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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第一章 帰国、そして再会
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1-14.勉強をしなくては

「……一体何がどうなってこうなるんだ……」


 伯怜は自室にて、勉強机の椅子に腰掛けながらそう苦悶していた。


 理由はというと、先日学校で受け取った教科書を見ていたからである。学習する量の多さではなく、内容に対して苦戦している。


「……さっぱり理解できん……」

 それもそのはずである。2年間、武芸や魔術の修行、あるいは冒険といったことに力を注いでいたため、ろくに勉強する時間などほとんどなかったに等しいからである。一応就寝前のちょっとした時間に勉強することもあったことはあったものの、基本は本を読む程度であり、実践的な問題を解くことなどしてこなかった。

 しかしながら、伯怜は頭が悪いかといったらそれは違う。むしろ中学時代の成績は上の上クラスであり、定期試験の成績は学年内でも20位以内に入る位勉強はできたし、頭も良いため普通以上に授業内容を理解し、家庭での自習をしなくても問題ないほどであった。

 だが、高校での学習内容は中学より複雑であり、何より大学受験も絡んでくるため、必然的に学習量も多くなる。当然、覚えなければならないことも多い。




 教科書を一通り読み終わった伯怜の現状を整理しておこう。


 まず国語。現代文は表論文は問題なく理解できる。作者の主張もばっちりだ。小説の登場人物の感情を読み取るのはやや苦手にしているようだが。古文や漢文は遺伝だろうか、なんとなく理解できる。


 続いて社会。地理、歴史、現代社会と分かれているが、地理は中学までの知識を応用すれば問題ない。歴史も、幼い頃から国の成り立ちを教わってきたため、こちらも問題ない。現代社会に関しては、国内情勢と国際情勢に分かれており、まだまだ勉強が必要だと考えていた。だが、そこまで難しくは考えていない。


 理科。生物、地学、物理、化学に分かれる。中学までは生物と地学、物理と化学は同じ分類であり、自然現象を習うということが多かった。伯怜もそれを理解しており、原理は説明できるが、数字や計算が入るとつまずくといったところである。


 外国語。英語を学習する。中学までに習った文法を応用すれば、あとは単語を覚えればいいだけなので、気楽に考えている。元々苦手意識はなかったし。


 最大の問題は、数学である。中学までで覚えた公式だけでは全く歯が立たないレベルまで進んでいる。そして公式は増える一方である。公式を覚えようにも、どういう理論で公式が成り立っているかが理解できなかったので、問題を解くことは不可能であった。




(このまま新学期を迎えるのはさすがにまずい。何か対処法を考えなければ……)

 そう考える伯怜だったが、今は一人、幸人も愛理も学校に行っている。母も頭は良いが、人に教えられるほどではない。どうしようか迷っていた伯怜は、とりあえずリビングのソファーに腰を掛けてリフレッシュしようとしたが、そこには同じ問題を抱えた怜嗣と美怜もいた。二人とも、やはり伯怜と同じような表情をしていた。


 昼食を終えた三人は、とりあえず伯怜が先頭に立ち、怜嗣と美怜の中学分の学習内容を自分の復習がてら教えることとなった。怜嗣と美怜も頭が悪いわけではないし、伯怜もなるべく丁寧に教えたため、そこまではすんなり進んだ。怜嗣の高校分の内容は伯怜にもどうしようもできなかったが。




(さすがにこれが限界か)

 伯怜は自力で勉強することを半ば諦め、他の方法を考え始めた。といっても、一番の解決策は人に教えてもらうことである。さすがに家庭教師を雇うほどではないと伯怜は考えていたが、そうなると教えてもらう相手は限られる。そう、歓迎パーティーの仲間たちである。しかし、皆部活があるということを伯怜は事前に聞いていたので、そう簡単に頼める相手はいなかった。……いや、一人だけ頼める相手がいる。そう、お隣さんの彩乃だ。しかし、伯怜の思いは微妙であった。


(あいつも自分の勉強で忙しそうだし。……何より借りを作ることに対抗がある)

 伯怜からすれば、第一希望は愛理に教えてもらうことだ。学力レベルも同じ位だし、何より誰よりも仲が良く、波長も合う。しかし、愛理は部活で忙しいことは既に知っているし、そう何度も城に行くことも、愛理から来てもらうのも色々と問題がある。そうなると、残っているのはやはり彩乃だけであった。




 夕方、彩乃が帰ってくるのを自宅で待ち、午後5時をめどに彩乃の家の前で待ち構えていた。数分ほど待ったが、彩乃が帰宅してきた。

「あら、伯怜。どうしたの?」

 彩乃は不思議そうに反応する。

「突然の頼みであることは承知しているが……」

 伯怜はそう語り始めると、

「彩乃、頼む。勉強を教えてくれ!」

 と、恥を承知で頭を深々と下げ、経緯を説明した。

「ふーん、気にはなってたけど、やっぱりそうだったの」

 彩乃は特に笑うこと無く、伯怜の話を聞いていた。伯怜は馬鹿にされる、あるいはきっぱり断られると思っていたが、

「分かったわ、そんなに時間はさけないけど、付き合ってあげるわ」

 と、意外なことに了承してくれた。

「ありがとう! 本当に感謝する!」

 伯怜の思いとは真逆の回答だったので、伯怜は再び彩乃に対して深々と頭を下げ、礼をする。しかし、彩乃も一筋縄ではいかないようで、

「その代わり、何か報酬はあるの?」

 と、頭を下げたままの伯怜に対して聞き返すのであった。

「うっ……」

 予想外の質問に伯怜は一瞬固まるが、彩乃は笑って、

「冗談よ、冗談。ただ、貸しにはしておくわ」

 と返した。やはり一筋縄ではいかない。それでも、伯怜はほっとした気分だった。

「そうねぇ、あんたと私っきりじゃなんだから、ついでに怜嗣君と美怜ちゃんにも教えてあげるわ。私にとってもいい復習の機会だし」

「ほんとか? だったら新学期始まったら学食おごるわ!」

「そう? じゃあ1週間分お願いしようかしら?」

そんな会話をしながら、いつ、どこで勉強会をするか、教えてほしい内容などを話し合った。ついでに、携帯電話を手に入れたのでこれからの連絡手段として連絡先の交換もしておいた。その後、二人はそれぞれの家へ帰宅する。




「……助かった……」

 伯怜はリビングのソファーに腰掛け、胸をなでおろした。そして、怜嗣と美怜にも勉強会の旨を伝えた。美怜は少々気になることがあったようだが、問題ないということで話はまとまった。




「これで恥をかくことが無ければいいんだが……」

 そんなことを考えながら、その日は眠りにつくのであった。


 学習内容は現時点では我々の世界と変わりありません。ただ、3年短いだけあって、相当詰め込んではあります。

 でも、歴史とかって受験を考えなければゆっくり勉強すれば身につくものじゃないですか? ヨーロッパではこういう教え方みたいですよ。理科だって現実では中学校で原理を習って高校で計算が追加されるわけですから。

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