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敵はチームワークが抜群


「儀式をしているから、誰よりも偉いつもりでいるのですか? 自己評価がずいぶん高いのですね」


 マックスの小馬鹿にしたような台詞。国家として重要視しなければならないはずの聖泉礼拝に、大した価値がないような口ぶりだ。


 アレック殿下もこれをいさめない。むしろ『よく言った』とマックスを賞賛するような顔つきである。


 従妹のロザリーだけが一人困り顔だった。


「あの……そんなことを言っては、おかわいそうですわ。パトリシアお姉様なりに一生懸命なさっているのですから。努力くらいは買ってあげてもいいんじゃないですか? マックスさんは自分がなんでもできすぎてしまうから、できない人の気持ちが分からないのかもしれませんね? パトリシアお姉様は頑張って、このレベルなんです。それを全然できていない、みたいにはっきり言ってしまうのは……私は聞いていて、胸が痛みます」


 かばわれているようで、『え、私、できていない扱いされているの?』とメンタルを削られる。大体、彼らは聖泉礼拝のことをほとんど何も知らぬではないか。それで『パトリシアは全然できていない』となぜ分かるのか。


 アレック殿下は愛おしげにロザリーを眺めた。


「君ならきっと見事にこなしてしまうのだろうな。要領が良いし、頭も良い」


「そんなことないです! 頭の良い殿下にそう言っていただけると、嬉しいですけど、複雑です!」


「本当のことだよ。照れなくていい」


 ロザリーは両頬を手のひらで覆い、「やだもう、殿下、優しい……すごく恥ずかしい……」ともごもご呟きを漏らしている。独り言のようでいて、台詞の全てが、少し離れているパトリシアにもしっかり聞き取れた。


 アレック殿下は、『控え目なロザリーには、正当な評価を与え、自信をつけさせてやらなければ』と考え、優しい声音で彼女に語りかけた。


「君は心根が真っ直ぐだから、そばにいるだけで私は心が洗われるよ。変にプライドを高くして、周りを見下したりもしないし」


「やだ、それは当然ですわ! 見下すなんてとんでもない! 私はいつも皆さんを尊敬しているんですもの」


 ロザリーはつぶらな瞳でアレック殿下を見上げる。


「私、聖泉礼拝の儀式が上手くできるか分かりませんけれど……でも一つ言えることがあるとするなら、たとえそれができたからといって、ほかの人を見下すようなことは、絶対にないですから! ってことです。これだけは分かってくださいね? だってそんなの、私――ほかの人に威張るだなんて、自分で自分が恥ずかしくなってしまいます!」


「皆が君のように謙虚だといいんだが」


 勝手に褒め合ってくれて構わないのだが、どんどん時間が削られていくのは問題だった。パトリシアは焦っていた。


「あの、本当にもう時間が……」


「パトリシアお姉様、儀式を見学させていただいてもよろしいですか?」


 ロザリーの申し出に、パトリシアは唖然としてしまった。神事を花見か何かと同様に考えているのだろうか?


 しかしアレック殿下は当然、ロザリーの味方をする。


「それは良い考えだ。さすがロザリー。――皆で問題点を確認し合ったほうが、正しい答えが出せる。『これは自分にしかできぬ』などという、誤った驕りたかぶりを、許してはならないよ」


 チクリと刺された挙句、厄介な同行者ができてしまった。



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