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My own Sword  作者: ツツジ
本編
87/187

第87話 集合は勢いのままに

訓練できなかった不満<<待ち望んだ通知

 


 翌日。朝から勇人のテンションが最高潮に達していた。



 ニヨニヨと笑みを浮かべつつ、じっとしていられないのか止まらない。

 奇声を上げて走る、座ったかと思えば全身を器用に微振動している。

 あまりの奇行っぷりに授業が進まず、先生が養護教員を呼んで鎮静剤を打つまでに発展した。

 間違いなく、昨日の連絡が原因だろう。ずるずる引きずられて退場する勇人が、まるで出荷されていく家畜のように見えてきた。

 笑いそうになる頬を抑え、再開した授業に集中した。


 最後の授業が終え、午後一時五十分。七音は流華を見つめ、曖昧な笑みを浮かべていた。流華も七音を見据え、口の端をわずかに引きつらせている。

 入り口で立ち止まる二人に、注意する人は近くにはいない。この時間帯に人の出入りが多いのは校舎やカフェテリア、訓練場あたりだ。


 ここ、共通棟Bはその三か所から離れた位置に存在している。


 近くには庭園と図書館。静かな場を欲するのなら最適の場所だ。

 大きめの建物を見上げる。SEINによれば、すでに勇人が中にいるらしい。

 集合の通知だけであの暴走だ。話が始まればそうなることか。それを考えると、二の足を踏んでしまう。流華も同様だ。


「流華? 双葉ちゃん? 何してるんさー?」

「ロビン兄さん……」

「ほら、早く行かんといけないさね」


 そう言って笑いかけるロビンが眩しい。どうやら、今日の勇人について知らないようだ。噂にならないよう、学園側が配慮したのかもしれない。

 善意の行動に胸が痛む。流華と目配せし、ロビンと共に建物に入った。そのまま指定された大部屋まで歩き、扉を開く。




 真正面に、縛り付けられた椅子ごと揺れている勇人がいた。




 流華が無言で扉を閉める。勢いあまってバンっと大きい音が出た。


「七音、何か見えた?」

「………………見テナイヨ」

「あー……状況は理解したさー。辛いけど、受け入れる必要があるさね」

「ロビン兄さんは知らないからそう言える」

「でも、そろそろ青龍先生かシルヴァン先生が来るさね。拒否できんよ?」

「というか……もういたよ、先生」


 七音の一言に、流華とロビンが目を丸くする。勇人しか視界に入ってなかったのだろう。

 だが、七音は見た。部屋の中、勇人から離れた所に、シルヴァンが座っていた。組んだ足が貧乏ゆすりしており、不快さを表していた。


 あの状態の勇人と同じ空間に二人。心の中でひっそりとシルヴァンに同情した。


 すでに犠牲者がいるという事で、流華が再び扉を開ける。少し躊躇したが、部屋に入った。七音とロビンも後に続く。


「七音ぇぇぇぇぇぇぇ! 遅いぞぉ! 早く! 早く! 部隊! 活動! 正義! ヒーロー! ジャアァスティィィス!」

「想像以上の興奮具合だね……」

「待ってた! 憧れ! 出動命令! イヤッフゥゥゥッ!」


 パートナーである七音を見て、更にテンションが上がったようだ。勇人が叫ぶ。叫ぶ。

 椅子の脚をガタンゴトンと体重移動で揺らしながら、叫ぶ。シルヴァンが耐え切れずに大きなため息をついた。


「何とかならんのか……?」

「私は無理。零君ならできそう」

「失礼します! 皆さん待ちましたか!?」

「タイミングばっちりさー」


 急に話が降られ、扉の前で首を傾げる零。

 可愛らしい仕草だが、片手でヴィンの首根っこを掴んでいる状態で台無しだ。当のヴィンは勇人とは真逆で、表情乏しく動かない。

 くろえ絡みだろうと思いながらも、一応零に聞いてみる。


「ヴィン君どうしたの?」

「本人曰く『くろえ様禁断症状』だそうですよ」

「ア、ハイ」


 どうにもできない事なので、返事が適当になってしまう。ヴィンを見ていたからか、比較的冷静な零が部屋を見渡し、現状を把握したようだ。

 その場にヴィンを置き、険しい顔でつかつかと勇人に近づく。その勢いをつけたかのような、強烈なチョップが勇人の頭に振り下ろされた。


「痛゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「荒ぶる気持ちは分かりますが、落ち着いてください! 皆さんの迷惑です! わかったら返事!」

「ひゃ、ひゃい…………」


 先程から一転。勇人はしおらしくなり、その場で項垂れた。流石は中学三年間を一緒に過ごしただけある。勇人とヴィンの扱いが上手い。


「……テレビの直し方と一緒」


 ぽつりと呟く流華に、思わず噴きそうになった。例えそのままだ。ロビンも同じ様に感じたようで、顔を背けて震えている。

 収集がつかないかと思われたが、シルヴァンが数回手を叩いてその場を鎮めた。

 真剣な顔つきでシルヴァンを見据える。一同の視線を受け、モノクルの位置を直して改めて告げる。


「『戦艦』達、『人形』達は出動中。桜小路は開発部の方に引き籠っている。つまり、この場にいるメンバーで今回は動いてもらう」

「『人形』?」

「くろえ様の事だぜベイベ! 神々より創造されたかのように整った美しい顔! きめ細かく白い柔肌! その細い御身で表情一つ変えずに魔物を屠る姿! 畏怖と敬意から部隊員たちからそう呼ばれているが俺としてはそこがくろえ様の良さであって虫けらの如く屠られるのはご褒美ですありがとうございますむしろ魔物そこ変われと」


 零のチョップがヴィンの頭上に落とされる。ヴィンは沈んだ。


特待生組と静葉、勉強の方は制度があるので戦闘優先になります。

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