第35話 カリスマモデル
また展開が変わり、新キャラ登場!
自然の要塞ともいえるこの島に魔物が潜んでいた。水無月学園からすれば一大不祥事だ。
その場にいた生徒達に口止めをしたところで、人の話に戸は立てられない。まして、そう言った噂が大きな娯楽であるこの学園だ。訓練場への立ち入り禁止など、噂にならないはずがない。
どこからともなく、その話はじわじわと広がっていった。同時に、『樫城くろえ』の圧倒的な強さも伝わっていく。
噂に尾ひれがついていき、七音の元に噂が届いた時には『樫城くろえは対魔物用の戦闘マシンだ』などととんでもないものになっていた。
そうなると、再び奇異の目がくろえと璃久斗に集まる。しかし、二人は相変わらずそういった視線を気にしなかった。
代わりに、武蔵の警戒度が上がったようだ。暇を見つけては七音の所へ来て、近づかないようにとくろえを牽制する。元々、くろえと話す回数は少なかったが完全になくなった。
それがいいことなのか悪いことなのか、七音には今一つ分からない。武蔵は危険人物が七音につかないことに笑顔だが、そこまでくろえを警戒しなくてはいけないのだろうか。
くろえは恐ろしい程強い。だが、その力は全て魔物に対して振るわれている。人に対しては無関心なだけで、何もしていない。そこが、七音の胸にわだかまりを作る。
そうして、事件が終結したと上が判断して訓練場が解放されるまでに二週間が経過していた。
「行くぜ七音!」
「よしっ!」
「「ふんぬぅぅぅぅうぅ!!」」
七音と勇人は互いの手を鷲掴みにすると、力の限り握り合った。傍からはレスリングの掴み合いにしか見えない姿だ。それに気づくことなく、当の本人たちは力を入れ続けている。
結果、手の痛みと疲れだけが残った。
「手が痛い……」
「あ゛ー! できねぇ!」
自身の傷んだ手を見ながら、思っていることを呟く。それを見て、流華に零、静葉は苦笑しながらも首を横に振った。
「自分的には、力いっぱい握る必要はないと思います」
「そうですね。適合の度に手が痛いだなんて、大変だと想像がつきます」
「「う~」」
容赦ない正論に唸る二人。その場で座り込み、次の方法を考え始める。
訓練場の二階、適合の練習部屋。今、七音達がいる場所はその一室だ。この二週間、武蔵がほぼ一緒だったからか、人脈の輪を広げることができなかった。代わりに、武蔵達から更に情報を得られたので零はにこにこ顔だった。
訓練場の開放が宣言された前日、すぐに『適合』の練習がしたいとごねた勇人に皆で話し合い、先に勇人と誰か一人が試してみようとなった。そこで勇人が選んだ相手が、七音だ。曰く、七音とならできそうだから。
七音自身も『適合』を練習したい気持ちと少しの嬉しさですぐに了承し、今に至る。
相手の感覚などが流れてくると王夢が言っていたが、全くその感覚が掴めない。それは、勇人も同じようだった。頭を使うことが苦手な二人は息詰まる。
「感覚……感覚ぅ?」
「あ、わかった」
「ホント!?」
「『戦隊シリーズ』も『ロリピュアシリーズ』も『仮面レーサーシリーズ』も、変身用の口上とアイテムが必要だろう? つまりそういうことだ!」
「何だってー!?」
「「ないです」」
敬語二人の冷静なツッコミに言葉が詰まる七音と勇人。ふと、七音はここまでの違和感に気が付いた。先程から、流華が何も言っていない。
座ったまま流華の方を見れば、いつもと違って落ち着きがない様子だ。ちらちらと外の方を見て、何かを気にしている。首を傾げる七音に、視線に気づいた静葉が補足してくれた。
「ごめんなさいね、七音ちゃん。流華ちゃん、今日アレクさんが来るってそわそわしているんですよ」
「静葉っ」
珍しく慌てて静葉を諫める流華。若干、頬が赤い。それを見て勇人が口笛で冷やかす。それにも過敏に反応する流華を見て、七音はアレクなる人物を脳内に浮かべた。
アレク・サンドライト。七音達の一つ上の先輩であり、この学園でただ一人、誰とでも適合できるという稀有な人物だ。
イーユーの名家出身で、現役のカリスマモデル。本人が公言しているように、モデル業を優先して滅多に学園には来ないそうだ。それでいいと、学園側とも話かが付いているらしい。
雑誌に載っているアレクは何度も見たことがあるが、七音はあまりいい印象を持っていない。だが、クールな流華がアレクの話題で可愛い反応をしているのを見ていると、口が裂けてもそんなことは言えない。
勇人が調子に乗って更に煽り、真っ赤になった流華が鞄を振り上げた時だ。
「失礼するよ」
凛とした声がドアから響いた。同時に上がる、黄色い嬌声。まさかと思いつつ、ドアの方へと首を回す。
高身長の男子生徒だ。生まれ持った美しい金の髪が、肩の上で綺麗に整えられている。美しさの中に野性味が混じった顔つきは、名家の当主という身分を継ぐに相応しい貫録を醸し出している。
話題に出していたアレク、その人だった。他にもいた同室の女性の悲鳴が止まらない。それをバックに、アレクは姿勢正しく歩きだした。気の所為か、自分に近づいてきている。七音のその考えは正しく、アレクは真っすぐ七音のところまで来ると、目線を合わせるためにしゃがんだ。
戦隊シリーズと女児向けヒロインの認知度は凄いと思います




