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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第二章 復学、世界を知るための『授業』
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2-1.新学期?

 ここから第2章となります。物語は新しい局面に突入です。

 4月1日、新年度が始まる。伯怜はいつも通りの朝、ではなく鍛錬を早めに切り上げ、先週受け取った制服に袖を通していた。白いワイシャツを着てから、チェック柄のグレーのスラックスを履き、赤色のネクタイを締め、最後にやや紺色が混じった黒色を基調とし、白いラインが入ったブレザーを身に纏う。胸元を見ると校章が刺繍されている。

「我ながら似合っている方だろう。少し大きめなのがなんと言うか、みっともない気もするが……」

 なんだかんだ言っておきながら、制服のデザインは気に入っていた。小学校の時はいかにもお坊ちゃん風な制服、中学時代は詰襟だったので、ネクタイやブレザーに大人らしさを感じたのだろう。

「ついでだからこれも、っと」

 そう言って取り出したのは、先日購入したシンプルなデザインのネクタイピン。生徒手帳には特に記載はなかったので、問題ないと判断したようで、早速ネクタイにつける。




 身支度を終えた伯怜は部屋を出てリビングに向かう。しばらくすると、怜嗣と美怜も降りてきた。怜嗣はネクタイの締め方が分からなかったようで、父に教わっていた。美怜の方はというと、デザインの基本は男子の制服と変わらないが、女子の制服はスラックスはプリーツスカート、ネクタイはリボンに変わっている。そしてこれからの成長を期待してか、少々ブカブカだった。


「どう、お兄ちゃん?」

 美怜は恥ずかしそうに伯怜に尋ねるが、伯怜は素直に似合っていると答え、美怜の表情も笑顔に変わった。その一方で、中学の時のセーラー服も似合っていたと考える伯怜であった。しかしながら、美怜は眼鏡を頭の上に乗せ、ヘッドホンを首にかけている状態だった。これは校則的にセーフなのだろうか。

 追記しておくと、ネクタイとリボンの色は学年によって異なる。伯怜は赤色、怜嗣は緑色、美怜は青色である。




「それじゃあ、三人とも、行くわよ」

 今日は新学期の始まり、なのだがまだ春休み中。ガイダンスも始業式も入学式ももう少し先である。では三人は何故学校に行くのかというと、正式な復学の許可を受けるためだ。三人と母は以前と同じように徒歩で学校まで向かう。改めて校門、校舎を見てみると、非常に立派で、歴史と伝統を感じる。




  『白帝学院(はくていがくいん)

 この国、白龍王国がまだ帝国だった時代に、白帝が国の将来を支える人材を育てるために創設された国立学校である。幼稚舎から存在し、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院がある。小学校、中学校、高等学校は内部ではそれぞれ初等部、中等部、高等部と呼ばれている。幼稚舎から入れるのは龍族や位の高い氏族のみであり、初等部から中等部といった、ランクが上がるごとに外部からの入学者を募集するようになるため、生徒数はランクが上がるごとに増加する。伯怜たちは龍族なので幼稚舎からずっと通っている。クラス分けに関しても、学力や剣術、魔術のレベルによって組分けされるが、大抵龍族は一番上のクラスになる。文武両道に力を入れており、勉学のみならず実践的な実習も数多く取り揃えている。中でも上のクラスになればなるほど、剣術と魔術の実践教育が増える。その一方で、校風はかなり自由で、高等部になればある程度生徒の自主性に任せるといった方針である。髪型なんかも特にうるさく言われることはない。それを言ったら龍族のアイデンティティ(遺伝的な髪の色)を否定することになってしまうからである。服装に関しては風紀委員が取り締まっているなんて話があるみたいだが。大学に関してはまた詳しく語る機会があるだろう。


 このような歴史のある学校だが、龍族は大した試験もせずに最高の身分が保障される。これも龍族の特権の一つだ。伯怜もどうせ1組になるのだろうと考えながら、校門をくぐり、校舎へと向かった。




 とりあえず応接室に通され、正式に復学の許可を得ることができた。ついでに、怜嗣と美怜の中学卒業も認定された。制服に関しては、伯怜のタイピンは注意されなかったが、美怜の眼鏡とヘッドホンは当然ながら注意された。伯怜は事情を話すが、当然ながら理解されない。今説明しても埒が明かないので、伯怜は美怜に対して普段はなるべく目立つような使い方はしないことと、写真撮影の時は取るようにと説得し、美怜もこれに応じた。

 ちなみにだが美怜は、視力はとてもいい。見えないものが見えるくらい。そして聴力も、とてもいい。聞こえないはずのものが、聞こえるくらい。そんな美怜がわざわざ重装備で身を守っている理由、これもいずれ明らかになることだろう。


 その後は担当者が変わり、校内を案内された。中等部までとは違い、生徒数は約1.5倍増加する。当然、校舎も広く、教室も多いため、移動だけでもそれなりの距離を歩いた。その後は講堂、体育館、武道場、実技棟、グラウンド、学食、購買などに案内された。これからお世話になる施設ばかりだ。伯怜は場所を頭に叩き込んだ。


 ……意外にもすんなり終わったものだ。最後に、学院長が現れ、白帝学院の生徒であることの自覚を持つようにと言われ、三人とも返事をする。そして去り際に、仮の生徒証を三人に渡していった。「なんだよ、あるんだったらさっさとくれよ」、なんて思う伯怜であった。

 その後は自由に校内を回っていいと許可が下りたため、母と別れ、伯怜たちはもう一度校内を一周した。まだ新学期は始まっていなかったが、数名の生徒がそれぞれの課題等に取り組んでいる様子も見受けられた。しかし、伯怜はある場所で足を止める。実技棟だ。


(ここで剣術と魔術の訓練が行われるのか)

 神妙な面持ちで実技棟内を見渡す伯怜に、怜嗣と美怜も2年間の修行を思い出し、真剣な顔をした。

 ついでにお世話になりそうな学食にも足を運んだ。とても広く、開放的な雰囲気だった。

(本気で彩乃におごんないとな……)

 彩乃との約束を思い出したが、自分もここで食べればいいと考えれば、特に重い感じはしなかった。




 一通りのことが終わり、三人は帰路につく。

「お兄ちゃん、これからは一緒に登校できるかな?」

「さあな。部活に入ったら朝練とかありそうだし、それに美怜も、俺にばっかりくっついてるんじゃないんだぞ。ちゃんと友達に挨拶するように」

「はーい……」

 美怜は少々がっかりした感じだったが、兄の言うことなので、素直に従うことにした。




 明日から、本格的な新学期が始まるようだ。伯怜も心を躍らせている。

(俺を見たら、みんなどんな反応をするんだか。あと新しいクラスメイトはどのくらいいるんだか)

 そんなことを考えながら、家まで歩いていく。


 第2章は複雑な用語がたくさん登場する予定です。なので、投稿スピードも調整しながらになります。

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