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My own Sword  作者: ツツジ
本編
71/187

第71話 マリューからくろえへ

遅れてしまい申し訳ございません!orz

 

 声が聞こえる。騒がしい。でも、不思議と穏やかさを感じる。

 水底から浮かび上がる様に、ゆっくりとマリューの意識がはっきりしていく。



 ぴったりと閉じた重い瞼を開く。まず感じるのは、圧倒的な眩しさ。どうやら仰向きで寝ており、目に光が直撃したようだ。

 身体を背けようとしたが、うまく身体が動かない。仕方なく目を細め、光に慣れるのを待った。

 慣れるにつれ、景色がはっきりとしてくる。あと少しというところで、不意に大きな影がぬっと現れた。




「あっぷっぷー!」




 クリアな視界に映ったのは、見知らぬ男の変顔。それも至近距離で、視界がほぼ埋め尽くされた。


 何をしているんだ、この男は。


 いろいろ考えるよりも先に呆れが浮かび、マリューはつい真顔になってしまった。

 如実に表れた無関心に男は見てわかるほど動揺した。


「え、くろえちゃん!? 悟りを開いたような顔してどうしたんだい?」

「馬鹿ねぇ、あなたの顔に驚いてるのよ」

「嘘!?」

「全く……察しの悪いパパでちゅね~」


 声と共に、優しい笑顔をした女が覗き込んできた。男よりは若干小柄だが、マリューの視点からは同じく巨大な人物に見える。人間界の書物で読んだ、巨人というものだろうか。

 しかし、ここはどこだろう。先程から馴れ馴れしくしてくる男女とくろえという名前。

 様々な疑問が生まれ、頭を巡る。すると、女がマリューに手を伸ばしたと思うと、背中に回して軽々と体を抱き上げてきた。

 驚くマリューをよそに、女はそのまま自分の胸に抱きかかえ、軽く揺さぶる。

 そこで自分の体を改めて確認することができた。今までとは違う小さな手足、体。自分の体全てが縮んでいる。


「ほーらくろえちゃん。大丈夫よ~」


 女が体を揺らし、マリューをあやす。これは、母親が赤ん坊に行う仕草だった。

 一つの疑惑、というより確信がよぎる。唯一自由に動く視線をきょろきょろとさせれば、しょぼんとした顔の男の横に大きな姿見があった。

 あの前に立たなければ。そう思って話しかけようとしたが、実際に発せられたのはただの母音だった。

 言葉も出なくなっている。ならばと小さな腕をその方向へ必死に伸ばした。


「くろえちゃ~ん! パパがいいんだね~!!」

「はいはい。くろえちゃんは鏡が気になってるみたいよ。女の子だもんね~」


 女の方が意図を察してくれたらしく、手を広げた男を横に押し退け、鏡の前へと立つ。


 映し出されたのは、二十代後半と思わしき優しそうな女とそれに抱かれた乳児だった。

 ふわりとした紫髪。マリューの動きに合わせて乳児も動く。もはや、間違いなかった。



 人間、それも乳児としてマリューは生き返った。



 この場合、生まれ変わったというべきなのだろうか。どちらにしても、マリューは生きている。同時に、周りの状況は一変に理解できた。



 くろえ、というのが今の名前。この二人は自分の両親に当たる人物なのだろう。



 それにしても、赤ん坊の体というのはなんとも不便だ。

 喋れなければうまく動けない。だが、ここから徐々にそういう事ができるようになっていく。

 成長、というものだ。魔族は生まれた時から同じ姿だった為、成長というものが楽しみで仕方ない。


「あら、くろえちゃん、にっこり笑顔!」

「か~わいいな~」


 デレデレとした父の笑顔も、もはや嬉しいものだ。これから何があるのだろうか。

 マリュー、否、くろえは満面の笑みを両親へと向けながら考えるのだった。





 光陰矢の如しという言葉が、この世界にはあるらしい。その言葉通り、時間が過ぎるのは早かった。

 最初は母音しか出せなかった口も徐々に単語が話せるようになり、徐々に文章が話せるようになった。頭では伝えたいことが浮かんでいる分、少しじれったかったが、それも成長の一種だと心が弾んだ。

 さすがにトイレトレーニングはいの一番に終わらせたが、両親はいい子だと褒めてくれた。


 時たま、近くに住むという祖父母が遊びに来てくれた。二人とも、両親と同様に可愛がってくれた。

 だが、その可愛がりにも一線が引かれていることを、くろえが気づかないはずがなかった。まだ幼いくろえがわからないと思って隠さずに話す内容。


「本当に大丈夫なのか?」

「この子、ちゃんと成長できているの?」 


 孫に対する心配というよりは、恐怖からくる心配に近いニュアンスだった。その度に父が二人を諫め、母がうまく話題を逸らす。


 何かある。そうとわかれば、行動するだけだ。


 魔族だった頃は人間の情報手段は主に書籍だったが、それからかなりの月日が経っているようだ。人間の進化の賜物、パソコンというもので簡単に調べることができるらしい。

 父が使っているとことを見て覚え、実際に使ったのはくろえが五歳の時だった。

 祖父母の話から、出生にかかわる何かだと判断はついている。そこで産まれた年を検索してみれば、見出しこそは違うものの同じ大きな事件ばかりヒットした。

 よほど興味深い事件だったらしく、様々な出版社によるゴシップ記事も多い。一つ一つ中身を確認して、内容を整理する。浮かび上がる事実に、みるみる顔色を変わっていく。


 祖父母の態度にも納得がいくものだった。



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