第15話 なんか兄がいる
今回は短いです。
年内最後の投稿になります。
間に合ってよかったです。
里実 自宅
なんの面白みもないテレビ番組、いつも通りエアコンの効いた涼しい部屋、雲はあれど晴れている青い空。
ただ一つ違うことと言ったら…なんか一人暮らししてるはずの兄がいることくらいか。
現在は兄は実家、つまりここにいて元々の兄の自室で寝ている。そこまだ掃除してなかったんだけどね、まあいいや。
兄は一人暮らしである。帰ってくるのは今みたいなお盆か正月くらい。しかし連絡は結構な頻度で寄越してくる奴だ。しつこいので未読無視することも多々あるが。
仕事で疲れていたのか実家に帰ってきた安心感からなのか、昼ごはんをさっさと食べると、すぐに寝てしまった。
騒がしい兄のことはちょっとうざったいと思っているし、のびのびと一人でゲームができるからこの際ずっと寝てから帰ってくれてもいいのだが。
私の自室に鍵をかけ、ゲームに勤しむことにした。いつもは家に1人なので鍵をかけたりしないのだが、今回は兄がいるので。
ガチャガチャ…
「あれ、鍵かけた?」
ドアノブを捻ろうとする音がする。ちょっと今話しかけんな!待ってろ待ってろよ…だああミスった!
一曲終わってから立ち上がり、鍵を開けてドアを少し開けた。
「なんのようですか?」
「しばらく出てこなかったけど…?」
「ゲーム中でした。邪魔されました。それはいいとして、なんですか」
「遊ばない?」
「嫌です」
「なんで」
「自分の胸に聞けよ」
私がそう言い放った理由、兄はかなりずるいこと…いや、もうちょい踏み込んで言えば反則にならない範囲でせこいことをしたり、私が負けたらめっちゃ煽ってくるからだ。
要は…奴は性格が悪いのである。
「そ、そんな!僕はただ普通に正々堂々と遊んでいただけじゃないか!」
「どの口が言う、あと棒読みだぞ」
「ちょっと待って待って」
私はドアを閉めようとしたが、兄に止められた。
「Wiiはあるかい?」
「まだ現役だ」
「Partyやろうぜ」
「いいよ」
側から見るとちょっとした喧嘩に見えるが、私たちにとってはおふざけであり、おどけた会話。
年に数回しか2人とも会わない最近では、こんなやりとりも珍しくなってきた気がする。
「ああああああ!ゾンビィィィィィ!負けたあああ!」
「これが大人と子供の差ってやつだよ、わかるかな?」 バンバンバンバン
「うっざ」
ゾンビから逃げるミニゲームをやって負けてしまった。私が先に捕まり、兄が逃げ切ったのだ。これ兄の得意なミニゲームで、私の勝率は5%くらいだからなあ。
それにしても相変わらずうざい。有頂天になって私を煽ってくる。肩とかめっちゃ叩いてきて痛いし。
「俺が社会の厳しさを教えてあげたんだ、ああ、おれはなんて良い人なんだ。はっはっは」
「あの…今までで一番嫌いだわお前、そろそろこのゲームをやめ…」
「さあさあ、まだやりましょ」
「ちょ痛い痛い、腕引っ張るな、座らせようとするな!」
嫌味ばっかり言いやがってこんのクソ兄貴…
第二回戦、私の勝利。
今度は迷路のミニゲーム。といっても普通の迷路ではなく、途中で回転台に乗ると操作がめちゃくちゃになって、おかしくなったままゴールを目指さなくてはいけないというもの。(例:「右を押すと左へ」「左を押すと右へ」進むといったことが起きる)
しかし実は変化する操作方法にはパターンがあり、それを把握していれば操作が変化してもすらすら進むことができる。このミニゲームに私は無類の強さを誇り、(知る限り身内では)誰にも負けたことがない。
「ねえ、にぃさん、負けたね。ねえ、どんな気持ち?どんな気持ち?」
「まあ、こうやって『負けてあげないと』、妹が機嫌を損ねてギャーギャー騒ぐからなぁ、兄の役目も大変だー」
「お前本気でやったんだろが」
兄が負けた場合、こんなふうに見た目だけは余裕ありそうな反応を見せるが、悔しいと思っているのは言うまでもない。
第三回戦
「うわぁたたたたたたたたた…!」 カチカチカチカチカチカチ…
「うおぉぉぉぉぉぉぉおお…!」 カチカチカチカチカチカチ…
ピピーっ! [フィニッシュ!!]
