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My own Sword  作者: ツツジ
本編
52/187

第52話 つぎはぎの再会

グロ注意!

 

 七音は脚に力を入れ、瞬発的に加速するとリヴィアと璃久斗の間に入り込んだ。


 勢いのついた重い拳を、受け止める力など七音にはない。三人纏めて潰される。

 直感でそう感じ取った七音は、剣の刀身を利用して拳の軌道を変えた。璃久斗の顔スレスレに翳めた拳は地面に大きな衝撃を与え、その部分を凹ませる。

 その隙に、七音は無防備な胴体へと剣を振るう。

 寸前で気づいたリヴィアは後ろへ飛び下がったが、少し遅かった。胸部の服が斜めに切り裂かれ、その下の皮膚についた薄い線がジワリと血をにじませる。


 突然の乱入者に、リヴィアは苛立ちで顔を歪める。ボロボロながらも起き上がる璃久斗とリヴィアに掴まれたままのくろえも、驚愕の顔で七海を見た。

 三人のそれぞれの目線を受けながら、七海はリヴィアへと剣を向けて構えた。



「仁村七海、参上!」

『俺もいるぜ!』



 自信に満ちた表情で名乗る七音がよほど気に障ったのか、リヴィアは盛大な舌打ちをした。


「うざっ……見るからに弱そうだし、そいつぶっ殺すまでこいつとでも戦ってろよ」


 そう言うと、リヴィアは小声でぶつぶつと呟きながら右手で図形を描く。

 空中に描かれたそれは靄がかった黒い線として残り、大きな円の中に線や丸を組み合わせた絵柄が浮かび上がった。



 魔物が出てくる魔法陣だ。


 それは七海達とリヴィアの間の地面にくっついたと思うと、眩く光を放ち、何かが徐々に出現してくる。


「魔物……!」

「へへーん! 何を出そうとも、今なら私、何にでも勝てるよ!」

『何でも斬ってやるぜ!』


 構える璃久斗と違い、七音は自信たっぷりに剣を構える。勇人も同様だった。






 そうして出現した魔物を見て、七音は凍りついた。






 乗用車ほどの大きさのそれは、一目でわかる異常を持っていた。


 茶色の胴体に、鋭い爪を備えた四つ足、鰐のような太い尾。様々な動物のパーツを寄せ集めたそれは、繋ぎ目に痛々しい黒い糸の縫い跡を見せつけている。

 無理矢理つなぎ合わされた生命体は、不完全さが不気味な恐怖となって七音達を襲う。だが、何よりも目を見張ったのは同様に縫い合わされた首だ。




 根元から三又に分かれ、細長い首の先にある頭。人間だ。それも、七音達がよく知る人物である。


『チョォーキモォーイ』

『フタバ、ウザッ』

『アリエナ~イ』




 三つの首が各々話す。話すというより、覚えている言葉を意味もなく発しているという表現が正しい。

 未だに嗅ぎ慣れない、甘ったるい香水の匂いが、鼻につく。


「う、そ…………」


 剣を持つ手が震える。食道を駆け上りそうな内容物を必死に抑え、魔物を見据える。






 好日花、月姫、愛和の三人の頭を持つ魔物が、六つの虚ろな瞳が七音を見ていた。






「アハハハハハッ! 何その顔! おっもしろーい!」

「リヴィア……貴方…………!」

「ここに着いたときに一番突っかかってきて、生意気だったから合体してみたんだ~☆ たっのしかったよ~!」

「そんな力っ、魔族にあるわけ」

「ボク達だって、ただ従えてるだけじゃないんだよ? 人間を玩具にするなんてすっごく簡単なんだぁ!」


 変に目立っていた三人だ。くろえも気づいたようで、愉快そうに笑うリヴィアを睨んだ。

 ぶわりと、七海の肌に鳥肌が立つ。好きになれなかったとはいえ、数か月は顔を合わしていた相手だ。それが、グロテスクな姿で目の前にいる。

 さーっと顔を青ざめ、先ほどまでの自信はあっという間に飛散した。

 一歩、魔物が前へと出る。同時に一歩、七音が後ろへと下がった。進む、下がる。前進、後進。二人の距離は縮まらない。

 知能がほぼない魔物が、痺れを切らすのは当然だった。


『ウッザ!』

『キッモ!』

『シネッ!』

「ああああああああああ!?」


 魔物が奇声を上げて突進してくる。同時に七音も悲鳴を上げた。動いて、戦わなければならない。そう思う意志とは反対に、身体が動かない。

 長い首を鞭のようにしならせ、大きく振りかざした。咄嗟に剣で受け止めようとしたが、力不足だった。そのまま、剣越しに薙ぎ払われる。


『七音! 大丈夫か!?』

「だい、じょうぶ、だけど…………」


 ぶつけた個所が痛む。だが、それ以上に精神的に辛い。魔物は七音を集中的に狙うようになっているのか、ぐるりと方向を変えてこちらに近づいてくる。

 剣を構える気力がなく、魔物に背を向ける形で距離を取り始める七音。青ざめている七音の気持ちを察したのだろう、勇人が発破をかける。


『早くしないと、樫城たちが危ないんだぞ!?』


 勇人と言葉で、七音は横目でくろえたちを確認する。勇人の言うとおりだった。リヴィアがくろえを掴んだまま攻撃をしかけ、それを璃久斗がぎりぎりで躱している。

 璃久斗の運動神経がいいのだろう。だが、くろえがいなければ戦う術はない。防戦一方で、このままでは七音が乱入する前の状況がすぐに訪れてしまうだろう。


「そうだけど、そうだけどっ!」

『わかってんなら行くぞ!』

「そう言われても、さっきまで同級生だった魔物を倒す気になれないよ! 何か、方法はないの!?」

『オレだって嫌だ! でも倒さないと、被害がさらに出る! それにあの姿、あいつらが喜んでるとでも思うのか!?』


 勇人の言葉に、七音は振り返った。掠れた声で、生前の口癖をまねて、更にはつぎはぎだらけの異形な姿。

 本人達の意識があるとしたら、望むのは解放なのだろうか。泣きそうになり唇を噛んで耐えると、忘れていたイヤホンから静葉が話しかける。


『七海ちゃん、今そっちに援軍行きましたから!』

「えん、ぐん!?」

『3、2、1……天井ハッチオープン!』

 

船からのフラグはこの為にありました(真顔)

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