第79話 衝撃と笑撃
重大な事実がポロポロ
「これは……?」
「小生達はまだ、魔族の顔を一人しか知らぬ。故に、似顔絵と特徴をそこに描いてくれ」
「え」
「わかったわ」
そう言い、紙に向き合うくろえ。璃久斗は一瞬変な声を出していたようだが、七音は気にしないことにした。
それよりも、話の内容の方が重要である。正直言って、眠い。昔から難しい話は苦手だったが、だからと言って勇人の二の舞にはなりたくない。必死に手の甲をひねりながら、話に集中する。
「情報部の目玉が飛び出すレベルの情報がポンポン出たな……響。ボイスレコーダーはきちんと作動しているか?」
「当たり前でしょ!? こんな大事な情報、研究部にも大打撃だよ!」
「研究部もか?」
シルヴァンの問いに、響は咳払いをして語り始める。
「そもそも、適合とは何か。魔物から身を守るために神が与えもうた、なんて宗教家が言っているけど、そんなのはこじつけにしかならない。
研究の結果、適合は性染色体の遺伝子に組み込まれたシステムということがわかっている。けど、このメカニズムが発見されたのは魔物から街を守ろうとした男女に起きた現象を調べた結果なんだ。
つまり、偶然適合した男女を調べたら発見できたということだ」
「……あれ? 変、ですね。その前から遺伝子の研究はありましたよね? 見つからなかったんですか?」
「見つからなかった。今より数段劣るとはいえ、見逃すとは思えない。それに、その遺伝子を持つ人はどんどん増えていく。だから変な宗教が沸いたんだけど……今の話を聞いて、ある結論を出すことができたよ」
ごくりと唾を飲み込む。何人かは予想がついたらしく、ハッとした顔をしている。予想がつかない七音は次の言葉を待った。間を置き、響ははっきりと宣言した。
「樫城君の身体から拡散されたという魔力。それに進行してきた魔物たちから、微量でも漂っていた魔力が出ていたはずだ。
それを空気中から人々が体内に取り込んだ結果、適合という遺伝子異常が発生した。それなら、辻褄が合うんだ!」
「えええ!?」
「マジで!?」
「っそだろ!?」
「ふぉわっ!?」
「……うん、素直な反応ありがとう」
驚きの結論に七音は声を上げた。しかし、他の人は見当がついていたようで、あまりにも反応が薄い。
同じリアクションをしたのは、勇人、ヴィン、武蔵の三人だけだ。響は少ししょぼんとしながら、きちんとした反応の四人に礼を言った。
ふと、クスクスと笑い声が聞こえる。見れば、くろえが愉快そうに笑みを浮かべていた。
「どうしたの、くろえー?」
「だってねぇ、七音……あいつら、自分たちが余裕こいていたら、反撃の手を挙げてしまったなんて……なんて愚かなのかしら。ねぇ璃久斗」
「あ、ああ……」
璃久斗の意識はくろえの手元に集中し、生返事だった。だが、余程嬉しいのか、くろえは気づかない。そこで、王夢が璃久斗の視線に気づき、くろえに声をかける。
「描けたのか? なら、見せてほしい」
「ええ、いいわよ」
笑顔のままくろえは了承し、スケッチブックを先程の様に回して王夢に届ける。
樹が準備をしていたらしく、円卓の中央にプロジェクターを出現させ、受け取ったスケッチブックの中身を投影した。
途端、会議室が凍り付いた。
あまりにも、酷い。見たことがあるリヴィアとフェーゴすらもわからない絵だ。
そもそもの輪郭、目、鼻、口といったものすらズレていて、幼稚園児の落書き以下。璃久斗の視線が下を向いているのも納得だった。
「どう?」
にこやかに問いかけてくるくろえの笑顔の眩しさに、何も言えない。どうしようかと考え、ふと七音はあることに気付いた。
「あ、ろ、六人! くろえ以外に六人いるんだね!」
「そそそうですね! ね、流華ちゃん!」
「うん……」
「そうよ。言い忘れていたかしら?」
「リヴィアが七人目、だけはサラッと言ってたぞ」
「あら、そう?」
一枚につき恐らく一人。それを六枚提示していることから、絵柄に触れずに話を進めることができた。くろえに見えないよう、璃久斗から親指を立てて称賛される。
「正直、ルフェル、リヴィア、フェーゴ以外の三人が曖昧なのよね……」
「まぁ、大体一世紀ほど記憶飛んでるんね、しょうがないんさ」
少し落ち込むくろえに、ロビンがさらっとフォローを入れる。それを受け、くろえは持ち直した。その間に、教師陣が先の話題の為に二人で話し合っている。
改めて、皆に向き直る教師陣。
「六人……樫城を入れて七人。なら、七つの大罪が誰に当てはまるか、予想着くか?」
「全く。盗み聞きした通り、【嫉妬】がリヴィア、【原罪】が私以外はさっぱりよ」
「【原罪】が入るなら、一人足りないんじゃない~?」
「考えられる有力候補として、母様とやらに一つ残っているのだろう」
「ちょっと待て」
議論が順調に進む中、ふいに璃久斗が止めた。今まで聞き役に徹していた璃久斗の言葉に、皆の視線が集まる。
それを指で誘導しながら、璃久斗は肩をすくめながら告げた。
「そいつら、理解できねぇって面してんぞ?」
「目が点ってやつさね」
「あー……七つの大罪わからない人、挙手」
七音は躊躇なくはっきりと手を挙げた。周りを見れば、手を上げているのは先程のリアクションの四人である。親近感がわいてくる。
それに対し、シルヴァンと響は苦笑いをしながら、手を下ろすように指示した。
「うん、だと思ったよ」
「詳しい説明を今するとなると、時間がかかりそうだが……」
「あ、シルヴァン先生安心して~。今、樹が全力で描いてる~」
言われてみれば、先程から音がしている。紙に何かを描く音、それも素早い。
視線を向ければ、樹はスケッチブックに真剣に向き合っていた。左手が残像を作り出せる程、高速で動いている。そうして出来上がった絵を千切り、隣の一弘へと渡している。
「じゃあ、順番に映していくよ~」
そう言って、樹が先程使っていたプロジェクターに出来上がった絵を投影する。
絵と共に文章があり、一目でどういう内容なのかがわかるようになっていた。
ある意味画伯




