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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第一章 帰国、そして再会
16/39

1-15.勉強会、そして新学期へ

 日程の関係上、今週は金曜ではなく木曜に投稿します。

 翌日から本格的な勉強が始まった。朝、彩乃は家を出る前に姫宮家に来て、「とりあえずこれを見ておくように」と言って、ノートを伯怜に手渡し、早々に学校へ向かった。午前中は彩乃の指示通り、ノートを見ながら自主学習である。伯怜もありがたいと思いながらノートの内容を自分流に解釈し、自分のノートに書きこんでいた。余裕ができたら怜嗣と美怜のほうの様子を見、分からないところを教えていた。


 午後も基本同じことの繰り返しだが、彩乃は早々に帰宅してきた。彩乃曰く「理由をつけて用事を断って帰ってきた」とのことだ。本当に感謝しかない。


 三人は早速千条家を訪れ、彩乃が用意した来客用の部屋に案内され、そこで勉強会が始まった。しかし、美怜は何故か浮かばれない雰囲気である。


「あ、あの、彩乃さん、その、秀悟はどうしたんですか?」

 美怜が恐る恐る質問する

「秀悟なら部屋にいるわよ」

「そ、そうですか。ありがとうございます……」

 美怜の態度がややおかしい。どうも秀悟を気にしているようだ。


 彩乃の教え方は正確で素早い。質問をしてもすぐ答えが返ってくる。所々スパルタな一面もあったが、三人はすぐさま内容を理解し、彩乃が用意した問題も少々時間はかかりながらも解くことができた。

「三人とも、そこまでひどいってわけじゃないわ。これを繰り返せば問題ないわよ」

 彩乃も三人の修得スピードに感心し、実際に通学し始めてもつまずくことは無いと語った。ひとまず安心できた。

「それでも、まだやることはあるから、今後も続けていくわよ」

 そう言って、今日の勉強会はお開きとなった。しかし、帰り際に少々厄介なことが起こった。




 玄関を出ると、庭には秀悟がいた。鍛錬をしていたようだ。美怜と秀悟、お互い顔を見るなり

「うっ、秀悟……」

「げっ、美怜……」

 と、気まずい雰囲気になった。伯怜と彩乃はお互い注意するが、二人はどうもいがみ合っているように見えた。

 美怜と秀悟、この二人はお隣さんでありながら仲があまり良くない関係なのである。傍から見れば、どうでもいいことでいがみ合っているようにしか見えないが、本人たちは本気でお互いを好んでいないようだ。お互い、指摘されると痛い所を言い争っているが、伯怜と彩乃が間に入って制止する羽目になった。伯怜も彩乃も、困ったといった表情をしている。そんなこんなで、三人は千条家を後にした。




 翌日も同じように勉強会は行われる。昨日の終わり際に彩乃が用意した問題集を午前中に解き、勉強会で答え合わせなり添削が行われた。彩乃も理解しやすい問題を選んでの出題だったので、伯怜たちも自分の現状を知りつつ、進行度を確認することができた。あまりの教え上手な彩乃を見ていた伯怜は思わず、

「龍族だけど教師か大学教授にでもなるつもりなのか?」

 と質問するほどだった。しかし、返ってきた答えは全く異なるものだったので、伯怜は意外と感じた。よく考えれば彩乃は将来王妃になる身であるため、別の意味で大変だろうがここまで勉強する必要は無いはずである。それでも、彩乃には彩乃の将来像があるようだ。それについてもいずれ明らかになるだろう。そんなことを考えていたら、彩乃から「集中!」と注意されたので、伯怜はおとなしく勉強に集中する。




 日曜日になると、彩乃が伯怜たちとの勉強会のことを愛理に話していたようで、愛理から城でみんなと勉強会をしないかという伝言が彩乃から届いた。伯怜もこれを了承し、先週と同じように城に赴くこととなった。一方、怜嗣と美怜は皆の輪の中に入りにくいという理由で自主学習をすると言って断った。伯怜も強要しなかったため、家の前で彩乃と落ちあい、二人で城へ向かった。


 龍公御所に到着すると、先週のように部屋に案内された。幸人、愛理、恭人は既にスタンバイしている。恭人は乗り気ではないように見えたが。少し遅れて俊貴、そして葉月が到着し、勉強会が始まる。やることは変わらないが、多人数での勉強なので、様々な教科をまんべんなく教わることができた。伯怜にとっては、やはり愛理に教えてもらう方が理解しやすかった。その様子を見ていた彩乃は当然と言えば当然といった表情で二人を見ていた。途中で恭人が投げ出して逃げ出そうとしたが、幸人の一喝で阻止された。恭人も勉強が苦手というわけではないのだが。集中力の問題だろうか。


 今回はあまり長居せずに終了となった。その際、伯怜は携帯電話を手に入れたことを皆に伝え、連絡先があったほうが便利という理由で皆と連絡先の交換を行った。これで何かあった時も無いときもお互い連絡が取れる。態度には出さなかったが、そんなことを考える伯怜と愛理だった。




 これにて大まかな内容はおさえることができ、新学期も問題なく迎えられると彩乃から伝えられた。後は自分で勉強し、分からないところがあれば連絡することということで、勉強会は終わりを迎えた。彩乃は去り際に、しっかりと学食1週間分を要求してきた。ここはおとなしく従うことにした。




 そんなこんなで日にちは過ぎ去り、3月25日を迎えた。この日は美怜の誕生日である。母が買ってきたケーキや父が伯怜と相談した上で購入したプレゼントを前にし、美怜はとても喜んでいた。12歳となった少女の普通の反応である。ここまでは。

 誕生日パーティーが終わり、後片付けや入浴を済ませて自室で勉強していた伯怜の元に、やはり美怜が訪れる。やはり美怜は伯怜から直接お祝いを貰いたかったようである。伯怜はあらかじめ用意していたプレゼントを美怜に渡した。二つの黒い、髪を結ぶための細めのリボンだ。美怜はこれまで質素なゴム止めで髪をまとめていたので、これを見た美怜は自分に似合うか、あるいは自分で結べるか少し不安がったが、兄からのプレゼントということで非常に喜んで、兄にしっかりと抱き着いた。

 興奮がおさまった美怜に対し、伯怜はリボンでの髪の結び方を教えた。美怜もその姿を大変気に入ったようで、今日はこのまま寝ると言い出した。もちろん、伯怜と一緒に。伯怜も問題はなかったようで、就寝するまでの間はいつもより多めのスキンシップを楽しんでいた。当然だが、仲良し兄妹の範疇に収まる程度である。




 帰国から一ヶ月弱、こうして伯怜たちはようやく従来の生活に戻ることができた。4月からは新年度、高校生活が始まる。伯怜は高校生活において、自分のあるべき姿を模索することとなる。そんなことを考えながらも、やはり期待の方が大きい。果たして伯怜の高校生活はどのような1年間になるのだろうか。


 これにて第一章は終了し、物語は一区切りとなります。まだ何も始まっていない気がしますが、この作品自体私の初めて書く小説なので、丁寧に仕上げたいという想いがありました。

 他にもやることがたくさんあるため、投稿ペースはまたしても遅くなる可能性が高いですが、一個人の趣味として楽しんでいただけたらと思っています。2021年の短い間でしたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。来年も、『龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~』にお付き合いいただければ幸いです。

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