第49話 司令室
ちょっと短いです
「は……?」
七音の口から出たのは、あまりにもマヌケな声。
それに気づく様子は本人にはなく、ただただ大きな液晶を眺めている。それは、隣の勇人や零も一緒だった。
対称的に、目の前に立つ男が歓喜の声を上げる。
四十を超えた男性で、突き出た腹と同じくらい位のプライドがある教員で主任だと零の話だ。
その部屋の中でも地位が高いらしく、液晶の前に座って様々なキーがあるパネルを操作する数人の教員にふんぞり返って指示出ししていた。
くろえとリヴィアが姿を消してから、事態を知った教員達がカフェテリアへと駆けつけてきた。現場保存、緊急避難、様々な指示を出しながら動く教員の中に、響を見つけた。
すぐさま七音は駆け寄り、大まかな説明とくろえへの心配をぶつけた。その姿に思う所があったのだろう。響は同僚に声をかけた後、七音達を連れ出した。
そのまま着いて行った場所は、情報棟。図書館や過去の魔物データの管理室があるこの場所で、響は迷うことなく一番奥、電子ロックがかけられた部屋へと向かった。
教員証を使って開けたその部屋は、SFのように壁一面に張り巡らされた液晶に映るいろんな場所の映像、その前でパネルを忙しなく操作する教員がいた。
緊急時に指示を出す、司令室だという。
近くの同僚に七音達の事を託し、響は再び部屋を出て行った。
ヒーローの秘密基地みたいだと勇人が呟いた以外は、何も話さなかった。怒鳴り声が飛び交うここも戦場だ。だから、見ているだけだった。
だというのに、全ての液晶の向こうで戦っていたくろえの姿は、一瞬で白煙に包まれて何も見えなくなった。
天井を覆い尽くすように並んだ銃身は未だに動いており、火花を散らせながら弾を撃ち続けている。死角などなかった。
「第一陣、そろそろ弾切れです!」
「第二陣の準備をしろ!」
「や……やめてぇ!!」
無慈悲な声に我に返った七音が悲鳴を上げ、目の前の主任の腕を掴む。
明らかに面倒くさそうだと顔を歪めた主任が、無理矢理七音を振り払う。
「おい、邪魔をするな」
「くろえが! くろえがいるんですよ!? 攻撃しないで!!」
悲痛な叫び。だが、主任は呆れた様子で予想外の事を言い放った。
「はぁ? キミ、化け物に情でもあるのか?」
七音の表情が凍る。傍で聞いていた二人も同様だった。その様子に肩をすくめて教員は続ける。
「見ていたならわかるだろ?あの身体能力、会話。あそこにいるのは化け物同士で、醜い身内争いの真っただ中。なら、絶好の攻撃チャンスじゃないか」
「身内争い!? 樫城があの化け物と本気で戦ってるのは、そっちこそ見てわかっただろ!?」
「馬鹿馬鹿しい。特待生のフリして、情報を盗んだんだろ。だから、監視カメラがあることを知って、上手く話を持った。思えば、一部隊全滅させるわ、学園に魔物が出てくるわ……おかしなことだらけだ。大方、こいつの手引きで、この学園を内から壊すつもりだったんだろうが、そうは問屋が卸さない」
「そんなわけないですよ! 現に今、自分達を守る為に一人で戦ってるんですよ!?」
「演技だろ、えーんーぎ。キミ達は若いから騙されたんだろうが、私の目は誤魔化せない」
この男は何を言っているのだろう。
七音は一番近くで聞いているはずなのに、主任の言葉が耳を通らない。どこか遠くの話し声がたまたま聞こえてしまった。その程度しか聞こえない。
魔物を化け物呼ばわりし、隠す気もない見下した態度。時たま、魔物との戦いの記録にこういう人物はいたという。
人間至上主義。人間が一番偉いのだから、魔物は倒されて当然。中等部進学者の意識が更に悪化した、質の悪い人間だ。
思考停止した七海の代わりに勇人と零が男に食らいつく中、液晶を監視していた教員達の間にざわめきが起きた。
「大変です! 画面を……!」
次回、記念すべき50話目でついに!




