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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第一章 帰国、そして再会
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1-8.お隣さんはサバサバ女子

 昼食を済ませ、ようやく落ち着きを取り戻した伯怜。部屋に戻り、ふと考える。


「やることが無い、暇だ……」

 荷物の整理は終わっており、怜嗣も美怜もそれぞれ自分の周りのことをするので精一杯の状況。自分が手出しすることではない。


「……ゲーセンにでも行くか?」

 と考える伯怜だったが、まだ帰国して間もないのに、やることをほっぽりだしてゲーセンなんかに行ったら両親から叱られるのは明白だと思い、考えを改めた。


「一応、この2年間この国で何があったか調べておくか」

 そうつぶやくと部屋を出て、母の許可をもらいパソコンを起動させ、インターネットで調べものをし始めた。とはいえ、向こうでもある程度の情報は得ることが出来たため、調べることはそんなに多くなく、すぐに脱線して趣味関係のサイトばかり閲覧するようになる。

「やっぱりこっちの方が進んでるな」

 ネットサーフィンをしている伯怜は、改めてこの国の技術の高さを感じるのだった。




 あらかた情報を得た伯怜は、これから何をするかを考え、ふと思いついた。

(そうだ、隣にも挨拶しておかないと。あいつに文句の一つも言ってやりたいし)

 伯怜の家、というより姫宮家の隣には幼馴染の同級生とその弟が住んでいる。そのことが頭をよぎったようだ。早速、家を出て歩いてすぐのお隣さんの家に向かった。


 挨拶もせずに敷地に入る伯怜だが、入ってすぐに、

「彩乃ー、居んのかー、俺だ! 居るんだったらさっさと出てこい!」

 と、大声である人物を呼んだ。しかし、出てきたのは伯怜が意図していた人物ではなかった。




「伯怜兄ちゃん!」

 そう言って家から出てきたのは、少々小柄で、顔も幼さが残る美少年風で、茶髪の、伯怜より幼い少年だった。

「おお、秀悟か、久しぶりだな!」

 そう言うと伯怜は秀悟の頭に手をやった。

「ち、ちょっと、兄ちゃん、俺だってもうすぐ高校生になるんだから」

 と言って、少年は伯怜の手を除ける。

「ああ、悪いな。つい昔の癖で。でもいくらかは成長したか?」

「そのいい方もひどいよ」

 伯怜と少年の久々の会話だったが、内容が少々一方的だった。


 この少年の名は千条秀悟(せんじょうしゅうご)。伯怜より二つ下、美怜と同級生である。幼い頃からよく共に遊んだ仲である。ある程度年を重ねると、剣術の鍛錬を怜嗣も混ぜて行っていた。

「どうだ、剣の方は?」

「部活で鍛えたから、昔よりは腕は上がったと思うよ。兄ちゃんにはかなわないと思うけど」

「まあ、俺に勝つにはまだまだっていったところみたいだからな」

 伯怜と秀悟の会話は続く。


「そういえば、彩乃はどうした?あいつに用があって来たんだが…」

「姉ちゃん? 今日は朝から学校に行ってるよ」

「学校? 土曜日なのに?」

「なんでも、課外授業だってさ」

「あいつ、どんだけ勉強するんだ……」

 伯怜はここに来た理由を思い出し、秀悟に問いかけた。そんな会話をしていると、

「私がなんだって?」

 と、背後から少女の声がした。思わず伯怜は驚きつつ背後を振り返る。


「彩乃!? いつ帰ってきたんだよ?」

「それはこっちの台詞よ。それはそうと、長旅、お疲れ様、伯怜」

 少女の口調は愛理みたいに少女っぽくないというか、むしろ伯怜と対等な感じである。




 彼女の名は千条彩乃(せんじょうあやの)。伯怜と同い年であり、お隣さんの同級生である。背は同年代の女子にしてはやや高めであり、キリっとした顔つき、そして秀悟と同じ茶色の髪をやや癖のあるセミロングヘアにしている。


 彩乃の姿をまじまじと見た伯怜は、

「随分と女らしくなったなぁ」

 と、言葉を漏らすが、彩乃はすかさず、

「それ、どこ見て言ってんの?」

 と少々強めの口調で反論した。彩乃は愛理とは異なり、女性らしい体つきに成長していたのである。


「勘違いすんな、お前をそういう目で見るつもりはない」

 伯怜も負けじと応答する。

「そうよねぇー、あんたには愛理がいるんだから」

 彩乃も全くひるまない。

「つーか、課外授業じゃなかったのかよ?」

「さっき終わって帰ってきたところよ。そしたらあんたと秀悟が話してたから、こっそり聞いてたら、私の話題が出てきたから話しかけただけよ」

 伯怜と彩乃の会話が続くが、なんというか、愛理とは違い、まるで同性同士が話している様子である。




「そういや、愛理に俺が帰ってきたこと話しただろ!」

 伯怜は愛理と再会した時のことを思い出し、彩乃に詰め寄る。

「だって、昨日、あんたの家、ずいぶんにぎやかだったものの。そりゃ気付くでしょう。それとも何? 愛理には何か秘密にしておきたかったことでもあったの? 私としては二人にサプライズを用意したつもりだったんだけど」

「……そりゃ、会えたから感謝はしているけど……」

 伯怜の態度が急におとなしくなる。

「何? 愛理となんかあったの?」

「お前は何も知らなくていい」

「えぇー、私だって愛理とは親友なのに……」

「だったら愛理に聞け!」

 伯怜と彩乃の応酬は続くも、彩乃の方が切り上げ、

「まぁ、詳しい話はまたみんなと一緒に後で聞くことにするわ。じゃあね」

 と言い残し、家に向かうのだった。




「あいつ、言いたいことだけ言いやがって……」

 伯怜は少々バツが悪い雰囲気だったが、呆然と二人の話を聞いていた秀悟が

「兄ちゃんは悪くないよ。姉ちゃんも悪気があって言ったわけじゃないし」

 と、すぐさまフォローに入る。

「それは分かっているさ。変な心配かけて悪かったな」

 伯怜も普段の態度に戻り、秀悟に感謝の意を伝える。

「また、色々世話になるかもしれないが、これからもよろしくな。一応、彩乃にも伝えておいてくれ」

 伯怜はそう言い残すと、千条家を後にした。秀悟も「またねー」と手を振りながら伯怜を見送った。




 自宅に着いた伯怜は、

「あいつもあいつで変わんないな」

 と、これまでのやり取りを思い出し、過去を思い出していた。




 千条彩乃、サバサバした性格なお隣さん。伯怜の生活は、過去と現在が一歩ずつ結ばれつつあった。


 サバサバ女子の定義がよく分かりませんが、彩乃はキッパリ物事を言うタイプです。

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