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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第一章 帰国、そして再会
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1-6.少女との再会

「さて、頃合いだろう。そろそろ出かけるとするか」


 伯怜は意を決し、外出する準備を始めた。その様子を見た母は、

「ちゃんと言いたいことは言ってくるのよ」

 と、まるで伯怜が誰かと会うことを前提に声をかけた。

「俺、誰かに会うなんて言ってないんだけど……。というか、誰と会うかもまさか分かって言ってるの?」

 伯怜は珍しく戸惑いの表情を隠せない様子だった。

「ふふ……」

 そんな様子を見た母はさらに不敵な笑みを浮かべる。

「とにかく、行ってくる!」

 伯怜はこれ以上言及されるのを恐れ、足早に玄関を出て、家を後にした。




(まさか見透かされていたとはな……)

 道中、伯怜は母の言葉を振り返り、いまだに動揺を隠せない様子で道を歩いていた。

(でも、会えるんだったら、早く会いたい。誰よりも、いち早く!)

 伯怜は想いを強くしながら、歩く速度を速め、『ある場所』へと向かった。




 数分後、伯怜は『ある場所』に到着した。まだ桜の花は咲いていないが、『あの時』と同じく、今にも咲き始めそうな蕾がいくつか見られる。




 ここは『龍庭御苑(りゅうていぎょえん)』。『龍庭保護区(りゅうていほごく)』と呼ばれる場所の内部にある庭園である。姫宮本家の花がたくさん植えられている庭園とは異なり、こちらは桜の木がたくさん植えてあり、満開時はお花見スポットとして賑わいを見せる。もっとも、ここでシートを広げて飲酒や食事をしながらのどんちゃん騒ぎができる人々は限られているが…。龍庭保護区についてはまたいずれ説明するとしよう。




「2年前、俺たちはここで……」

 伯怜は2年前のことを思い出す。それはまるでつい昨日の出来事だったような気がした。そう、この龍庭御苑こそが、2年前、伯怜が少女と『約束』を交わした場所なのである。


「さすがにそううまくタイミングが合うなんてことは……」

 などと、伯怜がやや諦めかけた雰囲気でつぶやきながら桜の枝を見上げていたその時だった。




「……伯、怜……?」


 突然、伯怜の耳に小さな声が届いた。伯怜は軽く驚いた表情をして、声の主の方を見る。

 そこにいたのは、背が低く、体も小さめだが、綺麗な長い黒髪を赤いリボンでポニーテールに結んだ少女だった。顔つきは、美怜ほどではないが、やや幼めな雰囲気が残る、THE、美少女、いや、とてつもなく可愛らしい顔つきの美少女だった。


「……愛、理……?」


 伯怜も突然の言葉に驚きを隠せなかったが、少女の顔を見るなり、表情が崩れた。




「伯怜ー!」

 少女は初めこそ不安と驚きが合体したような表情だったが、話しかけた相手が伯怜であると確信した瞬間、表情は一気に満面の笑みとなり、伯怜に向かって猛ダッシュしてきて、伯怜に力いっぱい衝突する位の勢いで伯怜に抱き着いた。


「伯怜ー! 会いたかった。ずっとずっと待ってた。本当に、会いたかったよ、……伯怜……」

 少女は伯怜に抱き着いたまま、自らの想いを伯怜にぶつけ、顔を伯怜の胸に当てながら、頬ずりをしていた。


「俺も会いたかった。……ただいま、愛理……」

 伯怜も少女を抱擁し、昨日美怜に見せた表情とは異なる、穏やかな表情で素直に言葉を発し、少女との抱擁を続けた。




 そう、この少女こそが、2年前、この龍庭御苑にて『約束』という名のファーストキスを交わした相手、愛理こと皇龍愛理(こうりゅうあいり)なのである。




 伯怜と愛理の抱擁は約1分続き、伯怜がようやく愛理の肩に手をやり、少しばかりの距離を保った。


「伯怜、おかえりなさい。いつ帰ってきたの? あっちでの生活はどうだった?それから、それから……」

「まあ、少し落ち着こうか。時間はたっぷりあるんだ。あわてる必要は無い」

 興奮が冷め止まない愛理に対して、伯怜は優しく声をかける。

「う、うん……。」

 愛理も興奮がおさまったのか、自分のした行為に対して多少恥ずかしさを感じ、顔を赤らめ、少し顔を伯怜からそらした。


「帰ってきたのは昨日だ。昨日は本家への報告があって忙しかったんだ。本当は一番最初に会いたかったけど、遅れてごめん……」

 伯怜も少々照れ臭そうに愛理の質問に答える。

「ううん、こうやってまた会えたから、それだけでもうれしい」

 愛理の表情は普段の穏やかに戻りつつある。


「あっちでの生活は色々あって、大変だったけど、ちゃんとこうして生きて帰ってこられた。これも約束のおかげだと思う」

 途中、伯怜の表情は曇ったものの、愛理への感謝は忘れなかった。しかし、約束という言葉を発した際には、伯怜の顔も少し赤くなり、


「約束……、あっ……」

 と、愛理も顔を再び赤らめるのだった。二人とも、2年前の出来事を思い出したのである。


 ひと段落した後、伯怜は愛理に対して質問した。

「ところで愛理、俺が帰ってきていたのを知っていたのはなんでだ? ここでこうして再開できたのも偶然とは思えないし」

 心の内ではここに来れば愛理に会えると確信していた伯怜だが、あまりに出来過ぎたシナリオに対し、疑問を抱いた。

「彩乃が教えてくれたの。昨日、伯怜の家がにぎやかだったって。だから伯怜が帰ってきたのかなって……」

「彩乃の仕業か。あいつめ……」

 伯怜が聞いたことに対する的確な返答だったが、伯怜は表情をややこわばらせる。

「で、でも、こうして会えるとは思ってなかったから、つい……」

「いや、愛理は悪くない。俺だって期待半分不安半分だったし」

 お互い、不安に思っていたことを吐露し、表情も穏やかになった。




「ねえ伯怜、また聞いていい?」

「ん、何だ?」

 しばらく静寂が続いたが、愛理が伯怜に問いかける。


「私たち、また一緒にいられるよね?」


 それは2年前にと同じ言葉だった。伯怜は軽く微笑み、愛理の頭を軽く手でたたき、

「当たり前だろ。そのために俺は強くなってきたんだ!」

 と、2年前と同じ答えを返す。

「何だったらもう一回約束するか?」

 伯怜は自分が言っていることはキザなことと思いながらも、愛理に提案した。それに対し愛理はしばらく考え、

「ううん、今はいい。だって、こうして一緒にいられるんだから」

 と、伯怜の目をしっかり見て答えた。

「……そうだな」

 伯怜も、無理強いをすることはなかったが、再び愛理と抱擁を交わした。お互いまだ14歳の子ども同士だが、お互いの鼓動が聞こえ合う、心が通じ合っている。二人とも、思っていたことは同じだった。


 ようやくメインヒロインの登場です。彼女が今後もキーパーソンになっていくでしょう。


 行間の取り方に関してはまだよく分からないので、読みにくい点もあるかもしれません。ご勘弁ください。

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