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0-0.別れ、旅立ち

 それはまだ少し寒さが残る、桜の花が蕾をつけ始めた3月上旬のことだった。立派な庭園の中に二人の少年と少女がいる。


「私たち、これからもずっと一緒にいられるのかな?」

 普段は天真爛漫な少女は不安そうに少年に尋ねた。


「俺たちはこれからもずっと一緒だ、安心しろ。そのために俺は強くなりたいんだ。しばらく会えなくなくなるけど、心配するな!」

 明るく活発な少年はそう答えた。


 少年は祖父と父親の方針により、これから外国へ武者修行に行くこととなった。期間は2年。思春期に入ろうとしている少年少女にとっては、決して短い年月ではない。それでも少年の意志は固かった。自分に必要なのは大切なものを守るための力なのだと考えていたからだ。


「で、でも……、やっぱり会えないのは寂しいよ。手紙も出しちゃダメなんて……。それに、何かあったらって思うと怖くて……」

 少女は体を震わせ、一層不安な表情になった。よく見ると目には涙が見える。


「大丈夫だ。少しの辛抱さ。みんなのため、そしてこの国のためにも、俺は絶対、強くなって、生きて帰ってくる!」

 そう言うと、少年は幼くぎこちないながらも片腕で少女を軽く抱擁し、少女の心を落ち着かせようとした。


 これを受け少女は、少年の顔を見て、こうつぶやいた。

「本当、だよね? 嘘じゃなかったら、約束、して」

 そう言うと少女は改めて少年の顔を見ながら、目をつむった。

 少年も少女の行動を理解し、とまどいながらも、自分も目をつむり、少女の唇に口づけをし、しばらく抱き合った。どこかあどけなさを感じ、お互いにとってまだ早すぎるであろうファーストキスは、お互いの心を通わせた瞬間であった。




「それじゃあ、行ってくる。元気でな……」

「うん、私ももっと頑張るから……」


 少年と少女はそう言葉を交わし、少年は庭園を後にした。




 それから数日後、まだ12歳の少年は弟と妹とともに、異国へと旅立った。




「行こう、さらなる高みへ。そして……」

 少年の目には、希望、強い意志、そしてこれから待ち受ける試練への覚悟を見ることができた。少年の長く濃い2年が、始まろうとしていた。


 初投稿、かつ私の処女作です。投稿の頻度は保証できません。長くお付き合いいただければ幸いです。

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