第一話:ポンコツ神様との出会いと異世界転移
文章の練習で書いてみたものなので色々拙いですが、書く練習がてらのんびり書き続けられればいいなと思っています。
「あれ?ここは・・・」
俺は宙に浮いているかのような不思議な空間で目を覚ました。
「おぉ!目が醒めたか!」
目の前には典型的な白いローブに白髪、後頭部まで禿げ上がった神様スタイルの爺さんが立っていた。
「お主は転生者に選ばれたのじゃ!」
そういえば突然眠気に襲われたなとぼんやりした頭で思い返す。
にしてもこの爺さんは何を言っているのか・・・。
「転生者ってどういうことだ?俺は死んだのか?」
「お主らの世界の言葉で言えば神隠しというやつじゃな。肉体ごとここに転送されてきておる。」
どういうことなのか詳しく話を聞こうと口を開こうとしたが、
「ともかく時間があまりないでな、細かい説明は向こうでするぞい!」
爺さんがそう言うと再び急激な眠気に襲われ、意識が遠のいていく。
「ううっ・・・。」
俺は再び軽い頭痛とともに目を醒ました。
「すまんの、詳しい説明をする時間がなくてのぉ。」
頭の中にさっきの爺さんの声が聞こえる。
「なぁ一体どういうことだ?」
俺が訝しんで頭の中に聞こえる声に問いかける。
「爺さん、あんた何者なんだ?」
「わしか?お主らの世界でいう神様というやつじゃな。」
自分に様つけるのか・・・。
「で、その神様が俺の前に現れて何をしようと言うんだ?死んでもいない人間を捕まえてあの世に送り込もうとでも言うのか?」
「まぁまぁ、そういきり立つでない。実はな本来元の世界ではお主の命は尽きておるはずじゃったのじゃが、死が確定した運命をすり抜けて生き延びてしまったのじゃよ。」
「運命をすり抜けるとかあるのか?」
「極稀にな。ところがじゃな本来の輪廻に沿って転生するはずの魂が残ると色々と不都合があってな、転生者として次に生まれるはずじゃった世界に転生させたのじゃ。」
「で、アラフォーの中年男を何もわからん世界に送り込んだというわけか?」
俺はあたりを見回すが、広がるのは見渡す限りの草原でいまいち状況はつかめない。
「簡単に言うとそういうことじゃが、ろくに説明もせずに送り込んでしまったわけじゃからいくつか特典をつけておいたぞい。」
なんとなくそんな気はしていたが異世界転生のつきもののチート能力があるようだ。
「お主につけた特典は通常の3倍のステータスじゃ!」
「3倍・・・?」
思っていたのよりあまりにも微妙な特典にしばし声が詰まる。
「3倍か・・・3倍なぁ・・・」
倍率もそうだが通常の3倍の【通常】の基準が曖昧すぎていまいちすごいチートなのか微妙なのか判断に困ってしまう。
「そ、それだけじゃないぞい!言語翻訳と世界地図、それに解析もつけておいたからの!」
言語翻訳は言葉が通じないと色々と詰むのでありがたい。
「言語翻訳はわかったが、世界地図と解析っていうのはなんだ?」
「世界地図はの、自動マッピングしてくれるスキルじゃ。購入した地図などの情報も取り込めるの。解析はスキルやらアイテムの詳細を調べられるスキルじゃの。どちらもレベルによって得られる情報は変わるが便利なスキルには違いないのぉ。」
まぁ便利スキルは有って困ることはないから詳しいことはおいおい確認するとしよう。
問題は通常の3倍のステータスだが、そもそもステータスって自分で確認できるのか?
もともとの世界にはそんなゲームみたいなステータスを可視化する方法はなかったが、ゲーム的なステータス見られるということか?
