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My own Sword  作者: ツツジ
本編
95/187

第95話 生き残っていた人々

七音視点へ

 

「おりゃぁっ!」



 掛け声で勢いをつけ、七音は剣を薙ぎ払う。

 左下から右上へ払った剣は、蝶が掛け合わされた魔物の胴体を袈裟懸けに斬り裂いた。青色の血を吹き出し倒れる身体。


 それを隠れ蓑に、後ろにいた魔物が口から何かを吐き出した。まっすぐに飛んできたそれは白い糸の束で、粘着質な音と共に剣の腹へと張り付く。

 強力な蜘蛛の糸のようだ。

 獲物を取り上げるべく、魔物が糸を引く。それに抵抗しつつ、剣の状態を確認する。

 べったりとついた糸は簡単には取れそうもない。視界を戻せば、蜘蛛ベースの魔物との間に二体、別の魔物がいる。


『七音! この糸やべぇ! 剥がれねぇ!』

「なら、逆に使っちゃう!」


 そう告げた瞬間、七音は大きく前へと飛び出した。同時に、剣を進行方向へと突き出す。

 均衡していた糸の力比べから一転、一気に緩む対抗の力。その反動に耐えられず、蜘蛛魔物は体勢を大きく崩した。


「今だぁぁぁ!」


 狙っていた状況に口角を上げ、七音は後方へ飛ぶ。その勢いも付け加えて糸を引っ張る。

 まるで魚を釣り上げる様に糸が引かれ、蜘蛛の魔物は踏ん張れずに宙に浮いた。

 それを見て、七音は笑みを深めて剣を素早く横に振った。空を切る音と共に、糸が真横へと逸れる。

 間にいた魔物二匹が避けられずに巻き込まれ、そのまま壁へと叩きつけられた。蜘蛛の魔物も同じだ。


 強力な粘着力が仇となり、糸と壁に挟まれた魔物二匹は動けなくなっている。蜘蛛の方も、運よく頬に糸が張り付いたようだ。

 利用された糸が壁になり、新しい糸を生成しても七音達に発射できないようだった。

 戦闘がひと段落着いた七音は、改めて剣に張り付いた糸を確認する。べちゃっとしていて、触りたくない。


「取れるの、これ?」

『取ってくれよ! バッグに何かない?』

「小型ナイフあるけど……逆にくっつきそう。あとは軽い食料と、発煙筒くらい」

『マジかー。じゃあ、一回適合解くか』

「それなら、この糸を壁につけとかないと……」


 今のまま糸が外れたら、拘束が緩む。言いながら、剣についた糸を壁にこすりつけた。

 粘着力の強い糸はあっという間に壁にくっつき、剣が取れなくなる。

 しっかりと確認してから少し下がると、剣が淡い光を放ち消え、代わりに七音の前に勇人が現れる。糸はしっかりとれており、壁につけた糸の端もそのままだ。


「おー取れた取れた!」

「よかった! 糸がとれなかったら、勇人君が壁に張り付いたままだったよ、きっと」

「リアル標本かよ!? そうなんなくてマジよかった……!」

「そうだね。後は……」


 言いづらそうに魔物へと視線を向ける。言いたいことがわかったのだろう。勇人も同じ方向を見て、真剣な顔つきで頷く。

 再び手を繋いで適合すると、七音は大きく息をつく。そして、魔物に近づき剣を振り払う。


 躊躇なく、首を一閃。


 綺麗に切断され、首が落下して身体が動かなくなる。それを三体分。

 一番奥にいた蜘蛛の魔物の首を刎ね、七音は三体に向かって黙祷する。

 元は人間だという話を聞いた今、七音達にできるのは安らかな死を与えるだけだった。あの三人組と同じように。

 小走りで亡骸を通り過ぎ、その奥へと向かう。一本道の角を曲がり、その奥の袋小路にひょこっと顔を出した。



「もう大丈夫ですよ!」

「そうか……悪ぃな、嬢ちゃん」

「これが任務ですからね!」



 帰ってきた反応に、なるべく笑顔で答える。袋小路を前に、数人の人がいる。七音が発見した、モデル達だ。

 二十代の男性が二人と、泣きじゃくる少年、彼らに指示を出していた三十代後半の渋い男性、計四名。流華と逸れた後に見つけてから、共に行動している。

 情報をもらいつつ、安全が確保されるまでは七音が魔物から守っているのだ。


「今なら魔物がいないですけど……動けそうですか?」

「そうだな……嬢ちゃんがくれた食いもんで、腹は何とかなったが……」

「ちょっとむずそうっす。体力的ではなく、精神的にっす」


 少し派手な風貌のモデルが答えながら、残りの二人を見る。中性的な魅力が溢れる男性の腕の中で、少年が嗚咽を上げて泣きじゃくっている。

 聞けば、少年は大人びて入るもののまだ小学生だという。それが命の危機に晒されては、冷静ではいられないだろう。

 最初の頃は暴れ叫んでいて必死で取り押さえていたとのことで、これでも落ち着いた方だという。

 この様子では、移動は無理だろう。七音は通路を警戒しつつ、モデル達に向き合うように座った。


「この先、どうしましょうか……」

「どうするもこうするも、なんか作戦とかないんすか?」

「…………あたしはそういうの担当外でして」

「はぐれてしまった友人という方が、作戦などを考える予定だったのですか?」


 中性的な男性の言葉に、大きく首を縦に振る。正直、自分と勇人が知恵を振り絞るより、流華やロビンに考えてもらった方が早くて的確なのだ。

 完全に頼る気でいた為、作戦を考える練習などは全くしていない。そのツケが来たとしか言いようがなかった。


「ううむ……流華と合流できれば……」

「難しいだろうな。だだっ広いくせに景色は変わんねぇ、おまけに地形も変わるとか卑怯だろ」

「ですが……段々と間隔があいているような気がします」

「言われてみればそんな気がするっす」

「だが、地形が変わんねぇからって、嬢ちゃんの連れにすぐ会えるとは限らん。向こうさんも歩きまくってんだろうしな」

「ですよねぇ」


 結局のところ、成す術がない。腕を組んで唸る七音に、困り顔のモデル達。その状況を変えたのは、音だった。




 カツンと石畳を歩く音。




 少年が小さな悲鳴を上げ、更に蹲る。それ以外の人は皆、通路の方へと目線を映す。

 足音は時節止まりながらも、大きくなっていく。それはこちらに近づいているというだと、七音は唾を飲んだ。様子を見る為、ゆっくりと通路の方へと移動する。


 あと数歩。そう思っていると、七音の耳に複数の反響音が届いた。

 複数人のグループがもう一つ、近づいてきている。その事実に、剣を握る力が増す。


 後から来た方は迷いがないのか、止まることなくむしろ足早にこちらに来ている。先のグループと合流するか、分かれるか。どちらにせよ、戦いは免れないようだ。

 何体の魔物と、同時に戦うことになるのだろうか。先程の四体が今のところ最大人数だ。恐らく、それを超える人数が来ていると直感している。



 自分が失敗すれば、後ろのモデル達が犠牲になる。負けられない。




『七音……踏ん張んぞ』

「そうだね……これ、ヒーローの見せ場っぽいね」

『だな! やるぞ!』

「うん!」


 互いに鼓舞し合い、タイミングを見計らう。二つのグループが同時に足を止めた瞬間、七音は今だと飛び出した。

 

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