第59話 勧誘
議題にやっと入れそう
先に釘を刺しておかないと、中学時代より悲惨になる。七音はキッとマサルを睨んだ。
「おにい! 会いに来る時は用事がある時だけにしてね!」
「何で!? せっかく、七音と会える距離に住むことになったのに……!」
「会いに来るなとは言わない七音、優しい」
「分かってるね、君」
「流華!」
親指を立て合うマサルと流華。この二人も合わせてはいけない組み合わせだったのかと、後悔しても遅い。
脱線しつつも、何とか毎日会いに来るという事態は避けられた。代わりに、週一回は一緒にお茶をする事に。理屈と駄々をこねるマサルとの妥協案だ。
満面の笑顔のマサルとは裏腹に、七音は小さくため息をついた。
毎日ではない分、大丈夫だと自分に言い聞かせる。
処遇の決まったヴィンとマサルが円卓に着く。
くろえの隣に座ろうとしたヴィンを勇人と零が間に無理矢理座らせ、七音の隣に座ろうとしたマサルを教師という理由でシルヴァンと響の間に無理矢理座らせる。
やっと話に入れる状況になり、新しいモノクルをつけたシルヴァンが改めて挨拶を始めた。
「…………急遽二人増えたが、話を始めよう。まず、本題についてだが……」
チラリとシルヴァンがくろえを見る。心なしか、怯えが含まれている。それに気づいているのか無視しているのか、くろえはいつも通りの態度で答えた。
「最後にさせてもらうわ。そうでないと皆、まともに話ができなくなるわよ?」
「そーだな。そんくらい、衝撃的な話になんぞ」
くろえの言葉に、璃久斗が補足を入れる。軽い言い方でも、本気だと言わんばかりに表情は硬い。一同が息を飲む中、再びシルヴァンが口火を切る。
「わかった。では、事件の流れを振り変えりつつ、各々の行動を話してもらうか」
「シルヴァン、シルヴァン」
「……袖を引っ張るな。何だ」
「例の件、先に言ってもいい?」
「……好きにしろ」
その一言を告げ、シルヴァンは資料から目を放し、背もたれに身体を預ける。すでに、響の案を肯定しているようだ。
主導権を譲ってもらった響が、一人の生徒をじっと見据える。
「桜小路さん。勧誘が二か所から来ている」
「え、私ですか?」
「すごーい!」
「「すげー!」」
七音と勇人、ヴィンの口から驚嘆の混じった褒め言葉が出た。
勧誘はその名の通り、後衛部隊から所属の誘いである。卒業後、適合相手が見つからなかった、もしくは適合率が著しくなかった生徒は、後方部隊へ就職することが多い。
その時、どこに所属したいかは個人の自由だ。その前に、才能を見出した生徒を手元に置きたいが為、声をかけることがあるという。
滅多にない例だ。それも二か所。
驚く七音達をよそに、静葉は真剣な表情で考え始める。
「二か所、ですか……確かに、開発部からはお誘いを受けていましたけど……」
「そうだね、一か所は開発部からだ。【ヒートワイヤー君】だったよね? あれが評価されたようだ。最も、それがなくとも開発部は勧誘する気満々だったようだね」
「ええ…………この島に来てからも、度々お手伝いをしていまして、その度に誘われていました。あの日も丁度、お手伝いに行かせていただいた時でしたね」
襲撃がある前、用事があると静葉は言って別れた。それが開発部、つまりは発明工場だったのだろう。
少し照れた様子で答える静葉を見つめつつ、七音は一人納得していた。
当の本人は、もう一つの方に覚えがないようで首を傾げている。それを見て、響は小さく笑う。
「多分、見当はつかないと思うよ」
「なら、どこからですか?」
「司令部」
「「マジで!?」」
先程と同じように三人の声が重なった。だが、今度は七音達だけでなく、傍観していた他の皆も驚愕を露わにしている。
驚いていないのは、シルヴァンと発言者である響だけだ。
司令部は他の部隊と違う。後方部隊の中心であり、一つ一つの指示が他の部隊の命を握る。
特に、戦闘部隊の行き先。采配ミスで、戦闘部隊が大被害を負うことさえもある。その為、司令部だけは歴戦の教員達から選出される。
司令部に在学中の生徒が抜擢されるなど、今までにないことだ。目を丸くする静葉に言い聞かせるよう、ゆっくりと響は続きを話す。
「これも、今回の事が評価されたようだ。その場にいた司令部の人間を虜にするカリスマ性、彼らからの情報を元に導き出した最適な指示。とても素晴らしいと、理事長らが褒めていたよ」
「えっと、その…………あ、ありがとうございます」
静葉は表立たないぶん裏方が強い子




