1-11.パーティーは続く
パーティーはそれぞれ食事や飲み物を口にしながら続く。様々な話題があがったが、彩乃が唐突に、
「そういえば伯怜、結局愛理のこと、どう思ってるのよ?」
と切り出した。
「昨日も言っただろう、愛理に直接聞けって!」
「でもー、愛理もそこについては昨日あんまり話さなかったし、あんたたちから直接聞いた方がいいかなーって」
「んだよ、その投げやりな態度は……」
伯怜は怒りを通り越し、もはや呆れていた。
「そこについては俺も気になる」
「そうだそうだー!」
幸人と恭人が突っかかる。三つ子、プライベートに深く介入することのない三人だが、きょうだいのことは気になるらしい。
「伯怜、居なかったから知らないと思うけど、お前たち、学校じゃもうナンバーワンベストカップルという扱いになっているようだぞ」
「は!? なんで俺がいねー間にそんなことになってるんだよ!?」
俊貴の解説に対して、伯怜はこの2年間に学校で一体何があったのかということに驚愕と同時に疑問を抱く。
「だって、愛理、男子から告白されまくってたし。その度に想い人がいるって理由で断り続けてきたんだから、中学の頃を知ってる奴なら想い人が伯怜だなんて一発で分かったものよ」
葉月の説明に対し伯怜は、
「愛理に告白するとは、大胆というか無謀というか……、って、どんだけ告白されまくったんだよ!?」
と、冷静に分析したかと思えば急に驚きだす。
「で、どうなのよ愛理?」
彩乃が愛理にこのことを聞くと、愛理は
「えへへ……」
と、やや恥ずかしそうににやけながら体をうねらせるのであった。愛理にとっては告白されたということより、想い人、つまりは伯怜がいるという点にご満悦のようである。
「こりゃかなわないわ……」
愛理の態度を見た葉月は、軽いため息をつきながらぼやくしかなかった。
「お嫁さんはそう言ってるわよ。旦那さん」
「誰が旦那だ! ……少なくとも今はまだ違う。そうだよな、愛理?」
彩乃の茶化しに反論する伯怜だったが、このやり取りが愛理を刺激したようで、
「きゃー、伯怜ったら、そんな大胆な! お嫁さんだなんて!」
……完全に自分の世界に入っている。
「……この話題には触れないでおこう……」
愛理を除いたメンバーは、そう思い、この話は打ち切られた。
「そういうお前らはどうなんだよ!」
反撃とばかりに伯怜が各々に問い詰める。
「お前がいない間に俺と彩乃の婚約が決まった」
幸人は自然とそう答えた。
「はぁ!? お前と彩乃が婚約!?」
伯怜は全く驚きを隠せない態度で大声を上げた。
「そこまで騒ぐことじゃないだろう。龍族同士の婚約だ」
「い、いや、それはそうだが……、お前ら、うまくやっていけんのか?」
伯怜はまだ驚いた口調で幸人と彩乃に詰め寄る。
「まあ、これからだろう」
「わたしも特に気にしてないわ。親同士が決めた婚約だからって、嫌ってわけじゃないし」
二人の態度はどこかそっけない。伯怜は心配して尋ねたわけだが、さらに疑問が頭をよぎる。幸人は将来国王になるわけだ。ということは、彩乃は王妃になるということだ。彩乃なら問題ないとは思ったが、二人の仲について特に気になった。所詮は政略結婚。そう感じた伯怜だったが、二人の関係をよくよく見ると仲が悪いというようには見えない。結婚してもうまくやっていけるのだろうと無理やり結論付けた伯怜だった。
「恭人、お前はどうだ?」
伯怜は話を恭人に振る。
「お、俺は別に……」
恭人は言葉を濁した。そう、恭人はこのメンバーには特に感じないが、女性が苦手なのである。会話するのもうまくできないし、女性に触れただけでオーバーリアクションをとるほどである。
「なんと言うか、お前らしくて安心した」
先程のやり取りが唐突だったためか、伯怜は安堵するのであった。
「じゃあ、俊貴は?」
今度の対象は俊貴である。
「俺か? 気になる相手が一人いるよ」
「ほう、それは聞き捨てならんな。どんな相手だ?」
「それは、学校に来れば分かるさ」
伯怜は意外な答えに興味を示したが、後の答えが曖昧だったことに何かを感じるも、深追いはしなかった。
「葉月、お前は……」
「何、私はモテないって言いたいわけ?」
「だから何も言ってないんだが……」
「ふん、別にいいわよ。私より弱い男なんかとくっつきたいわけじゃないし!」
葉月に対しての伯怜の態度はやや失礼だが、葉月も葉月なりの考えを持っていることを聞き出せたことは成功した。ただ、求める相手の条件が厳しいのではないかと思う伯怜であった。
「ふぅー、満足満足。さて、伯怜。一番気になる点だが、お前、どんだけ強くなったんだ?」
食事を終えた恭人は、伯怜に問いを投げかける。ある意味、一番気にしていたことである。
「それは俺も気になるな」
「確かに」
「2年間、ちゃんと修行してきたのよね?」
幸人、俊貴、葉月がそれに乗る。
「ふっ、何言ってんだお前ら。俺がどんな日々を送ってきたのか聞いてなかったのかよ?俺は観光で向こうに言ってたわけじゃないんだぜ」
伯怜は自信満々にそう答えた。自分の腕に相当自信があるようだ。
「お前たちこそ、のほほんと高校生活送ってたわけじゃないんだろ?2年前と同じじゃつまんねーぞ」
今度は伯怜が挑発に出る。
「馬鹿にされたものだな。高校だって実技は充実しているんだ」
「その実技と俺の経験、どっちの方が質が高かったことか」
幸人の答えに対しても、伯怜は態度を変えない。
「なら、実際に試してみるか?」
すると恭人が伯怜にやや喧嘩腰で迫ってきた。
「ああ、いいぜ。お互いの実力を再確認するいい機会だ。楽しもうじゃねーか」
伯怜は完全に臨戦状態に入ったようだ。今にも木刀を取り出そうとしている。
「よっしゃー! 早速庭で打ちあうとするぞ!」
恭人も完全にスイッチが入ったようで、全員に声をかけ、一度自室に行き、木刀を用意してから全員で庭に向かうのであった。
「……あれ、何が起こってるの?」
ようやくこっちの世界に戻ってきた愛理だが、話の展開についていけていない状態だった。
登場人物の人間関係が複雑になりつつありますが、ゆっくり覚えてもらって問題ないです。今のところ、伯怜と愛理、幸人と彩乃は何かありそうですね。