「なぁ爺さん。ステータスはどうやって確認するんだ?」
「ステータスかえ?ステータスオープンと念じれば見られるぞい。いい忘れておったがお主のステータスは前世で最も高かった時のステータスを元にしてあるからの。」
それってすでに通常ではないのでは・・・。
ともかくステータスを確認してみることにした。
シシド・グレン(宍戸紅蓮)
LV1(☓3)
HP:1053/1053(☓3)
MP:560/560(☓3)
STR:89(☓3)
VIT:78(☓3)
AGI:60(☓3)
DEX:73(☓3)
MEN:87(☓3)
INT:69(☓3)
WIT:65(☓3)
【スキル】
一般:
言語翻訳 LV1(☓3)
世界地図 LV1(☓3)
解析 LV1(☓3)
神との対話 LV1(☓3)
工作 LV9(☓3)
細工 LV8(☓3)
戦闘スキル:
上級格闘 LV4(☓3)
射撃 LV6(☓3)
投擲 LV10(☓3)
剣術 LV2(☓3)
槍術 LV6(☓3)
棍術 LV5(☓3)
【アーツ】(武技)
なし
いかにもRPGに出てきそうなステータスが表示されたが、この素のステータスが果たしてこの世界のどの程度の数値なのかいまいちわからんな。
「ところでこの元々の、3倍になる前のステータスはこの世界の標準から見てどの程度のレベルなんだ?」
「ステータスにはだいたい成人の平均が50前後といったところじゃからお主のステータスは素の状態でも高いほうになるの。
あとアーツに関してじゃがすぐに開放されるじゃろう。
基本的には誰かから習うか、見て覚えるか、自分で編みだすかのどれかで開放されるのじゃが、お主の場合は前世の記憶があるからなんか技っぽいものを繰り出してみればなにか開放されるんじゃないかのぉ?」
スキルは最初から前世の経験を受け継いでいるのに技は開放・習得しないとだめなのは謎だが、とりあえず試してみることにする。
かと言ってすぐになにか思いつくわけでは無いので子供の頃からやっていた空手の基本でもやってみるかと正拳突きを繰り出してみる。
(アーツ:ストレートを開放しました!スキルレベルと前世の経験によりソニックストレートを習得しました!)
頭の中にアナウンスのようなものが響くというかみえるというか不思議な感覚だがアーツを習得したことを告げる。
正拳突きでアーツが習得できたということは、回し蹴りや投げ技でも開放・習得はされるのだろうということは容易に予想できる。
最低限のことは一応わかったということにしてこのまま草原で夜を明かす訳にも行かないのでまずは人里を目指さないとな。
「先立つものがなくては困るじゃろうから十分とは言えぬかもしれんがお金は用意しておいたぞい。腰の袋を確認してくれんかの?」
袋をあらためると金貨、銀貨、銅貨が10枚ずつ入っていた。
「ありがたいな。
でこれは前の世界のどのくらいの価値があるんだ?」
「概ね金貨一枚が1万円で銀貨、銅貨はそれぞれ10分の1と100分の1位じゃな。」
「ということは感覚的には11100円くらいということか。」
しばらく何もしないで暮らせるというわけでは無いが当座を凌ぐにはまぁ十分と言えなくもない額だな。
世界地図スキルでマップを開き最寄りの街を探すと、丘になっていて気づかなかったが今いるところから近くにそれなりの街があることがわかった。
距離にして5kmくらいだろうか、2時間も歩けば辿り着けそうなその街に向かった。
その街は【商業都市グランヴィル】と言う名のこのあたりの中核都市であるらしい。
周囲を石壁で守られた堅牢な造りで街としての規模の大きさを伺わせる佇まいである。
街に入るには身分証か通行税銀貨1枚を支払う必要があるということで町の入口で通行税を払う。
「ところで身分証はどこで作れますかね。田舎から出てきたのは初めてでして・・・」
通行税を払いがてら街の衛兵に尋ねる。
「身分証は各種ギルドに登録したら発行してもらえるが、おじさんはなにか手に職はあるのかい?なければ冒険者ギルドにとりあえず登録するのがいいだろうな。職業ギルドなら通行税以外にもメリットがあるんだが、それなりの実績やら技術がないと審査に通らない。その点冒険者ギルドは基本的に審査が緩いからな。
