第63話 議会の本題
今回短いです
「…………い、以上だ畜生! あ゛ー! あ゛ぁー!」
「刺殺撲殺圧殺焼殺、轢殺呪殺銃殺絞殺、薬殺毒殺爆殺惨殺」
「王夢も落ち着いて~気持ちはわかるけど」
武蔵は頑張った。
懸命に説明をしていたが、途中から言いづらそうに言葉が詰まることが多くなった。キスの辺りは流石に無理だったようで、一弘が代弁していた。
その交代が納得できる内容だ。
話しながら気持ちがぶり返ったのか、悔しさと恥ずかしさがごちゃ混ぜになって顔を真っ赤に叫ぶ武蔵。真顔で他殺の種類を読み上げ始めた王夢。間延びの癖も抜け、全力で王夢に同意する一弘。呆れたように頭を振る樹。
これが所謂カオスな状況なのだと、七音は改めて感じていた。
考えてみれば、七音と流華が駆けつけるまで機動力のある武蔵が来なかったことがおかしい。その答えが今の話という事だ。
フェーゴが最後に武蔵の二つ名を出したことにも、納得がいった。だが、この状況下で勝手に頼まれた伝言を言う気にはならない。火に油どころではなくなる。
気の所為ではなく、幼馴染三人の背後に夜叉般若が見える。空気を変えたいと目だけ動かせば、同じ動きをする勇人とヴィンの二人と視線がかち合う。
互いに目で空気を変える役を押し付け合う。そんな三人の隠れた押し付け合いなど知らず、零が口火を切った
「先程のお話、平衡感覚を乱されて思わず適合が解けたという事ですか?」
「そうだよ~。その状態でも、武蔵のセカンドキス以上を狙って動く王夢を止めたの褒めてよ~」
「何とか初ディープは小生のものだ!」
「…………」
「何を言うか樹! 舌を千切られたのだからあれはノーカウントになる!」
「死ね!」
誇らしげな王夢の顔に、容赦なく武蔵の拳がめり込む。
勢いあまってそのまま椅子ごと後ろに倒れたが、誰も手を差し伸べなかった。
「平衡感覚の乱れか……もしかして……」
「何か気づいたのか?」
響の呟きを、シルヴァンは聞き逃さなかった。響は恐らくと前置きをしてから意見を述べた。
「平衡感覚の乱れって、要は酷い眩暈ってことだろう? なら、音波だったら目にも見えず、眩暈を引き起こせるなと思ったんだ」
「音波か……確かに、その節はありそうだな」
「小生も同じ意見だ。そうでなければ、小生が武蔵から離れる事なぞありはせん」
椅子に座り直し、きっぱりと言い放つ王夢。顔にできた赤みと多い一言が若干雰囲気を壊しているが、緊張感を持たせるには十分だ。
「うーん。すごく納得できるのが少し悔しいな」
「意味が分からん」
「もういいんじゃないですか? この話題の結末は不明ですし、何よりも七音に難しい話は不要です。ええ、七音のぽかん顔はレアですが、他の人に見せたくないです正直」
「きもい」
マサルの言葉に反射的に言葉が出る。だが、この場で音波などの話をされても意味が分からないのは事実だ。難しい話は眠くなってしまう。
ツッコミにより我に返った七音が円卓を見渡せば、何人かが分からないと表情にありありと浮かべている。
武蔵、勇人、ヴィンの三人だ。
教師陣もそれを見たのだろう。小さく頷き合い、ちらりと視線を一人に向けた。
くろえだ。視線に気が付いたくろえは、微笑みながら応える。
「……私の番ね」
そう言い、途中でヴィンに貢がれた紅茶に口をつけて少し飲む。唇と喉を潤し、こちらに微笑むくろえは至極優雅だった。
「何から話せばいいかしら……そう、まずは簡単な説明から始めましょうか」
「説明……」
「フェーゴ、リヴィア。二人は『魔族』と呼ばれる、魔物の上位種よ」
「魔物の上位……」
「ええ。弱肉強食の世界で魔物を統率し、頭脳を使って進軍させているわ。自身の一部で魔物の能力を上昇させる存在……最近の技術ってすごいのね。その通りよ。正確には『魔族』の身体に流れる『魔液』によるものね」
「……何で、そう言い切れるんだ……?」
疑いの眼差しで武蔵が問いかける。その質問は想定内だったのだろう。顔色も変えず、くろえは言い放った。
「何故知っているか? 簡単なことよ。私は『元魔族』だから」
その場の全員が息をのみ、動揺を表す。変わりがないのは、くろえと璃久斗だけだった。
「昔話をしましょう。とても、とても昔の話よ……」
次回からくろえの謎が明かされます。
同時に、物語の核心に迫っていきます。