「うっしゃごるあっ!」
私の勝利である。
鉄棒にぶら下がり、懸垂が60秒間で何回できるかというシンプルなミニゲームで私が勝利。WiiリモコンについているAボタンとBボタンを同時に押して回数を稼ぐゲームで、片手で連打することになるからなかなか疲れるゲームだ。
敗北者の兄はというと…寝たふりをしている。このパターンは…
兄は目を閉じたままリモコンを操作し、「もう一回」を選択してしまった。そして、
「はっ!なんだ、夢か。悪い夢だったなあ。まさか懸垂大会前日にこんな悪夢を見ることになるとは。じゃ、始めよっか。社会の厳しさというものを、調子に乗ったガキに教えてやる」
はい、夢オチにして負けたのをなかったことにするパターンでございます。
ちなみに、再戦されても勝ちました。
時は変わり夕の刻。夕ご飯は久々に出前を取ることにした。だって兄の分の飯作るのめんどくさいんだもん。
「お母さん明日帰ってくるって」
「そっか」
先程の連絡により、母もお盆なので帰ってくるそうだ。母は職場が遠いのと出張が多いので外泊することが多く、月に数回しか帰ってこない。明日になれば3人になるというわけだ。
「あ、あと父さんのことだけど」
「…」
私は彼を睨む。
「ご、ごめん里実。父さんは今年も帰ってこないって」
「あっそ」
兄はビール(さっき外に出てコンビニで買ったやつ)を片手に、ぼうっとテレビを眺めていた。
子供のおもちゃのCMだ。発売中の最新プラレールが映っている。へえ、今はこんなクオリティの高い列車を走らせられるんだね。
まったく電車系のおもちゃには詳しくないが、実は幼少期によく車や電車のおもちゃで遊んでいた。プラスチックの線路を取り出しては、行き止まりにならないように曲がった線路を活用して円の形にして「ぐるぐるまわるでんしゃ」とか作ってた。(山手線の存在を知る前である)
兄が懐かしんでいるのかは知らん。
「にぃさん、あれ買ったら?」
「なんで??」
「あんたがプラレールで遊ぶところを録画してSNSで拡散してやるから」
「えぇ…?」
自分でも何を言ってるのかはよくわかりませんね!
「あ、そういや」
「どうした?」
兄が何かを思い出したみたいだ。
「今年も行かないのか?」
「…どこに」
「ばあちゃんのとこ」
そう聞かれて頭をよぎるのは━━それを振り払う。
「まあ、遠いし。あんた行ってきたの?」
「仕事で通る場所だからな。おととい、ついでに行ってきたよ」
「ふーん、偉いね」
兄は運送業をやっている。トラックを乗り回し各地を巡るのだという。具体的に何をしているのかはわからないし、興味がない。
「あ、あと」
「まだ何かあんの」
「あのサンドバック、長いこと持つね」
「…最近は落ち着いてきたからね、友達のおかげで」
ピンポーン
あ、来たみたいだね。ちょっくら受け取ってこよ。
「うえーいピザだぜ」
「ピザだー♪」
開けるとジャンキーなにおいが漂ってくるピザでございま〜す。手っ取り早く食べられてお腹いっぱいになれると言ったら宅配のピザよね。
「わーい、いただきま〜…」
兄が口を開け、ピザを口元に持ってきた時…
「ん?げ…」
「あれ、どしたの?」
兄の携帯の画面が光って反応しているのに気づいた。嫌そうな顔したから、これはさしずめ仕事の電話ってところかな。
「ちょっと外出る」
「おつかれい」
数分後
「おまたせ」
「おかえり」
「なんか食欲失せたわー」
「仕事の電話だったから?」
「うん」
「そーかー」
仕方ない仕方ない、そう言ってピザを食べ始めた。
「いや一口がでかいな。食欲失せたんじゃなかったんかい」
「僕の仕事は体力、体力は食べることで身につくからね。たくさん食べねば」
これが、よく食う割に兄が痩せている理由の断片であると思った。
彼は食事の後仕事に行った。
兄妹の話なので身内ネタ多め。
拙い小説ですが、来年もよろしくお願いします。