まぁ前科でもなければ問題ないよ。冒険者ギルドは門を入ってますぐ行った中央広場にあるから行ってみるといい。」
「ありがとう、助かります。」
衛兵の言う通りに通りを真っ直ぐ進むと中央に噴水のある広場に出る。ここには冒険者ギルドだけでなく、各種ギルドも集まっているようで官庁街のような区域になっているようだ。
その中から冒険者ギルドを見つけ中に入った。
「冒険者登録をしたいんですが・・・。」
受付の女性に声をかける。
「新規の登録ですね。ではこちらの書類に記入してください。
☆印のついている箇所は必須ですが、それ以外の欄はわからなければ空欄でも構いません。」
用紙を確認してみると☆印のついている項目は、名前と年齢だけであとは任意ということらしい。
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名前:グレン
年齢:43
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「この歳で冒険者になるのは珍しいのかな?」
「いえ、街の衛兵を引退したとか、元騎士団だった方とかは割と多いですし、農閑期だけ冒険者をする人も結構いますね。」
ものすごくレアなケースと言うわけではないらしい。
「では冒険者ランクについて説明しますね。こちらを御覧ください。」
そう言って表のようなものを渡される。
それによると、
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【Fランク】
都市内での雑用依頼、隣接する森での採取依頼のみ受注可能。
戦闘を伴う依頼は受注不可。
【Eランク】
動物の素材、低級の魔物討伐まで受注可能。
登録時の戦闘評価で一定の基準であること。
【Dランク】
低級ダンジョン探索、護衛任務を受注可能。
【Cランク】
中級ダンジョン探索、中級の魔物討伐まで受注可能。
【Bランク】
上級ダンジョン探索、上級の魔物討伐。未踏地域の調査を受注可能。
【Aランク】
各種最上級依頼の受注可能。
ただし昇格にはギルド本部の審査・承認が必要。
【Sランク】
国が認定する最上位のランク。
特に昇格の明確な基準はなく、偉業を成し遂げた英雄のみが認定される最上位のランク。
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「実質Fランクは戦闘能力のない人のためのランクということか・・・。」
「そうですね。ですから冒険者の最低ランクはEと言う認識が一般的です。」
受付の女性はそう言って表に記された以外の補足を説明してくれる。
「戦闘評価は対象の登録者が何組か集まると行われるんですが、たまたま明日行われる予定がありますのでそちらに登録しておきますね。
明日の正午までにこちらにいらしてください。
模擬戦になるので武器などはこちらで用意したものを使いますので不要です。」
登録は銀貨2枚が必要ということで銀貨を支払う。
「ところでここらでお手軽な宿はありますか?」
「そうですね、このあたりは宿も多いのでどこもそう変わらないですが、この建物の裏手にある『金の斧亭』なんかは近いので良いんじゃないでしょうか?
この時期はどこも満室になることは殆ど無いですし。」
「ありがとう、行ってみるよ。」
ギルドを出て裏手に回ってみると1階が食堂兼酒場になった『金の斧亭』が有った。
「一部屋頼みたいのだが、空きはあるかな?」
扉を開けカウンターに立つ恰幅の良い女性に話しかける。
「何泊するんだい?部屋はまだ余裕があるから大丈夫だよ!」
威勢の良い返事が帰ってきた。
「そうだなとりあえず5泊お願いしたい。1泊いくらかな?」
「1泊銀貨4枚だから、5泊で金貨2枚だね。最低でも半額は前払いで頼むよ!
食事は別だけどうちのお客さんはちょっとだけ安くしてるからね!」
「わかった、ではそれで頼む。」
そう答えながら金貨を1枚渡す。
「あいよ!晩飯がまだなら食ってから上がりなよ、今日はだいぶ余っちまったからサービスしとくよ。」
「そういうことなら遠慮なくいただくとするよ。」
「おう!そうしておくれよ。」
そうして俺は夕食を摂ったあと部屋に通され明日の戦闘評価に備えて眠りについた。