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龍と姫の協奏曲~銀の剣は天空を舞う~  作者: 佐倉松寿
第一章 帰国、そして再会
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1-13.復学への準備

 忙しい3日間が終わり、月曜日を迎える。幸人、愛理たちは普通に学校に行くが、伯怜たち三兄妹はまだ自由の身。落ち着いてゆったりできると思ったのも束の間、三兄妹は母に呼び出され、復学の手続きということで学校に行くこととなった。とはいえ、歩いて20分程度の距離である。そこまで面倒ではない。いや、美怜にとってはきつかったかもしれないが。それでも2年間の修行に比べればはるかに楽なのは確かだ。


 学校に着くと、まず応接室に案内され、2年間の様々なことを聞かれた。相手を刺激しないように言葉を選び、説明をする。どうやらそれで問題なかったようで、次はめんどくさそうな書類の記入に移った。三人ともササっと書き終わらせると、お互い「今後ともよろしくお願いします」と軽く挨拶をして応接室を後にした。


 次にすることは制服の採寸。美怜は嬉しそうだったが、伯怜は乗り気ではなかった。どうせ1年しか着ない服にこだわる必要はあるのかと愚痴るが、母は「せっかくなんだから」と伯怜を説得し、伯怜もそれに渋々応じる。

 別に伯怜は制服を着ることが嫌なわけではない。むしろ、制服を着た方が様になると感じていた。実際、試着して鏡で自身の姿を確認した伯怜は、案外ご満悦な感じであった。

 ついでだから美怜の制服姿も見たが、かなり似合っており、伯怜も美怜も嬉しそうにしていた。サイズの方は、伯怜はごねたが、母が「成長期だから」という理由でやや大きめにオーダーした。なんというか、高校三年生なのに、新入生みたいで恥ずかしいと感じる伯怜であった。出来上がるまで1週間、出来上がったら再び来るように言われた。


 次は、授業で使う教科書を渡された。高校レベルなので、量も多い。今見るのは不可能なので家に帰ってからじっくり見るとしよう。ついでに生徒手帳も渡された。新学期が始まるまでに熟読するようにと指示された。別に校則違反をするつもりはない伯怜だが、読んでおいて損することはないだろう。これも後でじっくり読むとしよう。


 最後に、魔術の実技に使用するための『杖』の存在を確認された。杖は基本高校入学前に買うものであるが、伯怜たちはあちらに旅立つ前に購入していた。杖にも適性があるようで、適当なものを買ってもろくに魔術を扱えないため、買う際はかなり選別するものである。伯怜自身、この2年で杖の感覚にかなり慣れていたため、特に支障をきたすことは無いが。むしろ最近では杖なしで魔術を使うときさえある。もちろんバレないように。


 これにて手続きは終了。後は制服の受け取りと新年度になったら再び来るようにと伝えられた。生徒証もその再発行するとのことだ。つまりそれまでの伯怜たちの扱いはどうなるのだろうか。




 午後になると、母が約束していた携帯電話の購入の手続きのため、携帯電話ショップに出向いた。様々な機種があることに三兄妹は驚いたが、三人とも気に入った機種を見つけることができたようだ。といっても、機能としては電話、メール、写真撮影、短い音楽を聴く、パソコンとは異なる独自のインターネットブラウザを見る程度のものである。こちらの世界でいうところのいわゆるガラケーというものだ。それでも三人は念願の携帯電話を手に入れたことがうれしかったようで、母に感謝した。母もいつでも連絡が取れるということに安堵したが、改めて無駄遣いはしないようにと三人に言った。


 他にも学校に通うための必要な物の買い出しが続いた。学校指定の体操着や運動靴、胴着などである。そういえば普段履く靴や上履きも必要である。学校指定の品を買うのも一苦労だが、ひとまとめに扱っている店があるため、そこまで苦労はしなかった。今日の買い物はとりあえずここまでである。




 翌日はかねてから三人が欲していた私物の買い物に出かけることとなった。量が量なので、母が運転する自家用車にて郊外のショッピングモールへ出向き、それぞれ予算を手にし、散らばっての買い物である。三人とも家にあった私服のサイズが合わなくなったため、あちらで揃えたものとは別に新調することとなった。私服のセンスとしては伯怜はまだ高校生だが至って真面目な好青年、怜嗣は特に着飾らない控えめなもの、美怜はあまりゴテゴテした服は好まず、スッキリした、かつ着ていて楽なもの、といったところだ。散らばっての買い物と言ったが、美怜は伯怜の意見を聞きたかったようで、伯怜の買い物が終わるまで静かなスペースでおとなしくしていた。そして、空港でもしていた眼鏡とヘッドホンも装着していた。どうも美怜は人ごみが苦手、というより嫌いなようである。理由については、いずれ触れることになるだろう。伯怜もそれを覚悟していた。伯怜はまたしても時間が余ったらゲーセンにでも行こうと考えたが、バレた時が面倒なので、やはり自重した。その代わり、本屋に行って色々と物色していた。


「やっぱり漫画が発売日に即手に入るのはいいことだな……」

 そんなことをつぶやきながら、漫画コーナーを歩いていた。この国は漫画文化が盛んであり、少年少女の多くが何らかの雑誌を購読しているケースが多い。伯怜は漫画雑誌を買っているわけではなかったが、お気に入りの漫画はある。しかし、あちらでは発売されるのが遅く、かつ師匠の方針や修行で忙しかったため、読む暇がほとんどなかった。伯怜は一気買いしようかどうか迷ったが、中古を探せば安く済むと考え、静かに漫画コーナーを後にするのだった。もう予算もないことだし。




 なんやかんやで手続きなり買い物なりで2日費やしたが、その後、別の重要な問題が浮上するのであった。


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