final int BASE_STAMINA = 60;

 final int BASE_MIND = 120;

 final int BASE_STRENGTH = 60;

 final int BASE_INTELLIGENCE = 110;

 final int BASE_SPEED = 90;

 final int BASE_DEXTERITY = 100;

 final int LUCK = 160;


 これってステータスだよな?

 でもどこにモンスターが……。

 ソースコードの向こう、俺の地味な職紋が光ってんだけど……まさか、これって……。


「おいおいおい、どういうこと? これってまさか……俺もプログラミングで作られてるってわけ!?」


 んなバカな!

 わけが分からなすぎて鳥肌が立つ。

 ここでこうして自由に生きてるって思ってるこの俺が、実はプログラミングされてるって……ええ?

 じゃあ、一体だれがこのソースコードを作ったっていうのさ?


 意味が分からない。

 意味が分からなくて混乱してるはずなのに、俺の目は勝手にソースコードを読み進めていく。

 それでやっぱりこのソースコードは俺のだって確信するとともに、緊張か、お腹のあたりがキュッと堅くなった。


 俺が人間だからか?

 それとももしかしたら、俺が今まで見てきたソースコードはその対象を構成する一部だけだったのか?

 今見ているソースコードには、俺の性質的なものを表す情報しかなかった。

 つまり、俺の行動は定義されていない。

 それだけで少しホッとする。


 だってさ、今まで生きてきて自分の意思で行動してきたと思ってたのに、実はプログラミングで組まれたものでした、な~んて言われたらものすごいショックだろ?


 でも気になる情報はあった。

 プログラミングで定義される情報っていうのは、実はそのソースコードだけじゃなくてデータベースの情報とか、他の定数クラスの情報とリンクしてるから、ぱっと見では分かりづらい。

 でも変数の名称やらなにやらで、だいたいのことは分かる。

 俺はこんな感じらしい。


 職業:【プログラマー】

 スキル:<コードインスペクション>

 レベル:5

 得意分野:真理の探究、コミュニケーション、動物やモンスターの鳴き真似

 不得意分野:運動全般、力作業、単純作業

 特殊情報:■■■■


 真理の探究ってなによ……いや、まあそれはいい。

 レベル5って低すぎだろ! スライムですら7あったぞ!? って、それもおいといて。

 気になるのは、特殊情報ってやつだ。

 なんだろこれ?


 この「■■■■」は例によって定数だ。

 しかも見る限り、今俺が見てるソースコード上には定義されていない。

 てことは、やっぱり俺を構成するソースコードはこれだけじゃないってことか……。


 作るシステムの大きさにもよるけど、プログラミングで作るソースコードってのは、多いと数千とか数万とか膨大なファイル数になる。

 よっぽど単純なものじゃない限り一つしかないってことはない。

 でもどうやって見るソースコードを切り替えればいいんだ?

 ここにマウスとキーボードがあれば楽なのに……。


 ダメ元で周りを見渡していたら、いつの間にか制限時間が切れたみたいだ。

 ソースコードが消えて視界が明るくなる。

 呆然とすること、しばし。


 するといつまでも黙り込んでいる俺を不振に思ってか、みんなが俺を見ていた。


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