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マカロンさん  作者: 鈴女亜生


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13/13

いーちぃ…

 あれから、私は保護されて、シゲル達三人の捜索が進められたが、結局、三人が発見されることはなかった。私は見たままにマカロンさんが全ての元凶だと訴えたが、誰も聞く耳を持たず、最終的に三人は行方不明という形で収まったようだ。

 三人の中では唯一マサシだけ、周囲にマカロンさんがいた証拠をばら撒いていたはずだが、それはどうやらマカロンさんのいた跡で塗り潰されたようで、そのことが話題になることもなかった。


 それから、私は一人の日々が続いた。三人もいなくなったのだから、確実に何かがあったのだろうとは皆が思っていたが、私がマカロンさんの話しかしないことで、私が何かをしたのではないかという噂や、何者かに攫われる場面を目撃しながら、私は見逃したという噂まで立ち、シゲルやサッちゃん、マサシの親からも責められ、私は孤独に生きていくしかなかった。

 実際、マカロンさんを目の前にして、私は三人を助けることができなかった。何もできなかったという事実は変わらず、そのことに少しの後ろめたさを覚えていないはずもなかった。


 小学校を卒業しても、私の生活に大きな変化はなかった。イジメまでは行かなくても、私と関わることで行方不明になるという噂が流れたりして、私の周囲から人は必然的にいなくなっていた。


 その環境は高校生になった時点で、少しリセットされたのだが、その段階になると私の性格は既に形成され、そこから新しく変われるはずもなく、親しい友人を作ることもないままに私は大学生になっていた。

 特に目標があるわけではなかったが、マカロンさんに関する騒動の際に、私は両親に多くの迷惑をかけていたので、その恩返しの気持ちも兼ねて、両親を助けられるほどの仕事に就きたいと考えていた。


 そのためには大学に通う必要があり、私はそこでひたすらに勉強を頑張った。そのお陰か、大手企業への就職も決まり、そこから、私の人生はあの時のマカロンさんとの出遭いを忘れたように、右肩上がりで豊かになっていった。


 しかし、私自身がマカロンさんを忘れることはなかった。あの時の神社ではなくとも、神社の前を通るだけで思い出し、あの時のマサシの叫び声が耳の中に蘇ってきた。

 シゲルやサッちゃんも、本当にいなくなってしまったのだろうかと、つい考えてしまうことが多かった。


 そして、ある時、ふとシゲルやサッちゃんが急にあの神社に戻ってくる夢を見た。あくまで夢であり、私の中に残ったマカロンさんの記憶や罪悪感が見せていることは分かったが、何となく、その夢を確認して見たくなった。

 あの時の神社の場所を調べて、私はそこを見てみようと思った。


 そうして、私はあの神社を訪れて、マカロンさんのことを思い出していたのだが、神社の中はあの頃と変わっている様子がなかった。マカロンさんによって潰されたはずの茂みも、あの頃と同じように復活している。


 シゲルやサッちゃんはもちろんいなかった。マサシは何となく、いることはないだろうと私は思っていた。


 やっぱり、何もないのだから、いつまでもここにいても仕方がない。そろそろ、マカロンさんのことは忘れることにしよう。

 私がそう思った直後、神社の裏手から声が聞こえてくることに気づいた。子供の声だ。それも二人いるようだ。


 私は一瞬、本当にシゲルとサッちゃんがいるのかと思った。急いで、その声のする方に駆けていくと、そこにはシゲルとサッちゃんではなく、この近くに住んでいると思われる子供が二人遊んでいるところだった。


 やっぱり、二人はもういないのだ。探しても仕方がないことだ。そう思いながら、その場を立ち去ろうとした時になって、二人の子供の前に見覚えのある記号が大きく描かれていることに気づいた。その記号の上には、砂糖や卵の他、ココアパウダーのようなものまで並べられている。

 私はまさかと思い、慌ててその子供達に声をかけていた。


「君達、何してるの?」


 その声に、そこにいた二人の男の子が振り返った。


「ティラミスさんを呼ぼうとしたんだよ」

「でも、失敗だったね。何も起きなかった」

「ティラミスさん…?」


 マカロンさんではないのかと私が安堵した直後、地面に伸びていた影が膨らむように、黒い球体が記号の上に現れた。

 それを私は二人の子供と一緒に、呆然とした顔で見つめる。球体の中からは聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。


「いーちぃ…」


 私にとって、二度目の悪夢の始まりの声だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)全体的にシナリオが綺麗にまとまって、尚且つ怪異が生じてからのスリルが凄く好印象というか、ずっとドキドキでした。かなり完成されたホラーだと思います。 [気になる点] ∀・)レビューでも…
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