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My own Sword  作者: ツツジ
本編
44/187

第44話 珍獣扱い

本人達は必死でも周りはそうでは無い



 SEINで流れた噂では、アレクが少し前から訓練場の三階にいるらしい。会いたくない七音と勇人はカフェテリアへの移動を決定した。

 特に行動を決めていなかった零も着いてくるという事で、三人でカフェテリアの適当なテーブルに腰掛ける。買った飲み物と軽食を口に運びつつ、他愛のない話が始まる。




「だーかーら! 『芸術戦隊ツクルンジャー』は確かに名作だが! それ以上に神がかってるのは『仮面レーサー 深淵』なんだよ!」

「嘘だぁ! 一話だけ見た事あるけど、ちっちゃい女の子の腕や足がうねうねになって皆に追われて、怪人倒したけど治らなくて、でも怪人の成分で薬できるってわかった時には女の子が海に消えちゃったじゃん! 怖くて悲しくて泣いた!!」

「なっ、んっ、でっ! 一番のトラウマ鬱回だけ見てんの!? 他の話見ろよ!?」

「リアルタイムで見てた私に言ってよぉ!」




 白熱していく話し合いという名のヒーロー談義。


 零が悟った目で淡々とお菓子を摘まむのも気にならないほど、七音と勇人は話にのめり込んでいた。

 周囲の視線にも気づかず、『仮面レーサー 深淵』の良さを教えようとする勇人に、『芸術戦隊ツクルンジャー』派の七音が拒否をする。終わりの見えないヒーロー談義は、数分後に二人の息切れという引き分けで終わった。


「くそっ……まさか、オレがここまで語ってもダメとは……!」

「その自信はどこから来ているんですか?」

「……はっ! まさか、このズレが適合できない原因……!?」

「それはあり得ませんよ。あと、周りと声量の調整をお願いします」


 熱くなった二人の言葉に、零の冷たいツッコミが入る。後半の文章に首を傾げながら辺りを見渡せば、間抜けな声が口を抜けた。


 いつの間にか、七音達のいるテーブルを中心に、半径何メートルかの空白ができている。中にあるテーブルと椅子には、座った時には他の生徒がいたはずだ。

 一定距離を空け、他の生徒達が何人もこちらをじっと見ていた。

 面白いと笑っている人達と目が合ったが、さっと顔を背けられた。


 見世物扱いだと、気づいた七音は顔から火が出る。


 動物園や水族館の動物の気持ちが分かった気がした。対して、首を傾ける角度が深まっている勇人は、わかっていないようだ。


「ん~? よしっ、次は『ロリピュア』シリーズ行くか!」

「勇人君ストップ、いったん落ち着こう」

「何で?」

「ちょっと疲れちゃった、ね?」

「疲れる?」

「勇人君、そんな猫が茫然としたような顔をしてもダメです。七音さんは普通の女子ですから、ヒーローについてなら何日も語れる勇人君と同じにしてはいけません」

「マジかー」

「そもそも、特撮について数十分も語れる女子は少数派ですからね?」

「最近は増えてるっていうけどな~」


 さすが、長い付き合いの零だ。勇人が最も納得する言葉を選び、見事に成功させた。休憩を得てほっとした七音は、買ってきていた飲み物に手を伸ばす。

 まだ冷たい液体を嚥下しながら、これからの事をぼんやりと思い浮かべる。

 話を続けるか、話題をかけるか、それ以外に何かあるか。

 どんどん広がっていく選択肢に悩んでいると、周りの雰囲気が変わったと感じた。




 ピリッと緊張したこの雰囲気は何度も覚えがある。入口の方を見れば予想通りだ。勝手に避けていく人の波を、悠々と歩くくろえと璃久斗。

 くろえがトレーを持ち、そこにケーキ一つとカップが二つ乗っている。代わりに鞄を璃久斗が持っているようで、シンプルな鞄と女性らしいデザインの鞄の二つを肩にかけていた。




 その二人の少し後ろには、隠れているつもりの男子集団がいた。あまりにも堂々とした尾行で、もはや誰もが見ないフリをしている。

 七音も、見知ったヴィンの姿がなければじっくりと見たくない光景だ。

 ヴィンは璃久斗に負の感情丸出しの顔で睨みを利かせているが、後ろからだと意味はないだろう。特に教える必要がないので、七音はヴィンたちを意識の外に追い出すことにした。

 





 その時、七音に電流が走る。






「そうだ、くろえに聞こう!」

「え゛?」

「ちょっ」

「くろえぇぇぇぇぇ!」

「七音ぇぇぇぇぇ!?」


 名案だと言わんばかりに、七音はすぐさま席を立ってくろえの元へと駆けた。呼び止める悲鳴が聞こえるが、身体が急に止まるわけがない。

 近くに誰もいないテーブルを選び、トレーを置いたくろえが振り返る。そして、七音の姿を見て花がほころぶような笑みを浮かべた。


「あら、七音。わざわざ私に声をかけるなんて、何の用かしら?」

「適合のコツについて聞きたいの!」


 いつものように言葉に棘があるものの、お気に入りの七音相手だからか柔らかい印象を与える。それを見て天を仰ぐヴィン達とは違い、わかっていない七音は直球で質問を投げかけた。


 好奇に満ちた視線が集まる中、先に答えたのは璃久斗だった。


「相手変えりゃ速ーだろ」

「その通りだけど……なんというか、勇人君とならできるって気がするというか……」


 これまた直球の返答に、七音は口ごもりながらも意見を述べる。一般的に、適合ができない相手の方が多いのだ。数打てば当たる理論で試した方が早いのはわかっている。

 だが、適合授業が始まるまで一緒に過ごす内に、勇人となら適合ができそうだと何故か自信があった。勘に近いもので、七音にも上手く説明ができない。


「仮面レーサー 深淵」クトゥルフ神話を根本に置いたレーサーシリーズ。マニアからは最高評価だが、脚本家が鬱展開に定評ある人だったので新参バイバイ作品。

「芸術戦隊 ツクルンジャー」 あらゆる方面で有名な芸術家達がある画商の元、過去現在未来の芸術破壊を目論む敵と戦う戦隊シリーズ。ラストは涙腺崩壊必須と話題。

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