表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My own Sword  作者: ツツジ
本編
41/187

第41話 璃久斗の悪友

所変わって、璃久斗のターン


 くろえが教師に呼ばれ、行ってしまった。


 璃久斗はテーブルの飲み物をぼーっと見つめていた。ポケットに突っ込んだ手には、連絡が来てもすぐにわかる様にスマホを握り込んでいる。

 放送していたのは、くろえを目の敵にしていた教師だ。何が起きるかわからない。


 残虐非道、冷酷無比。くろえを取り巻く噂は悪い物ばかりだ。


 だが、璃久斗は違うと声を大にして叫びたかった。

 そうせざるを得ないのだ。くろえの抱える秘密を全てを知っている璃久斗はただ、くろえに付き添い守るだけ。くろえの味方は自分一人しかいないのだ。


 物思いにふけっている璃久斗の耳に、黄色い声が入ってくる。女子特有の甲高い声。その雰囲気が代わるとほぼ同時に声がかけられた。




「こんなところにいましたか、風浦君」




 ぞわりと肌が粟立つ。ばっと振り向けば、そこにはアレクが爽やかな笑みで立っていた。

 瞬間、璃久斗は思い切り顔をしかめて無理矢理距離を置いた。

 それを見た後ろの女子数人が、ムッとして璃久斗を睨む。アレクのファンだろう。

 だが、璃久斗に抗議する強者はいないようだ。この場にいないというのに、噂で膨らませたくろえが恐ろしい存在なようだ。

 後ろの様子などつゆ知らず、璃久斗の反応にもアレクは笑みを絶やさない。声をかけた時と同じトーンのまま、璃久斗に話しかける。


「お久しぶりですね。ぜひお話したいのですが、いいですよね?」

「断る」

「丁度、三階の個室を予約済みでして。今からお茶をしましょう」

「断るっつってんだろ」

「案内しますから、着いて来てくださいね?」


 そう言って手を差し出すアレクに、素敵だのと声をあげるファン達。目の前で繰り広げられた三文芝居に、盛大な舌打ちをした。

 拒否の言葉を聞こえていないフリをして、強引に話を進めてきた。

 アレクの手を無視して断れば、後ろのファン達によって悪者扱いの噂が明日にでも広がるだろう。それを計算して行動した目の前の男は、本当に質が悪い。

 再び舌打ち。先に連絡だけしておきたいと言えば、アレクは快く受け入れた。SEINでくろえに連絡を送り、テーブルのごみを投げ捨ててアレクの案内を受けた。





 水無月の生徒の大半と教師陣が毎日のように通うカフェテリアは、孤島でなければ絶好の憩いの場になっただろう。

 定番メニューにジャンクフード、はたまた故郷を思い浮かばせるふるさとの味を兼ねそろえた食堂は大賑わいだ。


 一階二階の殆どがテーブルと椅子で埋まったこの棟の三階には、要予約の個室が並ぶ。


 一つ一つコンセプトが違う部屋は鍵もしっかりしており、もちろん防音完備。遠隔注文とコンテナを利用した食事の搬送により、喧噪を避けて味わうことができる。

 アレクが選んだ個室というのは、高級ホテルの一室のようなインテリアだった。アレクはテーブル奥の椅子に座り、入口に立つ璃久斗にほほ笑む。


「さぁ、どうぞ。是非とも座って」

「俺以外いないんだろ? なら、その胡散臭い演技止めろ。反吐が出る」


 淡々と言えば、アレクは一瞬呆けた。次の瞬間、大きく口を弧に描き、顔を歪めた。

 今まで見せていたものとはかけ離れた、璃久斗には先程よりもなじみが深いアレクの顔だ。


「久しぶりだな、璃久斗ぉ。口だけ達者なクソガキが、こぉ~んなに大きくなるとはなぁ?」

「何年経ってんだと思ってんだ? こちとら、てめーなんぞ忘れてぇのに、どこにでも殴りたくなる面出しやがって」

「ハッ! なかなかの好青年だろ? てめぇの家で学んだ演技だ、誇れよ」

「うぜぇ」


 荒い口調で言い合いながら、璃久斗はアレクの前の席に座る。にやにやとしているアレクは、昔のまま変わらない。


「しきたりで各国にホームステイだぁ? めんどくせぇことに俺ん家を選びやがってクソが」

「そこらへんはジジイが決めた。俺様は知らん。あぁ、ご両親への献花は俺様自ら選んだぞ?」

「嘘くせぇ」


 きっぱり言い放つアレクに、また一つ舌打ちをついた。




 六年前、一か月という期限の元、璃久斗の家にアレクやってきた。




 まだ健在だった両親は名家の子息だからと区別せず、璃久斗ともう一人の子供と同様、平等に接した。それが良かったのか悪かったのか、アレクがどう思っているか璃久斗は知らない。

 それよりも、一週間の間に二人で暴いたアレクの本性の方が気にかかった。

 稚拙な猫かぶりを不自然に感じ、二人で試行錯誤を重ねた結果である。

 正直、本性の屑っぷりが出ている時の方が相手にするのが楽でいい。だが、代わりに表の顔の違和感が増し、吐き気が現れる様になったことは許さない。



 あっという間に一か月は過ぎて、アレクは帰国。その数か月後に両親を事故で亡くし、直接会う機会はもうないと思っていた。

 学園へ入学が決定した時も、モデル業を優先してアレクはほとんど島にいないという事でその考えは変わらなかった。


 他愛のない話をしつつ、タッチパネルで勝手に注文していくアレク。送信直後に機器を横にずらすと、その場で足と腕を組んで璃久斗を睨んだ。


「ってか、てめぇだろ? 俺様のお遊び邪魔したの」

「人の心へし折るのが遊びとか、趣味わりぃな下種野郎」

「やっぱりてめぇかよ! ふざけやがって! お陰で満足できてねぇぜ!」


 髪をかき上げ、苛立った様子が見てわかる。それでも、璃久斗は笑って返した。


「人選ミスってやつだ。何百人いる女の中からダメな数人を選び出すとか、運ないな」

「ハァ? あの女、てめぇの知り合いか?」

「俺の彼女が気にかけてる、それだけだ」


 事実だけ伝えれば、アレクが唖然として璃久斗を見る。そんな理由で邪魔したのかというアレクの考えが伝わってきそうだ。

 だが、次のアレクの言葉は璃久斗の予想とは違った。


「彼女………………できたのか?」

「ハッ倒すぞてめー!」

「んのだと!? 俺様が言うのもアレだが、乃絵瑠の執着っぷりは異常だったぞ!? 双子の弟に向ける感情じゃ」

「アレクッ!!」


 璃久斗が慌てたように叫びながら、机に勢いよく手を叩きつけて立ち上がる。衝撃で椅子が後ろに倒れ、驚いたアレクの話が途切れた。

 

正しく悪友

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